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いつも美しいニコール・キッドマンが汚ぇバ・・もとい、やつれた熟女に大変身!の映画『ストレイ・ドッグ』でネタバレを含む戯言を。

『つい騙される時系列トリック』と『辻褄の合わない余計なトリック』が混ざって少々ゴチャゴチャした作りですが、とりあえず17年という歳月の表現が見どころなので細かい部分は目をつぶるのが大人のマナーかと。

ストレイ・ドッグ(原題:DESTROYER)

ストレイ・ドッグ

2018年 アメリカ

キャスト:
ニコール・キッドマン
セバスチャン・スタン
トビー・ケベル
タチアナ・マスラニー
スクート・マクネイリー

監督:カリン・クサマ
脚本:フィル・ヘイ、マット・マンフレディ

ネタバレ無しのあらすじ

ロサンゼルス市警の警官エリン(ニコール・キッドマン)は、かつてFBI捜査官クリス(セバスチャン・スタン)と共にギャング組織に潜入捜査を行っていた。

・・・が、今や飲んだくれの鼻つまみ者。

彼女が変わってしまった理由は潜入捜査中のとある出来事によるものなのだが、17年の時を経て因縁の相手からのメッセージが届き・・・・。

…と言う流れで、ニコール・キッドマンが綺麗になったり汚くなったりする作品。

キャストで戯言

整った顔立ちと洗練されたスタイル、強い眼差しが魅力的なニコール・キッドマン

しかし今回の彼女は一味違う。深く刻まれたシワと顔に増えたシミ、ついでに顔色も人相も悪すぎる。

私はニコール・キッドマン主演という以外、一切予備知識を入れずに鑑賞したため、最初は彼女だと気づかないほどでした。一瞬ウィレム・デフォーかと思いましたよ。

「キッドマン老けたな・・・というか普段は相当塗りたくって誤魔化してたんだな・・・」と切ない気分になったものの、なんとこれは特殊メイクだそうな。

この超BBAメイクが世間では「あのニコール・キッドマンが老け顔に!」「特殊メイクがやりすぎ!」などと話題になったようですが、冷静に考えてみれば彼女は本作公開時に50歳ですよ。たぶんスッピンはさほど変わりませんて(暴言)。

しかしそんなインパクト大のキッドマンの周囲に配置されている俳優が、これまた弱いというか薄いというか…。

一応相方として人気俳優セバスチャン・スタンが起用されているものの、出番は回想シーンのみで少なめ。

ギャング組織のカリスマボス、サイラス演じるトビー・ケベルもちょいちょい出ている人ではありますが、やはり出番は少なめでカリスマ感も薄い。

結局ただただニコール・キッドマンの熱演を見守るような作品となっております。まぁいいじゃないですか、みんな好きでしょ、キッドマン。

彼女が特殊メイクに挑戦する様子は動画公開されていますので、気になる方はどうぞ。

時系列の小ネタ

本作最大のポイントは時系列における小賢しいトリック。

とはいえ特に目新しいものではなく、よくある『冒頭に最後のシーンを持ってきて、そこから過去が描かれる』ってヤツですよ。しかしこの『冒頭シーン』から過去に遡る部分をあえてシームレスにすることで『冒頭のシーンが始まりで、そこに過去を混ぜている』と感じさせているのですな。

実際には『現在(全て決着済み)』→『過去(復讐の過程)』→『さらに過去(潜入捜査)をフラッシュバック』という流れで物語は進んでいるわけです。

そこを錯覚させるために使う『密造拳銃のくだり』はなかなかお上手(ちとインチキ臭いですが)。ついでに「なぜ彼女がその銃を使う必要があったのだろう…」とも思いますけど。

全体的に時系列ごっちゃごちゃで進む物語ですので、ニコール・キッドマンの顔をチェックしながら「む?美人だ。これは潜入捜査時代か…」「うわ、汚ぇ!これは今か!」と判断しながら鑑賞する事になりますな。

なお文章をふざけたノリにするため汚ぇ汚ぇと連発していますが、個人的には全然イケると思ってますよ。ホントに。ホントだってば。

ネタバレあらすじ

時系列さえ把握できればそう難しい内容でもないので、すんなりと”どういうお話だったのか”は理解できると思いますが・・・念のためにざっくり1分あらすじで。

ストレイ・ドッグ
ネタバレ1分あらすじ

ギャング組織摘発のため、FBI捜査官クリスと恋人設定で潜入したエリン。

「でも演じてたら本当に好きになっちゃうじゃない」とクリスとリアル恋仲になっているうちに組織ではデカいヤマ(銀行強盗)の計画が進行。

これで逮捕・・ではつまらんので、人生の逆転ホームランを狙うエリンはクリスを巻き込んで山分けの金をいただく事に。

しかし予想外の展開によりクリスは殉職。

エリンは彼の死と、ついでに銀行から奪った金の一部を抱えたまま生きていたのでした。

えーい許せん、サイラス(組織のボス)!バン!バン!

お疲れさん。

…というお話です。そこに娘のアレコレが入ったりします。

ちなみにボスが紫まみれになったのは『ダイパック』というシロモノ。アメリカでは過半数の銀行で採用されている防犯システムです。

ついでにざっくり
『ダイパックとは?』

銀行員が強盗に金を用意する際、しれーっと入れておく遠隔自動起動のエグい偽札束。パッ見は普通の札束。

銀行の建物を出ると自動でタイマーが作動し、約10秒後に炸裂して色のついた液体やガスをまき散らす。

これにより奪われた紙幣の使用を困難にし、犯人や車両の特定にも繋がる。

…なのですが、劇中では銀行から出るなり5秒程度で爆発しており、これでは逃走する余裕がなさすぎる。案の定、防犯マニュアルに忠実に従ってダイパックを入れたお姉ちゃんは悲しい結末となってしまいました。

もはやお姉ちゃんを殺したのはダイパックの設定をした人間と言っても過言ではないですな。

あとクリスも『エフビィアアアアーーイ!!』とお約束の叫びをあげる前に、あの状況なら後ろからすぐ撃とうよ。お姉ちゃんを守るために。

もはや彼もお姉ちゃんの死の片棒を担いでますな。

復讐と贖罪

これだけ頻繁に映画で見ていると、私も死ぬまでに一度は「エフビィアアアァーーーーイ!!!」と叫びながら建物に突入してみたいものです。いえ、自宅でならやってみた事ありますよ。でも誰もかまってくれないんだもの。

えーとなんの話でしたっけ、そうそう、復讐と贖罪の話でした。

本作は愛する人を殺されたエリンの復讐劇。

しかしその死の原因を作ったのは金に目がくらんだ彼女の欲望であり、すぐに彼を救う行動に出れなかったのも彼女の弱さ。

その性質は潜入中にサイラスからも見抜かれており、知った風な口調で指摘されていたものだからなお彼を許せない。しかし自分で自分を許せない苦しさから逃げるための転嫁であることも承知している。

そんなこじらせウーマンの贖罪物語でもあります。

…で、あなたは叫んだことあります?「エフビィアアアァーーーーイ!!」って。

日本で一般人やってるとそうそう叫べるセリフじゃないですよなー。でも憧れますよなー。今度自宅でやってみて下さいな、もしかしたら家族が手とか上げてくれるかもしれんし。

超個人的な戯言感想

というわけで、老け顔ニコール・キッドマン物語の個人的な感想は・・・可もなく不可もなく、といったところ。

絵画のような構図やトリッキーな時系列、ニコール・キッドマンの演技に目を奪われるのでそれなりに満足感はありますが、単純に物語の内容だけで判断すればそこまで引き込まれるようなものでもありませんし、描き方もやや淡泊。

しかしそれを見ごたえのある作品に変えるってトコがキッドマンの凄さですな。

なお彼女は本作で多数の賞を受賞・ノミネートしたようです。うむ、納得。