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注!)本記事はあらすじ・ネタバレ・結末を含みます。未鑑賞の方はご注意下さい

今回の1本は…終始重っ苦しい空気が漂うイギリス映画『ランズエンド-闇の孤島』です。

原題である『BLOOD』が深くて秀逸なタイトルであったにも関わらず…なぜか邦題は『ランズエンド』。さらには『闇の孤島』というダサいサブタイトル付きときています。

もうホント、邦題を決める人の脳ミソはどうなっているのやら…。

ランズエンド-闇の孤島
(原題:BLOOD)


2012年 イギリス

主なキャスト:

ポール・ベタニー
スティーヴン・グレアム
マーク・ストロング
ブライアン・コックス
ベン・クロンプトン

監督:ニック・マーフィ
脚本:ビル・ギャラガー

ネタバレ無しのあらすじ

イギリスはランカシャー。刃物で滅多刺しにされた12歳の少女アンジェラの死体が発見される。

捜査を担当するのはジョー(ポール・ベタニー)とクリシー(スティーヴン・グレアム)兄弟。

その父(ブライアン・コックス)もかつては刑事であり、その人柄と強引な手腕で周囲から恐れられていたものの…現在は退職し、ベーコンサンドが好きな痴呆老人に。

有力な容疑者として一人の男が浮上するが、証拠不十分により釈放。しかし「絶対にヤツが犯人だ」との確信を持つジョーは逮捕を焦るあまり強引な手段を取る。あたかも過去の父親のように…。

その結果、兄弟は取り返しのつかない過ちを犯してしまうのだった…。

・・・といった内容の作品。

キャストで戯言

主演は好きな人にはたまらないポール・ベタニー

私は特に好きでも嫌いでもありません。いや、ちょっと苦手かも…。

それよりも注目していたのはやはりマーク・ストロングブライアン・コックス

なぜマーク・ストロングって、ハゲのクセにこんなにカッコ良いのでしょう…。立ち姿がカッコ良いですよね、彼。私の中では『ハゲ俳優・第一位』に輝いています(二位はベン・キングズレー)。

ブライアン・コックスも良い表情をする俳優だと思うのですが、彼はどうにも傲慢な役どころが多くて…胸糞悪いキャラが良く似合います(笑)

本作でも傲慢かつ横暴、しかもまだらボケというオマケ付き。それはもう面倒臭いジジィを好演してくれていますが、最後の最後でグッとくる顔を見せてくれるところはさすがでした。

余談ですがベン・クロンプトンベン・フォスターって似てませんか?

邦題で戯言

邦題に関してもちょこっと書きたいのですが、『闇の孤島』という部分にはもう触れません。語るまでもない蛇足サブタイトルですので…。

気になるのは『ランズエンド』です。

イギリスに実際にある地名で、場所はイングランド南西部にあるコーンウォール半島の先端に位置しています。

その名称は『地の果て』を意味しており、文字通り端っこにあります。

作品中では干潮時のみ渡る事ができる『島』が重要なポイントとなってくるのですが、その『島』がここにあるのかと言うと…それはちょっと無理がありまして。

なぜならば…

物語の舞台であるランカシャーはこの位置なんです。

正確な距離を測ったわけではありませんが、ざっくり見ても東京都から山口県くらいまで行けそうです。とても一晩で往復できるような距離ではありませんし、物語の最後には一晩どころかあっさりと到着しています。

ですので邦題の『ランズエンド』は地名を指しているのではなく、単純に『地の果て』の意味合いで使用されているのではないかと。

まぁ『闇の孤島』とか付けちゃうくらいですので、地理的な事などは考えず「イギリスには地の果てって意味の場所があるらしいよ!よし、イギリス映画だしタイトルはそれで!」といったノリで適当に決めたのかもしれませんが…(笑)

重い…重いよママン…

本作を一言で表すと、とにかく『重い』に尽きます。

痛快なアメリカ映画を好むライト映画好きが「よーし、ちょっと骨太なクライムサスペンスでも観てみるか!」と映画通のマネごとをしようとして鑑賞した日には…

謎解きなくてつまんねぇよ!登場人物、意味わかんねぇよ!つーかどいつもこいつも重いよっ!!

…と、クソ評価を付けてしまいそうな作品です。

この映画は王道サスペンスとして楽しむのではなく・・・罪と絆、正義と血(ゴアな意味ではなく血筋という意味で)、幾重にも重なりあう心理描写、そういったものを重厚な空気で味わう作品だと思いますので…

ある意味人を選ぶ映画、と言えるかもしれません。

「どうでもいいと思えるような、登場人物の日常の顔」を執拗に描写する事で人物像に深みをつける…という手法がちょっぴりスペイン映画的で、私はとしては大好物の作風でした。

ここからネタバレを含むよ!!

半分からが本番!

さてさて…

この映画はジョーがビューリーを殺害してしまってからが本番とも言えるのですが、そこに至るまでが以外に長く物語の約半分を占めます。

テンポの感じ方は人それぞれだと思いますが、私は冒頭~中盤までは少しだけダルく感じました。決して飽きるほどではありませんし、こういう作品なのだとわかれば決してダメ要素ではなかったのですが…まさかここまで重く太い作品だとは思わなかったもので…(笑)

しかしジョーが『取り返しのつかない罪』を犯してしまってからの展開は、グイグイと引き込まれます。

メインである兄弟はもとより、その家族と縁者、同僚であるロバート、その他登場人物、全ての人間がこれでもか!とばかりに奥深い心理描写を発揮してくるため、あっちを見てもこっちを見ても胸が苦しくなるばかり。

物語に関わってくる人物を「善人」「悪人」という薄っぺらい括りで分ける事ができないので、キャラがブレていると感じる方もいるかもしれませんが…人間って本来そういうものだったりするじゃないですか。私はどの登場人物も嫌いになれませんでした。

終盤は胸が熱くなる…が

随所に見どころがある作品ではあるのですが、やはり最後の『罪を被ろうとする父』のシーンはグッとくるポイントでしょう。

個人的にはその前、切ない音楽に乗せて、それぞれがそれぞれの決意や想い・苦しみを見せるシーンが最も感動しましたけど…。

この最後のどんでん返し的に登場してくる父親。ブライアン・コックスの表情は本当に素晴らしかったです。そしてポール・ベタニーも。

この場面での父親の行動の解釈は人によって分かれそうな部分でもありますが、私はそのまま『息子の罪を被ろうとした』で終わらせ、それ以上の余計な読みやツッコミは入れない事にしました。

しかし正直なところ・・・ここがあまりにもベタな感動結末になってしまった気もするんですよね・・。

『ビューリーを殺した犯人は不明。ロバートはジョーが犯人であると確信しつつも、隠し通そうとするジョーを複雑な気分で見守るしかない。そしてジョーはその罪を背負い続け、苦しみながら刑事を続ける。時折、あの島を歩きながら…』

・・・てな終わり方でも良かったと思うんです。

おそらく100人中108人くらいが「なんだよその胸糞エンドはっ」と否定するとは思いますけど(笑)

なんか最後だけエンターテイメント的に締められちゃったなー…という印象がありましたので…。

最後はバカな戯言で終わらせるよ!

深いけど結局は尻

ビューリーの焼死体が発見された時、「証拠は徹底的に消されている…」という話があったじゃないですか。

ここ、お父さんが出てこなかったらホントに『犯人不明でジョーはセーフ』でいけたかもしれないんですよね。そこを「どうやってもお前できるわけないだろ!え?スコップで殺した?なんでんな事知ってるんだ!?」てな事になっちゃう以上、もうジョーは逮捕フラグです。

息子を庇おうと出てきたために、息子が…という。

だからこそ、ここは解釈が分かれる要素でもあると思うんですよね…。仮にも元刑事である父が、そこまで短絡的に考えるとは思えなくて。まぁボケてますけど。

おそらく仮に父親が出てこなかったとしても、ジョーは隠し通していこうとは思っていない様子でしたし、それを感じたからこそクリシーも彼を抱き寄せたのだと思いますし。

そんな感じで登場人物一人一人の心理を読んでいったら、本当にキリがない映画でした。

ロバートも非常に奥深い考えを持っていましたし、ジョーの家族もただの脇役とは言えない葛藤や想いを秘めており、行方不明になったビューリーを探す母親の心情も、ただ単に「息子が心配」だけでは語りつくせない気持ちがありました。

それゆえにどうしても・・・

いつものノリでふざけた事が書けません(笑)

私個人としては大好物な作品なのですが、『映画で戯言三昧』としては天敵のような作品です。

しかしどんなに完璧に見える相手であれ、隙はあるもの。

私は見逃しませんでした。

終盤、それぞれの想いや行動が流れるシーン・・・素晴らしく良い表情を見せるロバートの後ろのベッドに全裸で横たわるナタリーであろう女性、そのお尻が…

恐ろしいまでのナイスヒップである事をっ!!!

一時停止で存分に堪能のうえ確認しましたが、まさにコレをオカズにどんぶり飯三杯は食えそうな尻です。

やりましたよ。手ごわい作品でしたが、しっかりと尻の話で締める事ができました。ふぅ…