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個人的に超絶賛、もはや崇拝の域にすら入っている『映画/スリーピンタイト』でネタバレを含む戯言を。『白肌の美女の異常な夜』という余計なサブタイトルが付いていたりするヤツですな。

頭のおかしな人間大好きな私にとって、本作に登場するセサルはまさに完璧。もう2000本以上映画を見てきましたが彼を超えるド変態にはいまだに出会えていません。

本作のDVDソフトは『死んだら一緒に墓に入れて欲しいもの』として大事に保管してあるのですが、これを入れる家族はどんな気持ちになるのやら…。

スリーピングタイト
白肌美女の異常な夜


2011年 スペイン

主なキャスト:

ルイス・トサル
マルタ・エトゥラ
アルベルト・サン・ファン

監督:ジャウマ・パラゲロ
脚本:アルベルト・マリーニ

ネタバレ無しのあらすじ

アパートの管理人として働くセサル(ルイス・トサル)は、住人のクララ(マルタ・エトゥラ)にひそかな恋心…と呼ぶにはちょっとアレな偏執的な愛情を抱いていた。

変態の基本・歯ブラシプレイなんて挨拶代わり。「夜な夜なベッドの下に潜り込んで息を潜める」という高難度プレイを楽しみつつも、表面上は控え目で親切な管理人を演じるセサル。

もはや恋なのかどうかわからないような行為を繰り返し続ける彼は、ついに取り返しのつかないことを…

・・・・といった内容の作品。

キャストで戯言

マフィアや犯罪者など、骨太でハードコアなキャラを演じることが多いルイス・トサルにこんな役をやらせるなんて、いったい誰が最初に言い出したのでしょう…。

しかし決してミスキャストなどではなく、むしろ素晴らしすぎて泣けるレベル。最高です、最高に気持ち悪いです(笑)

これが『映画/プリズン211』でゴリゴリの凶悪犯罪者を演じていた彼だとは…。もはや喋り方まで全く違うじゃないですか。

もう一生こっち路線で攻めていただきたいですなぁ。

そしてそんな彼に変態行為をされる不運な女性、クララを演じるのはマルタ・エトゥラ

私は馴染み深い女優なのですが、日本では名は売れていないかも…。『映画/EVA〈エヴァ〉』は日本でも知られた映画ですが、それにも出演していますよ。

ついでに前述の『映画/プリズン211』にも出演しており、さらにルイス・トサルとはプライベートでも交際関係にあったとか。

本作撮影の頃も交際中だったようなので、プライベートでも変態的なプレイを楽しんだり…はしないか。

変態プレイと芸術

おそらくこの映画を観た方(特に女性)の大半はセサルの行為を「気持ち悪い」と思った事でしょう。ええ、実に健全な反応です。

しかし世には彼の行為を「素晴らしい」と感じ、「もはや芸術の域」とまで絶賛する人もいるのです。いや、ホントですって。ココにいますもの。

とりあえず、

『彼女の歯ブラシを使う』

といった程度ならノーマルな価値観を持った方にも理解してもらえるとは思います。変態の初歩みたいなもんですし。

しかし、

「彼女の化粧品に変態汁を混ぜる」
⇒「肌が荒れていく彼女を見て…ハァハァ」

「彼女の部屋にゴキブリを繁殖させる」
⇒「うぎゃー!となる彼女を想像すると…ハァハァ」

とまでくると「一体何がどうなって興奮するのか意味不明」な方も多いかと。

突然ですが私はコーヒーを一切飲みません。飲むとガチで吐くほど具合が悪くなり、匂いを嗅いだだけでオエーッとなるので同じ部屋で飲まれるのもイヤです。

ところが周囲からはよく「コーヒーを飲めないなんて可哀そう」「人生を損している」などと言われるんですよ。まったくもって余計なお世話、美味いと思う人が勝手に飲めば良い話じゃないですか。

ならば私も言わせていただきましょう、

「セサルのような変態プレイに大興奮できないなんて可哀そう」
「ノーマルな性癖しか持っていないなんて人生を損している」

…と。

平凡なノーマル共は美味しくコーヒーを飲みながら、普通に服を脱いで、普通にベッドに入って、普通にイチャイチャして、普通にフィニッシュ決める。そんなプレイを一生繰り返してりゃいいんですよ。あーつまらないったらありゃしない。

ちなみにそんな私の伴侶でありながら、ウチのカミさんはノーマル。セサルに対しても「うええー、気持ち悪いよう」という感想でしたので、『変態プレイの奥深さと、その哲学』について小一時間ほど身振り手振りを交えて熱弁したのですが、明らかに顔がドン引いていたので理解してもらえていないと思います。

変態にドキドキ

セサルの魅力に1つとして『庶民的な変態』という点も。

変態に庶民も貴族もあるか!…と思うかもしれませんが、映画において彼のような『独特な思考の持ち主』は冷静なキャラが多いじゃないですか。サイコ野郎は自分が悪いことをしていると思っていないからこそサイコ。ハンニバル・レクター博士もそりゃもう堂々としたもんです。人食いのクセに。

しかし彼は見つかりそうになればアタフタするし、ベッドの下でオロオロもする。

「主人公が悪人に見つかりそうになってドキドキハラハラ」というシーンはスリラー系映画では定番で、隠れる主人公に感情移入してこっちまでドキドキハラハラしてしまうもの。

しかしこの映画では「変態が普通の人間に見つかりそうになってドキドキハラハラ」ですから(笑)

明らかに「なにやってんだおまえ」的な事をしているのは彼のほうであり、周囲の人間は通常通りに生活しているだけなのに、なぜか心配して「ヤバいっ、隠れろっ」と応援してしまう。

まさに親しみやすい、庶民的な変態と言えるじゃないですか。愛されキャラ、いや愛され変態と言っても良いでしょう。

ラストの考察

この映画の結末を「最高」と公言するのはかなり勇気がいりますが、もう下半身をバッキバキにしながら号泣してしまうほど素晴らしい結末でした。

この手の『サイコや変態が女性をアレコレする映画』ってのは決まって「最後は女性の勝利」で終わるじゃないですか。身勝手な欲望で女性を不幸にしておきながら、なんの報いも受けずに終幕…では溜飲が下がらん人も多いのでしょう。

なかには最後にキッチリ悪人が死んでくれないと「スッキリしない終わり方だった」と感想を書く人までいますし。どうしてそんなにベタな勧善懲悪にこだわるのか…わたしにゃわかりませんな。

しかし!

この『映画/スリーピングタイト』は違います。最終的には「変態の完全勝利」です。

しかも「捕まらずに逃げおおせた」などというレベルではなく、それはもうゲスすぎるハッピーエンド。どこぞの女性権利団体が見たら、目を三角にしてギャーギャー騒ぎそうな結末です。

疑念はありつつも、絶対に死んだ恋人の子だと信じていた赤ん坊が「実はセサルの子だった」という衝撃の事実。それを手紙という行動で伝え、読み終えた時に彼女がどんな表情、気持ちになるか想像してみる・・・・いやぁ、たまらんですな。私もやってみたい。

手紙でクララに告白した後の彼の顔ときたら、まるでアルマゲドンのラストシーンで自爆する直前のブルース・ウイリスのようじゃないですか。「よかったな!」「やりきったな!」と肩を抱いてやりたくなりますよ。一緒に飲みに行って祝杯をあげたいくらいです。

こんなに気持ちよく終わってくれる映画にはそうそう出会えない。

ええ、もちろん皆さんの感想は「なんとも言えない気分になる、気持ち悪い終わり方」で問題ありません。バッチリです。安心して太陽の下でのびのびと生活していって下さい。

私はできるだけ人と接しないよう、犯罪を犯さないよう、こぢんまりと生きていきます。

戯言ではない話

とまあ、彼の変態性を称え、共感し、絶賛ばかりですが…ほんのちょっぴりだけ真面目な話。

この映画で彼の行動の根底にあるのは実は『愛情』ではなく『嫉妬』

もちろんクララに異性としての魅力も感じているようですが、好きな女性だから意地悪したり忍び込んだりしているのではなく『自分が不幸だから他人も不幸にしたい』という歪んだ欲求が彼を変態的な行動に駆り立てているのです。

快活で人からも愛されているクララを不幸のどん底に叩き落してやりたい。その最終仕上げが、あの結末なのです。

本当であればなおさらあのような終わり方にしてはいけない内容なのですが、そこをあえてセサルの心を満たす形で終わらせたというのが色々な意味でスゴいな、と。

超個人的な戯言感想

というわけで『映画/スリーピングタイト 白肌の美女の異常な夜』

意外に有名な映画ですので、ネットを徘徊すれば感想ネタバレ系のブログは多数ありますが、やはり「彼にどっぷり感情移入&結末に大絶賛」という記事は見つかりませんでした。

うん、日本は平和で良い国ですな。