謎の帰還兵でドキドキの『映画/ザ・ゲスト』でネタバレ戯言。ラストが余韻ありなので、またいつもの如く「続編!」と騒ぐ方も多いようですが・・・だからそういう終わり方なんだってば。ちょっと後引くと「これは続編ありきだ!」とか言うのやめましょうよ、恥ずかしい。
ザ・ゲスト
2014年 アメリカ
キャスト:
ダン・スティーヴンス
マイカ・モンロー
ブレンダン・マイヤー
シーラ・ケリー
リーランド・オーサー
ランス・レディック
監督:アダム・ウィンガード
脚本:サイモン・バレット
あらすじ
戦争で長男ケイレブを失ってしまったピーターソン家に突如現れた青年、デヴィッド(ダン・スティーヴンス)。
「ケイレブと同じ部隊で親友だった」との言葉に母ローラ(シーラ・ケリー)はとまどいを感じるものの、精悍な顔立ちと誠実な振る舞いのデイヴィッドに徐々に好感を抱き、すぐに一家全員に受け入れられていく。
しかし彼の行動に不信感を感じた長女アナ(マイカ・モンロー)が軍に問い合わせると衝撃の事実が・・・。
・・・といった流れで、中高生ならばテンションアップしそうなマンガ設定作品。
キャストで戯言
主演は超有名とは言えないものの、ちょいちょい目立つところにいたりするダン・スティーヴンス。
ハーマイオニー(エマ・ワトソン)出演で話題となった『映画/美女と野獣』で野獣役を演じ、さほど映画に詳しくない女子供にまで顔が売れていたりしますな。
そしてヒロイン・・・という位置で良いのどうか迷うピーターソン家の長女アナ役にマイカ・モンロー。
なぜか知名度が高いB級映画『イット・フォローズ』で主演を演じた人ですな。個人的にかなり好みではないので残念。
本作はB級低予算映画なのであとは全員知らん人ばかりです。・・・と思いきや、なにげに父親役にリーランド・オーサーが起用されていてびっくり。『映画/96時間』シリーズや『映画/ボーン・コレクター』など、出演本数の多い名脇役ですな。え、知らん?
ついでに後半登場するカーヴァー少佐役のランス・レディックは『映画/ジョン・ウィック』シリーズに出演しておりますし、近年は『映画/ゴジラvsコング』にも。
なんだ、それなりにアツい配置じゃないですか。
ちなみに監督&脚本は『動物のお面をかぶった男たちに親族が次々殺される!!・・・と思ったら予想外の方向に曲がって最後はアクロバティックに着地』の名作『映画/サプライズ』のコンビです。あれはなかなか面白かったですな。
完全ネタバレあらすじ
内容を一言で言えば『戦死した長男の友人を名乗る男が現れるが、本当はヤバいヤツだった』という映画。そこに中学生が喜びそうなデヴィッドのパーフェクト超人っぷりと、これまた中学生が喜びそうな『秘密の人体実験』という設定を据えている、と。
とにかく全体的にわかりやすいというか…かなりハードルが低く作られており、まるで子供向けアニメのような直球っぷりは好みが分かれるところではないかと。
もうタイトルの出し方も含めて冒頭から不穏な空気バリバリですもの。
「さぁ今から出てくる”長男の友人を名乗る男”は怪しいヤツですよ」とネタばらしをした上で、「いったい彼は何者なんだろう?」を頭の片隅に置いて見てくださいね、という過保護すぎる滑り出し。
まさに最近やたら増えてきている『なんでもかんでも最初に知っておきたい病』の人間にはうってつけの作品じゃないですか。そういうタイプの人間って、映画も鑑賞前にあらすじはもちろん場合によっては結末まで知ってから見たいんだってね。頭…というか、人格大丈夫?
そして終盤は『デヴィッド人体実験で生み出されたスーパーソルジャーでした!!』という、実年齢or精神年齢16歳以下しか喜べないような駄オチ。
この手の設定は名作映画でも多く用いられていますが、そこに綿密な設定や人間ドラマがあるからこそ許せるもの。ところが本作では深い設定等は一切描かず、ただただ「だからー!人体実験で生み出された超人なんだってば!」という子供のような主張のみ。
ある意味『無駄を省き、面白さだけを重点的に描いている』と言えるかもしれませんが、それぞまさに子供向けマンガの手法じゃないですか。
最後も「焼死体が二体!だが歯が全て抜かれていて身元が特定できない!!」と、ベタすぎて呆れてしまいそうなセリフを恥ずかしげもなく披露。これならば「なるほど。それで自分が死んだことにするのね」とバカでも理解できますな。
(巻き添えになったおっさんと少佐で二体なのでしょうが、防火服を奪われた消防士はどうなった?)
もうデヴィッドが倒れた時点のやりすぎ演出(ルークに対する言動や、墓地の展示でR.I.P.等)で「はいはい、本当は死んでないってオチね」と十分バレバレなのに。
続編?そんなものないってばよ
…で、最後に消防服で立ち去っていくデヴィッドを驚きの表情で見つめる姉妹。ここでバーンと終幕。
こういう終わり方をすると「これは続編ありきの終わり方じゃん!」と言い始める輩が必ずいるんですよ。
もちろん製作時点で続編を意識し、あえて続き要素を残しておく…というやり方も確かにあります。結果、大人の事情で続編が出ないことも多々ありますけど。
しかし続編など無関係に、最後に後引く余韻を残して終わらせる…そういう手法も普通にあるんだってば。昔のホラーなんてそんなんばっかりよ?
ホント、『なんでもかんでも最初に知っておきたい病』もそうですが、どうしちゃったの最近の映画鑑賞者は。バカなの?
ある程度映画に慣れ親しんでいる方には言うまでもない事でしょうが、『映画/ザ・ゲスト』に続編はありません。製作の話もありません。(2021年11月時点)
超個人的な戯言感想
散々ボロクソに書きましたが、本作を高評価している方が多いのも事実。
しかもこの手の『素人も楽しめる低ハードルスリラー』は「面白い!」と感じた人間がムキになって肯定しようとするから面倒臭い。本作のWikipediaを見てくださいよ、文章力のない人間が得意顔で綴っているのが伝わりますから。そして評価に関してもかなり偏った目線で都合の良い部分だけ抜いてきている。
ところがね、本作をミソクソに評価している人間もいるのですよ。そしてその中間の意見はあまり聞かれない。
要するに『わかりやすくて、マンガのようなカッコ良さ』を受け入れられる人間には面白い。しかしそれを良しとしない人間にはつまらなすぎる…という事ですな。『映画/ヒットマン』や『映画/リベリオン』のように。
わたしゃ完全に後者でしたわい。
隣で見ていたカミさんも鑑賞後に「…幼稚すぎる」とボソッと言っていましたもの(笑)