注!)当記事はネタバレ・結末を含みます。未鑑賞の方はご注意下さい。
今回の1本は断眠というテーマを扱ったキテレツ映画『108時間』です。
しっかりとしたストーリーはあるものの・・・それ自体がぐちゃぐちゃしているうえに、その表現もなんとも不可解というか…不条理というか…。
「眠らない」という事がキーワードになっている映画でありながらも、そのダラダラと続く混沌っぷりに「意味が分からず、見ている途中で寝てしまった」という方も多かったようです(笑)
決してつまらない映画ではないので、もう少し要点をまとめて世に送り出したほうが離脱者も少なかったのではないかと…。
108時間
2018年 アルゼンチン・ウルグアイ・スペイン合作
主なキャスト:
エバ・デ・ドミニシ
ベレン・ルエダ
ナタリア・デ・モリーナ
ヘルマン・パラシオス
監督:グスタボ・エルナンデス
脚本:フマ・フォッデ
ネタバレ無しのあらすじ
俳優を過酷に追い込む事で知られる、舞台演出家アルマ(ベレン・ルエダ)。
廃墟となった精神病院を舞台にした演劇を作り上げようとしている彼女のもとに、ビアンカ(エバ・デ・ドミニシ)とセシリア(ナタリア・デ・モリーナ)が主演の座を求めてやってくる。
アルマが俳優たちに要求したのは、眠らない事。
それは彼女が過去に行った『108時間の断眠』という前衛的すぎる演出の果てにたどり着いた、眠らない事で登場人物の心理状態に近づく…というものだった。
主演を射止めるため、他の俳優と同様に断眠に挑むビアンカだったが、徐々に幻覚などで精神を犯されていき…。
・・・といった内容の作品。
眠るな…と言われても…
「眠りは麻薬~♪」って、なんていうタイトルの歌でしたっけ…。
人間の三大欲求とも言われる「食欲・性欲・睡眠欲」
その1つでもある「眠り」を制限され、極限状態に追い込まれた人間の狂気を描く・・・という作品かと思いきや、途中から話は変な方向に曲がっていきます(笑)
監督は約90分間をワンショット(カメラ長回しのワンカット)で作り上げた『映画 SHOT/ショット』で有名なグスタボ・エルナンデス。
この『SHOT/ショット』はハリウッドリメイクもされているので、サスペンス系好きな方であればそちらを見た事があるかもしれません。エリザベス・オルセン主演の『映画/サイレント・ハウス』です。
リメイク作も全編ワンショットで描かれているものの、そんな事よりもエリザベス・オルセンの胸の谷間が気になりすぎて肝心の内容がさっぱり入ってこないような映画でした(笑)
…と、話が逸れました。
本映画の監督自身がそういった前衛的な手法を好むわけですが、作品中に登場する舞台演出家アルマも、それはもう大事な何かが外れているようなキャラに仕上がっています。
芸術関係の方って、変人が多いですもんね…。
ここからネタバレを含むよ!!
散りばめられた伏線
いきなりですが皆様、伏線はお好きですか?そうですか、大好きですかー。
サスペンス・ミステリー系の醍醐味とも言える『伏線』という要素。
物語に出てくる些細なセリフやさらっと流されていた設定などが、後ほどしっかりと意味を持ったものとして組みあがっていく時の快感はタマランチ会長ですよな。
この『映画/108時間』にも伏線と思える要素は数多く、そしてその後しっかりと種明かしのような展開もあるのですが…いかんせんそのへんがハッキリしていない気も…。
うたた寝しながら流し見ていても気になるような、序盤の伏線ポイントを挙げてみただけでも、
- ビアンカのお父さんがヤバいのは遺伝性の病気。2割の確率で遺伝する。
- 閉めた窓が勝手に開く
- 椅子の中から出てきた小箱
- セシリアのブレスレット
などがあるのですが、この中でも回収がハッキリしているのは「セシリアのブレスレット」くらい。
お父さんのアレがビアンカにも2割の確率で遺伝している…というのが最後のどんでん返しになるかと思ったのですが、そこはしっかりとは描かれず。
アルマが「ビアンカは素質を持っている」と言っていた、その「素質」というのがそれなのか…とモヤモヤするくらいです。
閉めた窓が勝手に開くのは、後半にねじ込んでくるオカルト要素への布石…といった程度。
椅子の中から出てくる小箱はキーアイテムとして終盤登場するものの、なんとも無理矢理感があるというか…。拍子抜けというか…。
断眠による狂気…ではなく、憑依(笑)
この映画を予備知識なしに鑑賞した方の多くが『不眠によって精神が崩壊していく恐怖』が鍵となる映画だと思ったのではないでしょうか。ええ、私もそうでした。
中盤まではその流れで進むんです。時折現れる謎の人影や、不気味な存在なども…断眠による幻覚を表現しているのだろう…と。
しかし不意にぶっ込まれてくる、
眠らない時間が108時間を超えると、憑依されるんだよ!
という設定には困惑しかありません。え?え?そういう話?オカルト映画だったの!?(笑)
てっきりリアル路線だと思って観ていましたよ…騙されたー。しかも心地よい騙され感ではなく、台無しにされた感じで騙されたー。
ビアンカの最後の状態も『ドラに憑依された!…と思ったら、実は彼女自身の演技であった!』というリアルオチへのどんでん返しかと期待したのに、やっぱりフォンソなどは憑依されていました。。。
ざっくり戯言あらすじ
非常に複雑というか、いったい何がどうなっているのかわかりづらい本作品。
「ところどころ寝ちゃった」という方であればなおさら、鑑賞後には「・・・で?」という気持ちが湧きあがるかと思います。
そんな睡眠欲旺盛な方のため、非常にざっくりしたフローを作ってみました。細かい要素などには触れていません。とりあえず「全部見たような気になるため」のフローです(笑)
- 1975年
- 断眠108時間超えたらマーリーンがヤバい事になった。こりゃ素晴らしい。
- 1984年
- 廃病院に俳優集めて断眠チャレンジ。
- オカルト要素投入
- 実は108時間超えたら他の人間に『憑依』されてしまうのでした。
さぁドラと一体になるのです、ビアンカ。
- セシリアの狙い
- なんとセシリアはドラの娘でした。主演狙いではなく、ビアンカを霊媒とすることで母親と会話し、自分を浴槽に沈めた真意を知りたかったのです。
そしてドラに憑依されたビアンカから真相を聞き、和解。
やっぱり私を殺そうとしたんじゃないだね、ママン。
- めでたしめでたし
- なんとビアンカは憑依されていたわけではなく、自らの意思でドラを演じていました。
すごいわこの娘、ブラボーだわ。
いつの間にか見ていた観客も大絶賛。めでたしめでたし。
斬新かつ前衛的な、お芝居の話でしたー。
- 舞台は混乱の渦に
- 観客の絶賛にテンション上がったフォンソ・・・と思いきや、やっぱり彼は憑依されていました。
そのままアルマの頭もフルスイング。共に炎の中に…。
- 何が見えたのっ!?
- 廃病院での悲劇から5ヵ月後。
ヒゲ眼鏡から届いた1冊の本。
いろいろあったけど、まぁなんとかなって良かったかな…と思ったのに、炎の向こうに再び何かがっ!!
といった流れでエンドクレジットです。
最後に見えたものが何なのか…に関しては、アレとかコレとか考えられますが言及しません。あまり余計な事を言うとボロが出ますので…。
ツッコミどころの渦
かなり特徴的な映画だけに賛否両論あるとは思いますが、私としては『つまらなくはない。でも何か残念』といった感想になりました。
オカルト要素という意味ではなく、純粋な意味での不自然さも多々ありますし、ツッコミどころも大量にあります。
「あれっておかしいよね?」を語っていったらキリがない作品ですので、すんなりと受け入れるのは難しい気もします。
とりあえずは・・・ビアンカが美人だった、という点と…ビアンカの尻が意外に大きかったという点、さらに浴槽に浸かってびしょ濡れになったビアンカの胸が…という点で、許せる映画としておきましょう。
それにしてもアルゼンチンの映画って、無理矢理すぎる設定や展開が多いような気がするのですが…そう感じるのは私だけでしょうか…。