今回の1本は大好きなスペイン作品『映画/ネスト』です。2009年にアメリカから同タイトルの映画が公開されていますが、そちらではなく「トガリネズミが…」といったサブタイトルがついてたりするほうです。
『エスターを凌ぐ衝撃のラスト』という余計なキャッチコピーを付けられているものの、凌ぐとか凌がないとか以前に全く土俵が違う作品ですので比べる事自体がナンセンス。
しかし「映画として面白いか?」という点では、私個人としては十分すぎるほど満足できる作品でした。
ボロクソに批判したうえに「この映画を高評価してるヤツはサクラだ!」的な事を言っている残念な方もいますけどね…。
ネスト
2014年 スペイン・フランス
主なキャスト:
マカレナ・ゴメス
ナディア・デ・サンティアゴ
ルイス・トサル
ウーゴ・シルバ
監督:エステバン・ドエル、フアンフェル・アンドレス
脚本:フアンフェル・アンドレス、ソフィア・クエンカ
ネタバレ無しのあらすじ
1950年代、マドリード。
モンセ(マカレナ・ゴメス)は広場恐怖症のため外出する事が出来ず、自宅で縫製の仕事をしながら女手ひとつで妹(ナディア・デ・サンディアゴ)を育ててきた。
明るく社交的な妹に対し、姉モンセは閉鎖的なうえにサイコ。
しかしある日、階段から転げ落ちて怪我をした同じアパートの住人カルロス(ウーゴ・シルバ)を介抱した事から、徐々にモンセの中で何かが変わっていくのだった…
・・・といった内容の作品。
キャストで戯言
久しぶりにご登場、三度のメシより大好きなルイス・トサルです。
作品によって当たり外れの激しい彼ですので、今回はいったいどんな役柄かとドキドキしていたのですが…。
まさかの回想シーン&幻覚キャラ!!
おおおー、そういう扱いかー(泣)
しかし出番は少ないものの、しっかりと頭がイッてる感じのキャラだったので満足。彼のネチネチした雰囲気は素晴らしいですな。
主演のマカレナ・ゴメスには特に思い入れも何もありません。普通に怖いです、顔が(笑)

ここからネタバレを含むよ!!
いろいろとヤバイ
映画のジャンル分けってのはどうにも曖昧な感じが否めませんが、当作品は『ホラー』となるらしいです。
たしかにまぁ恐怖感を煽るが多いのでホラーと言えばホラーかな…という感じはするのですが、単純にホラー映画という括りにして良いのか悩むところ。しかし『サイコスリラー』と呼ぶにはホラー色が強いですし…。
恐怖だけを売りにした薄っぺらい作品ではないので、ちょっと置きどころが難しい映画でもあります。
姉のサイコ感がヤバい
とにかく序盤は姉のサイコっぷりが強烈。
冒頭の回想からヤバいですもの。妹を寝かせ付けるために『邪悪な人々が他人を陥れる話』って…そんなの読み聞かせるヤツいるかっ!!(笑)…しかもその本は聖書だったという。
ここの理由は終盤に回収されるのですが、姉のヤバさを感じさせる掴みとしてはバッチリです。早々にテンション上がります。
その後の「妹が男と会っているのを窓から覗き、ムキー!っとカーテンを引っ張る」も素晴らしい。
サイコ野郎とはまた違う、女性ならではのジトジトしたサイコ感が出ていて『サイコさんを愛でる会』の会員である私としては興奮してしまいました。
妹もヤバい
姉は正統派にヤバいのですが、妹は違う意味でヤバい。時代が1950年代という設定ですので仕方ないのかもしれませんが、その髪型…ちょっとどうなんでしょう。ジョジョの登場人物みたいな頭になっていませんか?(汗)
ほうほう、18歳の誕生日ですか。おめで・・・なぬっ!18歳!?
いやーてっきり30くらいかと…。
ちょっと調べてみたら妹役のナディア・デ・サンティアゴは撮影時24歳。そのくらいの歳なら18歳の役を演じるというのもおかしくはないのですが…ちょっとフケ顔…いえ、落ち着いたお顔立ちなので、厳しい感じもします…。
まぁ竹内力も40歳過ぎて高校生の役を演じてたりしますけど(笑)
カルロスもヤバい
そんな姉妹の家の前に、草刈正雄に似たカルロスがゴロゴロと転がってきます。
最初はまぁちょっと軽薄なところはあるけれどもそれなりに善人なのかな…と思いきや、ちょっとどころじゃない軽薄っぷり。
お姉ちゃんに勘違いさせるような事を言いつつ、かなり歳の差があるであろう妹にも色目を使ってみたり…。
警察に追われているようなので「もしかしたらダークでアウトローな過去でもあるのだろうか…」と思ってみれば、孕ませ逃げを企んでいたというショボさにもガッカリ。
壊死した脚を踏んづけられるのも止む無し、と思えるほどの軽薄野郎でした。
ラストはヤバ…くもない
中盤までのじっとりとした雰囲気から打って変わって後半の加速感は凄まじく、サイコホラーの展開が怒涛の如く襲ってきます。もういろんな意味でグッチャグチャ(笑)
このへんのグイグイ感は良かったです。
そして徐々に明かされてくる『お姉ちゃんのサイコっぷりには理由があるのよ…』という展開も良い。
やっぱりルイス・トサル(父親)は素晴らしき変態野郎でした(笑)
姉が父親から受けていた行為を知ってもなお、父親を殺した事を責める妹はちょっとどうかと思いましたけどね…。
そしてついに明かされる、『エスターを凌ぐ衝撃のラスト』は・・・
実は姉ではなく母だった。
という、皆さんが早くから予想していたであろうオチでした(笑)
この結末もそうなのですが、全体的に予想の範囲内でストーリーが展開されるので『衝撃のラスト』という意味で考えればたしかにエスターには遠く及ばないものではあります。だからといって決して駄オチというわけでもなく。
『わかってはいたけど、やっぱりそこに着地しちゃうのか…』
といった感じの、やりきれない感は悪くないかと。
エスターはとにかく『まじすか、こいつヤバいよっ!怖いよっ!』というオチですので、単純にホラーとして見ればあっちが上なのは当然。こっちはスペイン映画らしく、人間関係の生々しさと奥深さを味わう作品として良いラストでした。
面白うございました
鑑賞前にちらっとあらすじを読んだ感じでは『映画/ルームメイト』のような、ドロドロした身勝手サイコ女の話なのかな…という印象だったのですが、全然違いましたね…。
典型的なアメリカンホラーを期待した方には物足りない作品かもしれませんが、私はもともとスペイン映画が大好きですので、この作品も十分すぎるほどの満足感。
最後の最後まで妹の名前を明かさない…ってのも良かったです。
私はいつも記事を書くために登場人物の名前をメモしながら鑑賞しているのですが、いつまでたっても妹が名前を呼ばれるシーンがないので「あれれ?」って思っていたんですよね…。
ちなみにエンドクレジットでの彼女の役名『La Niña』は、スペイン語で『女の子』を意味しています。
今回も相変わらず世間の評価とは異なる感想となってしまいましたが、まぁいつもの事ですし。
この作品もDVD購入して『愛すべきサイコさんコーナー』に並べようと思います(笑)