【当ページには広告が含まれています】

公開当時に観た際は「うーん、イマイチつまらん映画だな・・」と思った「映画/アナザープラネット」ですが、今回改めて観てみると「あれれ?こんな奥深くて面白い映画だったっけ?」という感想に。

たしか当時は「映画/ソウ」シリーズや、そっち系のエゲつない作品にドハマりしていた時期で、作品中に女が出てきたら「監禁されるか、凌辱されるか、食べられるか」みたいな・・・人としてどうかと思う方向にどっぷり慣れてしまっていたようです。。。。

アナザープラネット
(原題:Another Earth)


2011年 アメリカ

主なキャスト:

ブリット・マーリング
ウィリアム・メイポーザー

監督:マイク・ケイヒル
脚本:マイク・ケイヒル、ブリット・マーリング

ネタバレ無しのあらすじ

幼い頃から天体に興味を抱き、米国屈指の名門大学であるMIT(マサチューセッツ工科大学)にも合格したローダ(ブリット・マーリング)。

順風満帆の人生を送っていた彼女は、車の運転中に「新たな星が発見された」というニュースを耳にする。

肉眼でも見えるというその星に気を取られたローダは、信号待ちをしていたジョン(ウィリアム・メイポーザー)達家族の車に正面衝突。ジョンの息子と身重の妻はその事故で亡くなってしまった…。

そして時は過ぎ、4年後。

交通刑務所での服役を終えたローダは謝罪のためにジョンの自宅を訪れるものの・・・どうにも話を切り出す事ができず、掃除サービス業者を偽ってジョンの元へと通う事となる。

そんな中、4年前に報じられた星は「もう1つの地球」であり、まるで鏡に映したようにこちらとまったく同じ人間が存在している事が判明するのだった…。

・・・といった内容の作品。

注)動画は予告編ではなく本編の一部カット版になります

キャストで戯言

おそらく初見の際にイマイチと感じた理由に、主演のブリット・マーリングが好みじゃない顔をしていた・・というのもあった気がします。

ところが人の好みは変わるもの。今見ると「すごく好き」とは言えないものの、それほど悪くないと感じます。

なんなんでしょうね、こういうの。子供の頃はピーマンが大嫌いでしたが今では大好物です。そういう事ってよくありますよね。

そしてジョン役のウィリアム・メイポーザー。なんともパッとしない人…とか言われる事もある彼ですが、個人的にかなり好きな俳優です。『ドラマ/LOST』シリーズに出演していましたし、その他の映画でもちょいちょい端役として出てきますよ。

怖い雰囲気も出せるうえに、朗らかな笑顔も魅力的。実はトム・クルーズのいとこでもあります。

贖罪

まるで鏡に映したように、こちらと全く同じ世界、同じ人間が存在する世界・・・というのは、SF作品では珍しくない設定。

しかしこの「映画/アナザープラネット」の斬新なところは、その「同じ世界」の描写が全く無いという点。ラストにちょろっと余韻を残す演出がありますが、描かれる「あちらの地球」は天体望遠鏡で見る大陸の形程度。最初から最後まで「こちらの地球」だけで話が進みます。

そしてテーマは贖罪。…重いです。

設定はぶっ飛んでいるものの、決してパラレルワールドを楽しむSF映画ではなく、犯した罪の重さに苦しみながらどう生きるべきかを模索する、ヒューマンドラマのような作品となっています。

もういつものノリで、尻がどうとか、胸の谷間がどうとか、そんな事を書いてはいけない空気です…。


ここから思いっきりネタバレを含むよ!!
未鑑賞の方は注意!!

全体的な感想

そんな近くに地球と同じ惑星があるのに、今まで気づかないっておかしくない!?とか、どんどん近づいてきてない?近づきすぎてない!?とかいう話は置いておきましょう。それを言ったらSF映画なんて全部おかしいです(笑)

今回はそういうツッコミはしない方向で・・・個人的に考えさせられた部分を私なりに解釈してみたいと思います。

ええ、ちょっとだけ真面目にやります。たまには尻の話が出ない戯言三昧も良いじゃないですか。

なお、あくまでも「個人的な見解」になります。他人の感想を否定したり、こちらの価値観を押し付けるツモリは全くありませんので・・・大人の対応をお願い致します。

二人の関係

最初はぎこちなかった二人の関係が少しづつ打ち解けていく様は見ていてとても嬉しいのですが、同時に複雑な気分にもなります。

中盤、二人でwiiを楽しむ姿なんてもう・・・。初めて笑顔を見せるローダと、少しづつ心を開いていくジョン。楽しそうに仲良くしているのに、とても切なくなってきます。。。

宇宙飛行士の話を語るシーンも、二人の距離が縮まりお互い幸せに向かっているようでもあり、定められた不幸へと近づいているようでもあり・・・。ジョンがローダに幸せな顔を見せれば見せるほど苦しさが増すばかり。それはローダも同じ気持ちだった事でしょう。

もしかしたら、このまま何も語らずに幸せな関係を築いていったほうが良いのでは・・・そんな考えもよぎりますが、それもローダは考えた事でしょう。

しかし、亡くなった奥さんの衣服を洗濯してしまったローダに激昂するジョンの姿が「このまま事故を無かった事にして幸せになどなれない」という現実を観ている私たちとローダに突きつけます。

しかし彼は偉いですね。妻の匂いが無くなってしまった事がどれほど苦しかった事か。それでもしっかり考え、過去にしがみつく自分を反省し、ローダにはっきりと謝罪をするという。

「決して謝らない男」ってたまにいるじゃないですか。謝る事が自分を下げると思っている人。たしかに何かというとすぐ謝るような男はどうかと思いますが・・・しっかり考え、頭を下げるべき時は相手が誰であれちゃんと謝る。「ありがとう」と「ごめんなさい」をはっきり言えない男のほうがよほど情けないと私は思います。あくまでも私は、ですよ。

そしてローダが「もう一つの地球行き」に選ばれた事を告げた時の、彼の嬉しそうな姿。まるで自分の事のように喜ぶ姿から、無理をしている事が伝わってきて・・また胸が苦しくなります。あんなに反対していたのに…。本当に自分を律する事のできる立派な人だなぁと感じました。カッコいいな、メイポーザー。

それだけに、つい抑えきれず出てしまった「行かないでくれ」の言葉がつらい・・。

最終的に、全てを告白したローダとジョンの関係は破綻してしまいます。この時のジョンの気持ちは、どんなに苦しかった事か。

単純に裏切られたとか、愛しているけど憎いとか、そんな簡単な言葉では言い表せない・・・やり場のない憎しみと愛情に、気も狂わんばかりだったでしょう。

しかし彼は前へ進みました。テレビ画面の向こう、訓練を終えてインタビューに答える彼の表情が全てを語ってくれます。

決してまだ「うん、スッキリ!」とはいかないでしょうに。やはり立派な人だなあ。

チケットって・・・

その彼がローダから譲り受けた「もう一つの地球行き」チケット。

あれれ?それって他人に渡してもOKなの?とか思いませんでしたか?私は思いました・・・。しっかり「応募の動機」を書かせ、それを読んだうえで「キミがふさわしいっ!」と選んだはずなのに。

「チケットにはネットで300万ドルの値が付いている」とかいう報道も、本人じゃなかったら無意味なのでは・・と。

ここは勝手に「ローダが事前に連絡をし、しっかり話していたのでは・・・」と脳内補完しました。

自分の代わりに行かせたい人がいる。私の責任でその人を不幸にしてしまった。そんな感じの話をあちらにしっかり話した末に、キミがそう言うのであれば・・・と了承してもらったのではないか。というのが私の脳ミソが出したつじつま合わせです。

感動させるような素晴らしい動機で応募してきたローダ。その彼女がハッキリとした理由をもって「行くべき」と推す人間ならば、その人にしても良いのではないか・・・と。

まぁそんなのは考えすぎで、チケットさえ持ってれば誰でもオッケーのゆるい感じだったかもしれませんけど(笑)

似たような映画も・・・

ジョンはローザから譲り受けたチケットで「まだ妻と息子が生きている…かもしれない地球」へと向かいます。

この「こちらと同じ世界」「こちらでは失ってしまったた家族が生きている」というのは・・・「映画/ザ・ドア」を思い出しました。

「死んでしまった家族がまだ生きている世界」へ旅立ち、そこで新たな人生を送ろうとする男の話はこれだっ!!

[映画/ザ・ドア 交差する世界]タイムスリップ的パラレルワールドへ…

今回の一本は『映画/ザ・ドア 交差する世界』、北欧の至宝マッツ・ミケルセン主演の映画になります。あらすじやネタバレを含みますのでご注意下さい。 なにかと格好良い役…

「映画/ザ・ドア」では、亡くした子供がまだ生きている世界へ行った男が「その世界の自分と成り代わる」ことで、失った幸せを取り戻す話でしたが・・・

この映画のジョンは、おそらく「まだ生きている二人」を一目見ることができれば、それで良いのではないかと思います。

成り代わってあっちに住もうとか、妻子を連れ帰ろうとか・・そういう身勝手な行動をする人間ではないと感じました。

「それじゃ結局意味ねぇじゃん!」と思うかもしれませんが、彼にとっては大きな意味があるのでしょう。

ラストの解釈

この映画の魅力の1つに「ラストの解釈」があると思います。

これはホント、人によってイロイロ考えられると思いますので・・・再び「超個人的な解釈と考察」を垂れ流させて下さい。え?長いですか?たしかに今回はちょっと長くなってしまいました。それだけ考えるところが多い作品だったんです。。。

どこから同期がズレたのか

作品中で「発見した時点から、二つの地球は同一ではなくなった」という流れがありました。

初めての交信でタリスという女性があちらに語り掛けるのですが・・返信してくる女性も同じくタリス。生年月日や思い出などをすり合わせても完全に自分である、という事で「あちらの地球もこちらの地球と全く同じである」と判明するのですが・・・もうこの時点でズレ始めています。

こちらの発信に対し、あちらは返信。こちらがあらかじめ答えをマジックで書いておいて質問し、あちらがその通りに答える。非常に細かい事ですが、「スペース・ストロベリー」と書いたボードはあちらにはありません。完全に同一人物ではありますが行動はズレてきています。こういった細かいズレが周囲の些細なズレを呼び、大きな違いになってくはずです(バタフライ効果のように)。

「発見した時点から」かどうかはわかりませんが、二つの地球は完全に同一ではなくなっています。

もう1人のローダ

ラストでローダはおそらく「もう1つの地球から来たであろうローダ」に出会いました。これがなによりの「二つの地球が同一ではなくなっている証拠」と言えるでしょう。

しかしココがクセモノ。

もう1人のローダは、どういう理由でこちらの地球に来たのか?・・・です。

もしこちらと同様にジョンの家族を殺してしまい・・・罪悪感にさいなまれながら、贖罪として「もう1つの地球」へと旅立ったのだとしたら・・・。

あちらへ行ったジョンは「同じく絶望の淵にいる自分」に出会うだけです。

しかしもしそうではないとしたら。

発見した時点でズレが生じ、事故も起きず、ジョンも死なず。そのままMITで学業を積み、新たなる惑星への探求心でこちらに来たのだとしたら・・・。

ジョンはあちらで、まだ生きている家族に出会えるでしょう。それで彼の中の何かが、踏ん切りがつくかもしれません。

そして戻ってきたジョンは、改めてローダを許す事ができるのではないか。二人が先に進む事ができるのではないか。

・・・ちょっと綺麗事すぎるかもしれませんが、私はそういうラストだと解釈しています。

とても良い映画でした。そして尻。

長いっ!!こんなに長く書いたのは初めてです。

ダラダラと自分語りが長いと読んでいる方がダルいいと思うので、極力簡潔にまとめるようにしているのですが…今回はどうしても長くなってしまいました。

それだけ感慨深い映画だった、という事でご容赦下さい。

そして感慨深いと言えば…。

作品中盤。ついにローダとジョンが一線を越えてしまい、「ああ!そんな若い子と〇〇〇できるなんて、羨ましいったらありゃしない!!」と唯一ジョンに殺意が芽生える場面。

ローダのズボンをすっぽーんと勢いよく脱がせちゃったためにパンツまで半分下がっちゃたのが見えた瞬間はそれはもう感慨深かったです(笑)

どうせならちゃんと尻を!完全に丸見えの生尻が見たかった…

…よし。

なんか真面目っぽく長くなりましたが、しっかりと「尻ネタ」で終わらせることができて良かった