個人的に開催中の『古き良き映画を再鑑賞しよう月間』で選んだ『映画/ボーン・コレクター』。ネタバレやラストの結末を含むのでくれぐれもご注意を。ついでに続編(ボーン・コレクター2)に関する考察も入れておきます。
それにしても公開当時はかなり面白いと思ったのに、改めて鑑賞してみるとツッコミどころやご都合展開だらけですなぁ。
ボーン・コレクター
1999年 アメリカ
キャスト:
デンゼル・ワシントン
アンジェリーナ・ジョリー
クイーン・ラティファ
マイケル・ルーカー
エド・オニール
マイク・マッグローン
リーランド・オーサー
ルイス・ガスマン
監督:フィリップ・ノイス
脚本:ジェレミー・アイアコーン
原作はジェフリー・ディーヴァーの同名小説
ネタバレ無しのあらすじ
優秀な科学捜査官であるリンカーン・ライム(デンゼル・ワシントン)は不慮の事故により『肩から上』と『指一本』しか動かせない身となり、住み込み看護師セルマ(クイーン・ラティファ)の介護のもとベッドで寝たきりの生活を送っていた。
そんなある日、市警のアメリア(アンジェリーナ・ジョリー)が埋められた遺体を発見。その猟奇性から警察はリンカーンに協力を要請する。
動けない彼の代わりに、その才能を見いだされたアメリアが現場での調査を行うハメになるのだった。
残酷な連続殺人とともに現場に残された謎の手がかり。それが意味する物とは…。
・・・といった流れで若いデンゼルと若いアンジーが頑張る物語。
注)予告は英語版(日本語字幕なし)
キャストで戯言
若い!なにせ今から20年以上前ですからなぁ、そりゃデンゼル・ワシントンが若いのも当然。しかしあまり変わらんね、この人。
そして彼以上に若さを感じるのがアンジェリーナ・ジョリー。彼女は本作が長編劇場映画・初主演となるそうです。この頃はまだ可愛かったんですな。え、今でも十分可愛いって?まぁそこらへんの価値観は人それぞれなので触れないで下さいな。
それ以外にもリーランド・オーサー、マイケル・ルーカーなどコアな映画好きならば「おっ!」と思う俳優が出演しておりますが、それよりもなぜか人気が高いのが看護師セルマ役、クイーン・ラティファ。
某知恵袋でも「セルマ役は誰?」「セルマは死んじゃったの?」とセルマ愛に満ちた質問が飛び交っておりますが、彼女の本業は歌手。ええいそんなにセルマセルマ言ってるデ○専野郎はコレでも見てスパークしやがれ。もちろんわしも嫌いじゃないぞコノヤロウ。
ちなみに「セルマはあれで死んじゃったの?」という疑問に対する回答としては、監督自らが特典映像にて「セルマ(と、チェイニー警部)は死んでいる」と明言しています。悲しむな同志達よ。
理由としては「最終的にリンカーンが生き延びるというだけでも出来すぎのシナリオなのに、それに加えてセルマまで生きていたら都合が良すぎる」とのこと。いやいや、それ以外の部分で十分すぎるほど都合良すぎる展開が連発なのに、何を言ってるんだねアンタは。
ネタバレ3分あらすじ
本作は根強いファンも多く、日本国内でも比較的評価が高い映画。
そういう作品を相手に揚げ足取りのようなことは書くのは危険なのですが、20年経った今あらためて鑑賞してみるとツッコミ満載でおかしな点だらけじゃないですか。あれれ?昔は全然気にならなかったのに。わしの目が肥えたのか、それとも根性が曲がってしまったのか。
まずは「ボーン・コレクターは見たけど昔だから覚えてないや。どんな映画だっけ?」という方のため、ネタバレありの3分あらすじから入っておきますか。
ネタバレ3分あらすじ
お金持ちルービン夫妻の失踪事件が発生、夫は埋められた状態で発見。
ベッドで寝たきりリンカーンは第一発見者でもある婦警アメリアを使ってリモート現場検分を開始。
しかし夫人救出はタッチの差で失敗。壁を壊さないと入れない場所で夫人は死亡。犯人どうやって入った?どうやって出た?出た後に左官作業したん?
続く二人目の被害者も発見時にはすでに死亡。残された証拠からとある本へとたどり着いたリンカーンとアメリアは、『ボーン・コレクター』という犯罪小説の挿絵になぞらえて殺人が行われていることを突き止める。その小説が示す次の犯行現場『波止場』へとたどり着いたアメリアは、どうにか子供だけは救出成功。爺ちゃんは残念アウト。
しかし犯人の真の標的がリンカーンであることを『ものすごく不自然なヒント』からアメリアは見抜くのだった。ここがあまりにも酷い。酷すぎる。
一方その頃リンカーン宅。
おそらく鑑賞者の8割が最初から怪しいと踏んでいたであろう医療技師のリチャードが犯人だったことが判明。
動かぬ身体で必死に(小細工を駆使して)戦うリンカーン。最後はアメリアが駆けつけて犯人射殺。めでたしめでたし…ということで、クリスマスに手をにぎりあう二人でした。
…最初に出てたアメリアの彼氏どうなった?
…と、3分の中にすでに数箇所ツッコミどころが。
『壁を壊さないと入れない』場所にどうやって夫人を縛り付けたんだろね。というか犯人はどうやって出たの?縛り付けた後に壁埋め?
アメリアを単身突入させる際も「犯人がまだいたらどうするんだ!」などと言っとるが、壁を壊さないと入れないってことは『壁を壊さないと出れない』のだから、犯人がいるはずないのでは・・・と。おそらく『他に出入りする抜け道があった』という事なのでしょうが、ここはちょっとだけモヤモヤしますな。
そしてリンカーンが犯人の真のターゲットであると確信した、廃地下鉄路線内の番号プレート。『78499』という数字がリンカーンの認識番号と同じだったことからアメリアは気づいたのですが…ここ、かなり苦しくない?そこにヒントっておかしくない?
さらにもう1つ。小説で最後の殺人となっている挿絵は『大人と子供が縛られている』なのですが、この時にタクシーに乗ってきたのが女性一人客とかだったらどうするのよ。挿絵を再現するには大人と子供が必要…という時に、まんまと『老人と孫が乗ってくる』って都合良すぎないかのう…。
ついでにエディーがピックアップしてくれた『過去12ヶ月間に起きた同一犯らしき未解決事件』、これもリチャード(マーカス)が同様にヒントを残しつつ繰り返していた犯行らしいけれども、リンカーンが気づいてくれるまで延々と人を殺していた…ってことよね?これも過去の出版物になぞらえて?それとも別の何かでヒント?いつ気づいてもらえるかもわからないのに??
長いことリンカーンが気づいてくれなかったせいで、かなりの人数になっちゃってるじゃないのよ。もはや単なる連続殺人鬼だよ、あんた。
しかもね、あなたリンカーンの生命維持装置の技師として潜り込むことに成功しているんでしょう?わざわざ面倒くさいヒントを残した殺人なんてしなくとも、復讐したいならばいくらでも上手な方法があったでしょうよ。
(ただしこれは『優秀な捜査官だったリンカーンだからこそ、その頭脳を翻弄して…』といった理由付けができるかと)
…などなど、本当はもっとあるのですが、揚げ足取りの屁理屈だと言われそうなのでこのくらいで。だって仕方ないじゃないのよ、あまりにもおかしすぎて気になるんだもの。
ボーン・コレクター2?続編は?
さてさて。さんざん重箱の隅をつついてしまいましたが、「そういうもの」として受け入れて鑑賞すればかなり面白い『映画/ボーン・コレクター』、やはり続編を望む声も多いようですな。
ただし本作の原作となっている小説は『リンカーン・ライム/シリーズ』であり、1作目の『ボーン・コレクター』に続く2作目の小説のタイトルは『コフィン・ダンサー』なので、普通に『ボーン・コレクター2』とはならない可能性も。ここらへんは『ハンニバル・レクター/シリーズ』と同じですな。
…とはいえ、映画化の話は2022年現在まで一度もなし。なにせ本作は7300万ドルの制作費に対し本国での興行収入は6700万ドル。全世界合計では1億5000万ドルですが、あまり芳しくない結果の作品ですから。
同シリーズの続編映画化は厳しいでしょうな、たぶん。
超個人的な戯言感想
…というわけで。
なぜ約20年前に鑑賞した時はなんの疑問も感じることなく「おおおっ!奥深くて面白い!」と思えたんかなー。めちゃくちゃツッコミどころ満載で不自然極まる内容じゃないのよ。
いやいや、決して批判しているわけではありませんよ。今見ても非常に面白い映画だと思います。安楽死を選んでまで『人生を終わらせること』を望んでいたリンカーンが、動かない身体で必死に生き伸びようとする姿には感動を覚えますし。
とりあえず『あまり頭を使わず雰囲気を味わう映画』として見れば高得点でしょうな。
この頃の名作って、だいたいそんなノリよね。