今回の1本は「タイトルだけ見りゃB級、しかし中身は骨太作品」の『映画/切り裂き魔ゴーレム』、ラストにブッ込まれる衝撃の結末・ネタバレ・独自考察と感想を含みますので未鑑賞の方はご注意下さい。
切り裂き魔ゴーレム
2016年 イギリス
主なキャスト:
ビル・ナイ
オリヴィア・クック
サム・リード
ダグラス・ブース
マリア・バルベルデ
ダニエル・メイズ
監督:フアン・カルロス・メディナ
脚本:ジェーン・ゴールドマン
ネタバレ無しのあらすじ
1880年、ロンドン・ライムハウス地区で猟奇的な連続殺人事件が発生。
捜査を引き継いだキルデア警部補(ビル・ナイ)により4人の男が容疑者として浮上する。
それと時同じくして劇作家ジョン・クリー(サム・リード)が自宅で服毒死しているのが発見され、容疑者として妻エリザベス(リジー)(オリヴィア・クック)が逮捕される。このジョン・クリーも4人の容疑者の1人だった。
リジーと接見したキルデア警部補は夫ジョン・クリーが殺人鬼ゴーレムであると確信。毒殺の罪で絞首刑に処される彼女を救うため、証拠を集めようとするのだが…
・・・といった内容の作品。
キャストで戯言
主演はビル・ナイ。『映画/パイレーツ・オブ・カリビアン』のデイビー・ジョーンズ役とのことですが、残念ながら私は同シリーズを一切見たことがなく…。それよりも『映画/アンダーワールド』のヴィクターの印象が強い俳優です。
それよりもエリザベス役のオリヴィア・クックですよ。序盤~中盤も悪くないのですが、衝撃のドンデン返しがぶっ込まれたあたりからは凄まじいの一言。
鑑賞後はラストの彼女の表情ばかりが強く残り…もう完全にビル・ナイが食われております
実はつい最近、『ドラマ/ベイツ・モーテル』を全話鑑賞したばかりだったので「おおっ!エマだっ!エマが出ているぞっ!!」という興奮もありまして。
ただの鼻チューブかと思いきや、スゴい女優だったんですねぇ…。
独特な空気と微妙な翻訳
イギリス映画という事もあり、ベタなアメリカンエンターテイメントとは一線を画す雰囲気が魅力的な本作。
『演劇』がテーマとなっているため、セリフや演出など随所に「舞台演劇」的な空気が漂っており、一歩引いたカメラワークと回りくどい表現は人を選ぶ可能性あり。
しかもえらく字幕翻訳が下手クソなために「…はい?」となる部分や、言っている事とやっている事がちぐはぐになっている場面も。
若干複雑な構成でありながらも、決して見づらさを感じさせない作りになっているだけに惜しい…。
ここからネタバレとラストの独自考察を含むよ!!
自信のない戯言考察
最後にブッ込んでくる驚愕のドンデン返し、これを早くから予測できたかどうかは置いといて…。
この映画で個人的に考察したい部分は二点。
『リジーの目的』と『最後の舞台での死の真相』になります。しかしコレがなんとも…。
人によって解釈が異なっていますし、私も今回は「絶対にこれだ!」という確信が得られず自信がありません(笑)
ものすごーくモヤモヤしているうえに、的外れかもしれませんがご容赦下さい。。。
リジーの目的は?
彼女の目的は『名を残すこと』
女性というだけで世間からは一人前として認められなかった時代。どんなに芸術に対して才能と熱意があれど、男からは欲望のはけぐちとして利用され、見下されていた時代。
そんな時代に役者として名を残し、死後も称賛される。彼女の目的は果たせた…という事でしょう。
しかし…私が気になったのは絞首刑に至るまでの彼女の言動。キルデア警部補の「ジョンがゴーレムであると証明しよう」という提案に乗り気ではなかったかと思えば、急に「真相を究明して」となってみたり。
どうにか一旦執行を回避したものの、自らゴーレムであることを明かしてみたり。
私はこう思うんです。
彼女は『夫を毒殺した女』などという小さな犯罪者として処刑されるのではなく、『芸術的な連続殺人鬼ゴーレム』という大物として裁かれたかったのではないかと。
そのためにはキルデア警部補に真実にたどり着いて欲しかった。たどり着いてくれると期待していた。
しかし警部補は最後まで「ジョンがゴーレムだった」という結論のままだったため、自ら「私がゴーレムだ」と宣言しなければならなかったのでしょう。
二度目に絞首台に登らされる際、彼女は『キルデア警部補が証明してくれるから待って!』と必死に抵抗していました。『毒殺者なんかじゃない。自分はもっと大物だ』とも。
ゴーレムとしてではなく、名女優として名を残す事こそ彼女の真の目的だった…と解釈している方もいるようですが、私はそう思えず。
結果的に『夫を毒殺した名女優』となったのは警部補が証拠となる彼女の告白を燃やしてしまったためです。それも計算のうちだったと言うのならば、一連の彼女の言動は不自然になってしまいます。
彼女が本当に求めたのは『名女優でもあり、芸術的な殺人鬼ゴーレムでもある女性』として歴史に名を残す事だったのではないでしょうか。
アヴァリーンの死は?
リジーの処刑後に公開された演劇『不幸の接点』、処刑台から物語は始まるのですが、安全装置が外れていた事でアヴァリーンは本当に首を吊って亡くなってしまいました。
ここ、真相はいかに。
『復讐のためにリジーがあらかじめ仕込んでおいた』という見解もありましたし、『リジーの仇討ちとしてダン・リーノが仕組んだ』という解釈もありました。
なるほど、なるほど。それもアリかと。
私はそういった『誰かが作為的に行った殺人』ではなく、単純に事故死と解釈しました。
もちろん「たまたま死んだ」というだけの事をわざわざ最後に盛り込むのはおかしい話ですので…ここは序盤にも出てくる『傍観者であれ、加害者と同等の血を流させることになる』という文言にもかかってくるのではないかな…と。
この文言は残酷な殺人を喜ぶ民衆・演劇を観る観客などに対する文言でもありますが、直接的ではないもののリジーを陥れる事になったアヴァリーンに対する因果応報…といった感じのオチの付け方だったのかな、と。
リジーが仕込んでいたというのは不自然すぎますし、ダン・リーノが最後にキルデア警部補に送る視線もそういった意味合いではないと感じましたので。
まぁこれも全く見当外れな気がしますけど(笑)
個人的な戯言感想
…というわけで、アレコレ考えてはみたものの不安だらけの解釈に着地してしまった本作。私のポンコツ頭では1回の鑑賞で確信を得ることはできませんでした。。。
なにせこの映画、いつものノリでバカな戯言を繰り広げる隙がないんですもの。
アヴァリーンはぽんぽんとおっぱい&尻を晒してくれましたが、全然魅力的じゃないですし(泣)
ところで「キルデア警部補はゲイらしい」って設定、必要ありました?むしろ補佐する警官(ダニエル・メイズ)のほうがゲイっぽい気が…。