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インパクトあるパッケージとタイトルの『映画/68キル』、その印象通りに独特すぎる作品でのネタバレ戯言になります。

「どんな映画だった?」と聞かれても「すごい映画だった」としか答えられないような作品ですので、これはぜひ一度自分の目と耳と感性で試していただきたい。おそらく評価は真っ二つに分かれるでしょうけど…。

68キル


2017年 アメリカ

キャスト:
マシュー・グレイ・ギュブラー
アナリン・マッコード
アリーシャ・ボー
シェイラ・バンド

監督:トレント・ハーガ

ネタバレ無しのあらすじ

根性ナシで押しに弱いチップ(マシュー・グレイ・ギュプラー)は、サディスティックな彼女ライザ(アナリン・マッコード)に押し切られる形で、共にとある男の家に「6万8千ドル」を盗みに入ることに。

こっそり金だけ奪って逃げるつもりのチップだったが、ライザは家主夫婦を惨殺。なぜかその場に居合わせた女性バイオレット(アリーシャ・ボー)まで拉致するハメに。

その後も度が過ぎるライザの行動に怖気づいたチップは、彼女を殴ってそのまま車で逃走。しかしトランクにはバイオレットが入ったままだった…。

・・・といった流れでカオスな展開が続くキテレツ作品。

クズxヘタレxワケアリ

どんな映画でも1人や2人くらいは「あんた頭おかしいよ!」という人物が登場するものですが、この『映画/68キル』では約90分間に登場する人物全ての中でまともな人間は2~3人のみ。あとは全てイカレた人々…というブッ飛びワールド。

まさに息つく間もないジェットコー・・・いや、独特すぎる間のおかげで息つく間は十分にありました。

悪く言えば「テンポが悪く間延びしている」、しかし良く言えば「間合いの緩急が絶妙」ともとれる独特の『間』を用いた展開はまさに、

息つく間の「ある」ジェットコースタームービー

といったところでしょうか。

合わない人にはとことん合わない、しかしハマる人にはドンピシャでハマる。そんな空気感を持ったトリッキーな作品になっています。

どこに逃げる女を追いかける緊張感あるシーンで、揺れる尻にスローモーション入れる馬鹿がいるんですか。天才ですかアナタは。

この作風からタランティーノ監督を引き合いに出して比較する方も多いようです。なるほどたしかに。彼の作品を少し煮詰めて、浮いたアクをすくってご飯にかけたような映画とも言えます。ちょっと想像しづらいですか?

では…タランティーノ監督の作品を一晩冷蔵庫で寝かせ、塩コショウを振ってフライパンで焼き、それを食べずにガストに行ってハンバーグを食べるような映画です。

どうです、これなら想像しやすいですか?

私はぜんぜん想像できません。


ここからネタバレを含むよ!!

ネタバレ含むあらすじ

ネタバレるのは良いのですが…とにかく困惑の展開が連発ですので、この映画のあらすじを短くまとめるのは無理というもの。

究極的に言ってしまえばこの映画は

ヘタレ男がマウンティング女に揉まれて成長する物語

です(笑)。

女に殴られ、罵られ、命令され・・・それでも必死に自分の意見を主張しようとするも、結局押し切られる。そんな情けない、しかし世の中には多いであろうヘタレ男が、約90分間の地獄の果てに自らの意思で歩み始める…そんな物語です。

…とはいえ、M男の気持ちなんぞ全く理解できない者にとっては前半はただただ不快。わたしゃチップには共感どころか嫌悪すら感じるほど。むしろ彼女(ライザ)のほうが共感できるくらいですよ。

そんなヘタレが出会う女はどいつもこいつもドS・マウンティング系。その中で唯一、本当はピュアな人だった…のか?と思えたバイオレットは、その話の真偽を確かめる間もなく死亡(笑)

…なにこの映画。

その後も騙され、舐めさせられ、縛られ、殴られ・・・と不遇街道一直線のチップに、いつの間にか「ライザ助けに来てくれ!」と見ているこちらが祈ってしまうという困惑展開。

そしてその願いは届き、再びライザが登場した時の心強さときたら…。そしてさらに乱入して大暴れする兄ドウェインの頼もしさときたら、もはや惚れてしまいそうなほど。

…なにこの映画。

その後流れるエンドクレジットを観ながら、「果たしてこの映画は何を残してくれたのか…」と自分の胸に問いかけるも、これっぽっち残っているものがない。しかし無駄な90分間だったかといえば、そうでもない。

なんとも不思議な余韻があるじゃないですか。

そういえば最後に道路脇で車が故障している女性、もっと美人or可愛らしい人であればさらにグッときたんですけどねぇ…。あれじゃ私でもスルーしますさ(笑)

超個人的な戯言感想

…というわけで賛否両論あるであろう、この『映画/68キル』

個人的には圧倒的に『賛』です。前半はやや盛り上がりに欠けるものの、中盤移行は文句の付け所なし。あの一見無駄とも思える「独特の間合い外し」もたまらない。

決して万人には薦められませんが、他人と異なる感性を持つ変人にはぜひ観ていただきたい1本です。

自分の境遇を語るバイオレットにはキューンときてしまいますぞ。