タイトルのインパクトがハンパない『映画/ババドック-暗闇の魔物』でネタバレ含む戯言。謎の存在「ババドック」とは何者なのか?その正体についても解説していますが、あくまで独自考察なので適当に聞き流してまげちょん。
ババドック~暗闇の魔物~
2014年 オーストラリア
キャスト:
エッシー・デイヴィス
ノア・ワイズマン
監督:ジェニファー・ケント
脚本:ジェニファー・ケント
ネタバレ無しのあらすじ
夫を亡くし、女手一つで幼い息子サミュエル(ノア・ワイズマン)を育てるアメリア(エッシー・デイヴィス)。
優しく献身的な母であることを心掛けている反面、心の奥底では問題行動ばかりのサミュエルに疲れ果ててもいた。
ある夜、いつものように絵本を読み聞かせてあげようとするアメリアに、サミュエルが選んだのは『ミスター・ババドック』という不気味な本。
しかしそれを読んで以降、二人の周囲には恐ろしい出来事が頻発するようになる・・・
ババドックで戯言
つーかこのタイトルは反則だろうに!(笑)
もう初っ端から大文字で叫びたくもなりますさ、だって『ババドック』ですよ?日本人の耳にはインパクトありすぎるっつーの。
ところで皆様『ババヘラ』ってご存じ?
東北地方・秋田県の名物で、国道沿いにパラソル立ててアイスクリームを売っているオバちゃんがいるのですよ。ババ(年配女性)が金属のヘラで盛り付けてくれるからババヘラ。
私は仕事の関係で何度も秋田県を訪れており、ババヘラアイスも幾度となく購入しているのですが、人によってはそりゃもう美しいバラのような造形にする達人もいるのですよ。
そんなわけで、『ババドック』なんて聞いたら反射的に『ババ(年配女性)が販売するホットドック的なもの』が頭をよぎるに決まっているじゃないですか(笑)。ホラー感なんてあったもんじゃない。
ちなみにババヘラはAmazonや楽天市場でも買えるので「秋田!?遠すぎて行けん!」という方はそちらでぜひ。その名に反して非常にメルヘンな見た目ですので、娘が思春期で口をきいてくれないお父さんはコレでご機嫌をとってみてはいかが?
ネタバレ1分あらすじ
考察や解説にいく前に、とりあえずネタバレありの内容をざっくり1分あらすじで。
『ババドック』
ネタバレ1分あらすじ
夫に先立たれ、6歳になるサミュエルを1人で育てるアメリア。愛情に飢えた息子はそりゃもう面倒臭く、夜にこっそりソロプレイしている暇もありゃしない。
ある夜、いつものように絵本を読み聞かせようと思ったら、息子がチョイスしたのは『ミスター・ババドック』という不気味な本。
そこから始まる怪現象。ババドックに入り込まれたアメリアはそりゃもうヤベェ人格に変貌。犬はねじ殺すわ、サミュエルに暴言を吐くわ、アクロバティックにドアをぶち破るわ、もう手が付けられないよママ。
…が、特に何をどうしたというわけでもなくババドックはアメリアの外へ。親子仲良くやれるようになり、恐ろしいババドックは地下室で飼うことにしたのでした。
めでたしめでたし。
…で終幕。
最大の罠は、この映画を『単なる”悪霊(もしくは何かしらの化け物)”系のホラー』だと思ったらいかんよ、という点ですな。
そういう薄っぺらい解釈をしてしまうと…
なんかよくわからん闇の化け物が出てきました。
なんか怖い事になりました。
なんか知らんけど解決しました。
(最後は『化け物を飼う』というひねり付き)
という、B級にも満たないクソホラーで終わり。怖いとこなんて1個もありゃしない。
ババドックが何の表現と捉えるか…がミソなのですな。
ババドックの正体を考察・解説
昭和のアメリカンホラー的なルックスで迫る『ババドック』が表しているもの、それは『人間の中に潜む闇』そのもの。
子育てに疲れ、対人関係に疲れ、それでもなお良き母であり続けねばならないアメリアが抱く負の感情を『ババドック』という形で表現しているのですな。
作中、完全にババドックに囚われた彼女が息子に向かって放った『死んだのが夫でなくおまえだったなら』『時々頭を壁に叩きつけて割ってやりたくなる』という強烈な言葉。これは決して血迷ったわけではなく、彼女が実際に心の奥底に押し殺していた本音…というわけです。
なお『ミスター・ババドック』という本を最初に見た時、アメリアは「こんな本あったかしら…」と怪訝な表情をしています。
これは彼女自身、自分の中に恐ろしい感情が育ってきていることに気づいていないという表現であり、その本をサミュエルが見つけたというのは、アメリアが気づかぬうちから、サミュエルはその心を感じ取っていたという意味ではないかと。
ここまで奥深いと、もはや『作品中のババドック関係の描写は全て虚構。育児ノイローゼで病んでしまった母の精神世界を表現している』と解釈して鑑賞しても良いくらいですな。
ですので、最後の…
ババドックを地下室で飼う!?
という、単純なホラー映画ならばトンデモ展開になるオチも、『心の中の闇を消しさる事はできないが、今後はそれを上手に飼い慣らしながら生きていく』という大人のハッピーエンドの表現に変わるわけですな。
サミュエルもそれを感じ取ってか、とりあえずは普通に可愛い6歳児のノリになって一安心。
地下室のババドックを「僕も見ることができる?」と尋ねるサミュエルに、「ええ、大きくなったら」と答えるとこなんて、実に奥深くて良いじゃないですか。
そうそう、1個忘れてました。
これは深読みしすぎかもしれませんが、サミュエルの『なんでもかんでも思った事を口にする』という描写は、アメリアの『なんでもかんでも感情に蓋をして自分すら偽る』という性格との対比なのかな…と。
個人的な戯言感想
いやー、まいったまいった。
てっきり中身スッカスカのC級ホラーかと思いきや、もはやホラーではなくヒューマンドラマと言って良いほどの奥深い作品だったとは。
本当ならば、
熟れた身体を持て余したアメリアが、ソロでハァハァしている姿にめちゃくそ興奮した!!
をとことん掘り下げ、彼女が所持していた「電話の子機か?」と言いたくなるようなハードな大人のおもちゃについて考察し、世に溢れる欲求不満マザーのお相手を私が買って出る…という流れに持っていくつもりだったのですが、何を血迷ったのか真面目に考察してしまいました。
まったく、世の中うまくいかんもんです。