【当ページには広告が含まれています】

二転三転するシナリオに騙されっぱなしの『映画/ロスト・ボディ』、感想としては「面白い!」と思える作品ではあるのですが…よくよく考えてみりゃあまりにもご都合主義な展開も。ネタバレと考察を含みますので未鑑賞の方はご注意下さい。

ロスト・ボディ
(原題:El cuerpo)


2012年 スペイン

主なキャスト:
ホセ・コロナド
ウーゴ・シルバ
ベレン・ルエダ
アウラ・ガリード

監督:オリオル・パウロ
脚本:オリオル・パウロ、ララ・センディム

ネタバレ無しのあらすじ

ある夜、遺体保管所から遺体が無くなるという奇妙な事件が発生。

消えた遺体は実業家として多くの資産を持つカルラ(ベレン・ルエダ)という女性で、事件を担当するハイメ刑事(ホセ・コロナド)はその夫アレックス(ウーゴ・シルバ)を呼び出す。

アレックスの不自然な態度に「妻殺し」の疑いをもったハイメ刑事は、強引とも言える取り調べで彼に自白させようとするが・・・施設内では不可解な現象が連発。

まるで自分を陥れるかのような謎の現象に、アレックスは「カルラはまだ生きている」と確信。不倫関係にある恋人カルラ(アウラ・ガリード)の助けを得て謎を解こうとするのだが…。

・・・といった内容で二転三転、最後はアクロバティックな着地を決めてくる作品。

キャストで戯言

なにせスペイン作品ですので、日本国内で「超有名!」と言える俳優はいませんが…スペイン映画がお好きな方ならば知っている俳優が多数出演。

主演のホセ・コロナドは出演作品も多く、ハリウッド作品にもちょろっと顔を出している鉄板俳優。

訳あり旦那のアレックスを演じるウーゴ・シルバもそれなりに出演作が多いようですが、私は『映画/ネスト』でのヤリチンキャラの印象しかありません…。

そしてパッケージ詐欺とか言われている、めちゃくそムカつく性格のマイカを演じるのはベレン・ルエダ

『映画/108時間』でも変なオバさんを演じていた彼女ですが、今回はホントもう無理。たとえ資産目当てだとしても、こんな女じゃ30分も一緒にいられませんわ…。そりゃ若い女に乗り換えられるのも必然てもんですよ。

しかもそのお相手はアウラ・ガリードですから、ルックスも申し分無し。彼女とあんな事やこんな事ができる関係になれるのならば、私だったら金なんぞいりません。いえ、むしろ払わせていただきます。

ネタバレ注意!

どんな作品もネタバレ読んでから見りゃ楽しさ半減以下。しかし本作は特に『未鑑賞の人は読んじゃダメ、絶対!』の映画です。

まだ見ていない方は今すぐ回れ右してアマゾンプライムビデオに行くか、レンタルショップへGOですよ。


なおあちこちで「パッケージ詐欺」とか言われているのは決して内容的な意味ではなく、この「お背中晒した美熟女の写真」と「作中のベレン・ルエダ」があまりにも違うというもの。

私はこっち系の女性は射程距離外なのでぜんぜん気にもしませんでしたが、そう言われればそんな気も…。まぁいいじゃないですか、がっつり修正したいお年頃なのですよ、たぶん。

ここからネタバレを含むよ!!

二転三転

とにかく最初から最後まで「こっちか?」「いや、そっちか!?」と、目先をあっちこっちさせられる本作。

マイカの死はカルラとの不倫にのめり込んだアレックスによる毒殺だった…というネタが早々に明かされるので、刑事コロンボ型の『犯人と犯行を先に見せておき、そこからの攻防を楽しむ』という作品かと思いきや。

なんと『マイカのほうが一枚上手で、死を偽装していた!?』というドンデン返しを披露しつつ、さらに『いやいややっぱり死んでいて、心霊系ですよ!』の要素まで投入。

それを最後にひっくり返して『なんとカルラという女性など実在しなかった!全てはアレックスの幻想!!』というパワー技でフィニッシュする…と思わせつつ、直後に最終的なオチを全暴露。

その見せ方と伏線の張り方が実に秀逸なため、『さんざん相手を翻弄した挙げ句、最後の最後に全く見えない角度から必殺パンチをぶち込む!』というテクニカルな試合運びをされた気分です。

実にお上手。素晴らしい。全ての伏線がしっかりと回収され、話の辻褄も合っている…と思わず感心してしまうところ。

…が、実のところかなり強引かつご都合主義なシナリオだったりするんですよね…。

揚げ足取りの考察

『運も実力の内』なんて言いますが、そりゃあくまで結果論。

本作のハイメ刑事(と娘エヴァ)の『妻の仇!母の仇!アレックス絶対許さない大作戦』は、そりゃもう手が込みすぎなくらいに手が混んでいるわけですが…不確定要素と強引な理由付けがちょいちょい気になりませんか?え、気にならない?そりゃ失礼致しました。

しかし私は気になるのです。

本作を絶賛している方も多数おりますし、重箱の隅をつつくような発言で申し訳ないのですが…ちょっとだけ言わせて下さいな。

そもそも冒頭の『夜警のアンヘル・トレスが事故で入院』ってとこからして想定外ですよね…。

ハイメ刑事が施設に侵入し、マイカの遺体をエレベーターに乗せてトレスに見せてビビらせてみたり。夜警の方は監視カメラの異変に気づいてからすぐに駆けつけているようですが、ずいぶんと素早く遺体を出してエレベーターに乗せましたなぁ…。まぁそれはよろしい。しかしその後パニックになって逃げ出し、車にはねられてしまうのは作戦のうちではないのでは…。

ホント、この夜警の方はとんだとばっちりですな。

それ以外にも『そりゃちょっと無理がある』という強引な伏線は多くあるのですが、そもそも娘エヴァが忙しすぎる(笑)

アレックスを「ほれ、電話に出て」と焚き付けて送り出した後の『彼女の動き』だけを追って考えてみると、そりゃもうあっち行ったりこっち行ったり。しかも自宅も空き家に戻さなきゃならない。

さらに『マイカの死体が発見される』も、あまりにもタイミングが良すぎるうえに、ヘタすりゃ嵐がひどくなりすぎて見つけてもらえなかった可能性もあったのでは…。もしくは早々に見つかってしまったりとか…。

ついでにそこで逃げ出すアレックスを他の刑事はだーれも追わないの?ハイメに任せっきり?ものすごく近くにいるのに…。

最後もいくら『8時間』がキーワードになっているとはいえ、アレックスが死ぬタイミングがあまりにも出来すぎでは…。

・・・と、気になることだらけ。

揚げ足ばかりとっては映画をつまらなくするだけではあるのですが、とても上手にまとまっているだけに気になる。そのへんの人なら多少眉毛が繋がっていようとも鼻毛が出ていようとも気にならないのに、なまじ美人だと些細な欠点が気になる…みたいなもんです。

それだけ本作が面白かった…ということで。

超個人的な戯言感想

イロイロとイチャモンつけましたが、とりえあえずはハイメ親子の復讐大作戦は成功したようでめでたしめでたし。

しかしコレ、娘が美人だからよかったものの…ブサイクだったらどうにもならん計画ですな。

さらに言えば、アレックスがマイカの資産に固執せずに「金なんか失ってもキミと一緒にいたい。マイカとは離婚するから結婚しよう!オレ無一文だけど!!」…ときていたらどうしたんでしょう。

彼の金への執着心を見越しての計画でしょうが、かなり危険な橋でしたなぁ。場合によっちゃ単なる「別れさせ屋」で終わるトコでした。

いや、ホント面白かったですよ。出演者は美男美女揃いですし、カメラワークも音楽も演出も素晴らしい。ケチつけるとこなんてありません。

アレですよ「好きな子ほど意地悪したくなる」みたいなもんです。そのくらいオススメの1本でした。…と言っておけば、多少の揚げ足取りも許されることでしょう。たぶん。