タイトルは完全に「エロ&バイオレンス系B級映画」でありながら、中身は全く別モノの『映画/監禁モーテル』。独自解説とネタバレを含みますが、そもそも意味不明を額に入れて飾ったような作品ですので…。
監禁モーテル
(原題:Among them)
2018年 アメリカ
主なキャスト:
ジョナサン・トムソン
ダン・リーブマン
エヴァレナ・マリー
ニック・アポストライズ
監督:ケヴィン・ジェームス・バリー
脚本:ケヴィン・ジェームス・バリー
ネタバレ無しのあらすじ
ハリー(ジョナサン・トムソン)とミック(ダン・リーブマン)は銀行強盗。
無事に逃走し、組織に指示されたモーテルへとたどり着いたものの、約束の時間になっても仲間は現れず。その代わりになぜか車のトランクには謎の縛られた女が…。
シドと名乗るその女(エヴァレナ・マリー)と共に組織の接触を待つ二人だが、次々に不可解な現象が起き始め…
・・・といったあたりまでは普通にクライムサスペンス。
その後はホラー!?オカルト!?え、サイコ!?…とジャンルがぐちゃぐちゃになりつつ、それらをぶん投げっぱなしで静かに幕を閉じる作品。
WARNING!
まだこの映画を鑑賞していない方へ、まず声を大にして言っておきます。
あなたが想像しているような内容じゃありませんよ!
まず上のパッケージを見て下さい。手を縛られた美人の女性、なにやら右下には下着姿まで見えているじゃないですか。そして『強奪した大金・監禁された謎の女』のキャッチコピー。…で、タイトルは『監禁モーテル』
100人中108人が「ほほう、犯罪+お色気のスリラー作品か…」と思ってしまうのもやむ無し。
しかし騙されてはいけない。決してそんな内容の映画ではありません。
「じゃあどんな内容なのよ?」ですって?そんな事ワタシに聞かないでください。
意味のわからない映画です
…としか答えようがないんですから。
ここからネタバレを含むよ!!
普通に見れる前半のあらすじ
ネタバレを含めとか言われたって、もう何をどう書いて良いのかわからないこの映画。
とりあえず前半の流れを作中で明かされる部分も含めて並べてみると…
- ハリーとミックともう一人で銀行強盗
- 無事に逃走するも一人は撃たれて重症。途中で墓地に置いてきた。
- モーテル到着。
- 組織の一員であるグレイハーストと会う予定だが現れない。車を調べたらトランクからは謎の縛られた女、シド。
- ちょっと目を離した隙に隠していた金が無くなる。シドはクローゼットに縛られてぶらんぶらん。
- 金を奪ったのは誰だ!
はい、ここまで!
一般の方も楽しめるクライムサスペンスはここで終了。いやー、楽しかったですね。シドはめちゃくちゃ美人でしたし。さぁ、再生を止めてご飯でも食べに行きましょう。
え、その先が気になりますか?
大丈夫、ここから先は見ても見なくてもさほど変わりませんから。
後半の独自解釈と解説
前半から継続して、後半も『明らかにこりゃなにかの伏線だろ』という描写が連発ですが、そのほぼ全ては回収されません。
『ハリーの止まらない鼻血は!?』
『シドはなぜ何度も縛られていたの!?』
『結局金はどうなったの!?なぜ銃も無くなったの!?』
『ていうかちょいちょい出てくるオジサンだれ!?』
『やっぱりモーテルの支配人がサイコ野郎だった…ってオチでしょ!?』
…それらの「!?」はぜーんぶまとめて闇の中。
あえて答えを描かない事で解釈を鑑賞者に委ねる…という作風の映画もありますが、本作もそっちを狙っているのか…そうではないのか…
製作者が「あえて描かなかった」のか「描けなかった」のかすら、闇の中です。
だがしかし、何事にも「唯一無二の正解」を求めたがるのが日本人の悪いクセ。
あくまでも個人的な意見とはなりますが…
やはりワタシの解釈としては『ハリーもミックもすでに死んでいた』というオチだと思っています。さらにシドもモーテルのオーナーもグレイハーストもすでに死人。
この物語は自分が死んだ事に気づいていない者たちのお話…という、ありがちな設定だったのではないかと。それをそのまんま種明かししてしまったら単なる駄作なので、なんとも不可解な形に捻じ曲げてそれっぽく仕上げてみました…と。
最後の最後、撃たれた仲間の一人が映るのは『実は彼だけ生き残っていた』と解釈する方も多いようですが、私は『彼が息を引き取る瞬間』と感じました。
これまでの話は全て幻想で、最後に全員が倒れている姿でネタを明かし、死んだと思われていながら生き残っていた彼も息を引き取り、終幕となる…といった形かと。
肝心の「なぜみんな死んでいるのか」に関しては、ものすごく自信がないのですが…。
最後に登場人物が横たわっている(死んでいる)シーンで、作中何度も登場する謎のオジサンも倒れています。彼も「組織の人間」でハリーとミックを始末する仕事だったのではないでしょうか。物語の中で攻撃的な描写が多いのは、そういった経緯からではないかと。
横たわっているシーンの後に『手を拭きながら出てくるグレイハースト』『何かに気づいたような顔のハリーとミック』が描かれるのは、モーテルに金を回収に現れたグレイハーストとハリー、ミックを始末するため、彼が現れたシーンなのか…と思えなくもない。
え、シドですか?見当も付きません(笑)
超個人的な戯言感想
やはりどこのレビューを見ても「意味がわからなかった」が連発の『映画/監禁モーテル』
なにやら完全に理解したらしく、独自解釈を並べている方もいましたが…どうも私は腑に落ちない解説でした。いや、そっちが正解かもしれませんけどね。というかそもそもこの映画に「正解」なんてあるのかどうかも謎なほどにカオスな作りですし。
何事においても、わからないものを素直に「わからない」と言うのは大事ですから。
この映画に対して名作ツイン・ピークスを引き合いに出し、非常に奥深い映画だった!…と称賛して映画通を気取るのも悪くないですが、私は素直に「狙いすぎてこんがらがった自己満足映画」と判を押したいです。
ただし登場人物は非常に魅力的でしたねぇ。
ハリーもミックも素敵。シドはガサツなのに色っぽくて美人、オルガ・キュリレンコっぽいですな。モーテルのオーナーもかなり良い味。
これが魅力もクソもないB級大根役者揃いだったら、そりゃもう途中離脱者続出だったことでしょう。やはりキャストって大事ですねぇ…。