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今回の1本はディストピア系作品『映画/ギヴァー 記憶を注ぐ者』

完全に管理された未来世界…というありがちな設定ではあるものの、児童文学を原作としているだけあって投げかけられるメッセージは純粋で率直。

いつも尻がどうとか…変態とサイコさんがどうとか…そんな事ばかり言っている歪んだ大人としては、キラキラしすぎてチョット眩しいくらいの作品でした(笑)

ギヴァー/記憶を注ぐ者


2014年 アメリカ

主なキャスト:

ブレントン・スウェイツ
オディア・ラッシュ
ジェフ・ブリッジス
メリル・ストリープ
アレクサンダー・スカルスガルド
ケイティ・ホームズ
テイラー・スウィフト

監督:フィリップ・ノイス
脚本:マイケル・ミトニック、ロバート・B・ウィード

原作はロイス・ローリーの児童文学『ザ・ギバー/記憶を伝える者』

ネタバレ無しのあらすじ

人々は過去の記憶を持たず、争いも差別もない理想社会『コミュニティ』

家族や職業まで全て管理下にある世界で、ジョナス(ブレントン・スウェイツ)は『記憶の器』という大役に任ぜられる。

それは人類が忘れてしまった過去の記憶を、『記憶を注ぐ者(ギヴァー)』から受け継ぐ…という役割だった。

器として注がれる記憶はジョナスにとって初めて『色のある世界』であり、そこで初めて見る生き物、初めて見る人々の感情に彼は心を奪われる。

しかし、今まで知らなかった事を知るにつれ、ジョナスの中にはコミュニティのありかたに対しての不信感も芽生え始めていく…。

・・・といった内容の作品。

ここからネタバレを含むよ!!

設定はありがち

『完全に管理された理想社会』という、SF作品ではありがちなディストピア世界。

人々は投薬によって感情を抑制され、愛や衝動を喚起する音楽なども存在しない…という設定は、多くのSF映画を思い出させられます。私は『映画/リベリオン』を思い出しました。クリスチャン・ベールがアホみたいなポーズでスタイリッシュに戦うアレです(笑)

この手の設定の作品は基本的に『一見理想的な社会に見えるが、果たして本当に幸福なのか?』というテーマが投げかけられ、主人公が「いやいや、やはり人間は人間らしく生きなくては!」と反旗を翻す…といった流れが王道。

本作も概ねそういった物語となっています。

しかし児童文学が原作だけあって、その表現はストレート。

モノクロで描かれた感情のない世界から垣間見る『色に溢れた記憶の世界』は非常に美しく、見ているこちらまでジョナスと同様の感動を覚えます。

まったくもう、こんな表現されたらディストピア社会を支持する私ですら『ああ…人間っていいな』と思ってしまうじゃないですかっ。

この『モノクロとカラーの対比』という表現も決して目新しいというわけではありませんが…徐々に色づいてくる世界の描写は引き込まれるものがありました。

「色のない世界なら肌の色を理由とした人種差別はない・・って言うけど、白人と黒人はモノクロでも明らかに違うよね!」

・・・などというツッコミを入れられない、ピュアな空気が漂っています。

原作では…

コミュニティは長い年月をかけて遺伝子操作を行い、人々の肌の色や髪の色などを統一してきた…というのが原作の設定なのですが、映画ではそのあたりは描かれていません。

ジョナスのピュアっぷりに…

投薬によって感情を抑制され、貧富の差や優越の差もない、平等で無機質な世界。

私は現代社会の人間のクズっぷりにうんざりしていますので、こういう世界こそ本当に理想だなぁ…と感じます。病んでるのかもしれませんけど。

そんな薄汚れた気持ちを、真正面からキラッキラした目で打ち砕いてくるジョナスときたら…。

いつもならば、こういう青臭い理想論を掲げる若者に対し、死んだ魚のような目で見ながら「世間知らずが…」と思ってしまう私なのですが、彼はなかなかの破壊力でした。

フィオナに対して自覚してしまった愛の感情も、これまた青臭さ溢れるピュアっぷりで…見ているこっちがこっ恥ずかしいほど。いいなぁ、若いって。

そして彼はコミュニティ全体の記憶を開放するため、まだ赤子のゲイブを連れて『境界』を目指すわけなのですが…。

ここでギヴァーがジョナスに渡す『強さの記憶』が…

もう卑怯極まりないったらありゃしないっ!!

なんだよコレはっ!!ものすごく胸を打つ音楽に乗せて、狂おしいほどの勇気・決意・覚悟の映像。これで感動しないほうがおかしいよっ!!

…あれ?なんだこれ!?おかあさーん!!目から水が出てきたよー!!!

鉄人ゲイブ

ゲイブの厳密な年齢は出てきませんが、どう見ても生後〇ヵ月の状態に見えます。

まだ弱く、大事に大事に育てなければならない時期。しかもゲイブは発育不良ときています。

そんなゲイブをバイクの前部に乗せたまま、ありえない大ジャンプ!!

そして炎天下を歩き回ったり、野宿したり、挙句の果てに滝つぼにドボーン!!!…からの、極寒の地を連れまわしっ!!

もうこれ、ゲイブ死んでるんじゃないか?と思ってしまいました(笑)

でも全然元気。へっちゃらな笑顔で余裕さえ漂わせています。

もうこいつのどこが発育不良なのよ。ヘタな三歳児よりも遥かに鉄人…いや、鉄赤子です。

ラストは…

ここは賛否両論分かれるところだと思いますが…

もうダメかと諦めかけたジョナスは『記憶で見たソリ』を発見し、ゲイブと共に乗り込み…そのまま境界を突破!

広がる波動はコミュニティ全体を包み、そして彼は『記憶で見た家』へと辿り着いて物語は幕を閉じます。

ここまでが非常に壮大かつ感動的なストーリーですので、『最後は尻すぼみ』と感じるのも致し方ないかと。私も正直なところ、ここからもう一展開欲しかった…と感じました。

ジョナスの勇気によってコミュニティがどう変化したのか。そして彼自身は幸せになれたのか。非常に気になるところです。

原作も非常にモヤモヤした後味を残す作品ではありますので、ある意味原作に近い…とも言えるですが、それならばもっと不思議な曖昧感を出しても良かった気がします。

中途半端に結末を描写してしまったために、原作ファンとしては『ちょっと余計』、そして原作を知らない人には『ちょっと足りない』となってしまったような…。

しかし「まぁコレはコレで良いかな」とも思えるのは、それまでの感動のなせる業でしょう。そのくらいインパクトのある映像美でした。

あとがき

いやーホント、いつものノリで胸の谷間がひゃっほう!とか、サイコな展開に大興奮!とか書けない映画でした。

ドロドロした欲望溢れる、歪んだ私の中にもまだ『人の心』のカケラがちょっぴり残っているんだなぁ…と思い知らされた1本です。なんか悔しい気分です。

屁理屈で映画を観るタイプの人間からすれば、設定にアレコレ矛盾を感じてしまったり、展開の強引さに違和感を覚えたりするかもしれませんが・・・そういうのはいったん脇に置いといて、子供の頃に戻ったような純粋な気持ちで鑑賞したい作品です。

たまには良いですね、こういう映画も。

なお、テイラー・スウィフトが出演していた件には触れません(笑)