大物俳優が多数出演の『映画/カットバンク』で小包、ラストの意味等の解説も含めてネタバレ戯言。人によっちゃー「グダグダしていてつまらん」という感想になるようですが、個人的にはそれほど悪くない作品でございました。
まぁあちこちツッコミたくなる気持ちはわかりますけど。
カットバンク
2014年 アメリカ
キャスト:
リアム・ヘムズワース
テリーサ・パーマー
ジョン・マルコヴィッチ
ブルース・ダーン
ビリー・ボブ・ソーントン
マイケル・スタールバーグ
オリヴァー・プラット
監督:マット・シャックマン
脚本:ロベルト・パティーノ
ネタバレ無しのあらすじ
モンタナ州の田舎町、カットバンク。
ドウェイン(リアム・ヘムズワース)は恋人カサンドラ(テリーサ・パーマー)と共に町を出ていくことを夢見ていたが、父親は病気で介護が必要。住人のほとんどが知り合いの小さな町では父親を見捨てていくわけにはいかず、モヤモヤとした日々を送っていた。
ある日、恋人をビデオ撮影していたドウェインは、偶然にも郵便配達員が射殺される姿まで撮影してしまう。
奇しくも犯罪の重要証拠には10万ドルの懸賞金がかかっており、ドウェインもその金で町を出ようとするのだが・・・。
キャストで戯言
さほど映画に詳しくない一般層からは「目玉俳優がいない」などと言われておりますが、何をおっしゃるラビット関根。
映画好きならばたまらない有名かつ魅力的なキャストがたーっぷり出演しているのですぞ。
とりあえず主演はあの雷神様の実弟、リアム・ヘムズワース。
兄貴に比べりゃ知名度も人気も低いですが、彼に関してはもう少し長い目で見守ってあげましょう。
恋人役はテリーサ・パーマー。
彼女もいまいちパッとしませんが、まぁ好きな人は好きだと思うので深くは言及せず。
さぁ真の映画好き達よ、ここから本番ですぞ。
まずは説明不要のジョン・マルコヴィッチ、今回は保安官役。
しかも元いじめられっ子でデリケートな保安官という彼らしからぬ役どころ。すっ転んであたふたと慌てるジョン・マルコヴィッチなんてそうそう見れませんな。
リアムの上司兼・恋人の父親役は、4回も5回も結婚したり離婚したり婚約したり破棄したり、一時はあのアンジェリーナ・ジョリーとも夫婦関係にあった恋多きオッサン、ビリー・ボブ・ソーントン。
さらに喘息持ちの郵便配達員は大御所ブルース・ダーン。
さらにさらに、小さい黒目がヤバい変人ダービー・ミルトン役にマイケル・スタールバーグ。
え、これのどこが目玉俳優がいないって?
ネタバレ1分あらすじ
物語の流れをネタバレありでざっくり解説すると…
『カットバンク』
ネタバレ1分あらすじ
ドウェインは懸賞金目当てで偽装殺人を計画。協力者は郵便配達員ジョージーとネイティブアメリカンの同僚マッチ。
しかし運ばれるはずの小包がどうしても必要だった変人ダービーが独自調査でマッチへとたどり着き、その場の勢いで殺害してしまう。さらには死人役として隠れているジョージにも迫り、またもや殺害。
ドウェインと恋人を拉致して小包をなんとか手に入れたダービーだったが、駆け付けたヴォーゲル保安官との銃撃の末に自動車ごと木に衝突。
これがドウェインが計画した偽装殺人だと見抜いていた保安官とスタン(恋人の父親)は、懸賞金を諦めることを条件に『狂言殺人』の辻褄を合わせることに協力する。
ドウェインはわずかな退職金を手に、恋人とカットバンクを後にするのだった・・・。
…という流れ。
おおむね予想の範疇で綺麗に進む物語で、衝撃のどんでん返しはほぼ無し。
ところが変なトコで見当違いの解釈が生まれやすいようで、不要なツッコミで不満を感じている方も。
たしかに”非の打ち所がないシナリオ”とは言い難いですが、もしかしたら誤解されるのでは…というポイントをいくつか戯言交じりで解説致します。
懸賞金早すぎない?
郵便配達員が殺害されたと思ったら、もう『懸賞金10万ドル』の張り紙。
「おいおい、死体も見つかってないのに早すぎるだろ!?」と思った方もいるかも。
これは、各地で発生する職員に対する犯罪行為(殺人等)の有力証拠への懸賞金を示すポスターであり、ドウェインが計画した『配達員ジョージー殺害事件』の懸賞金を特別に提示しているものではありません。
これを見て彼は偽装殺人事件を思いついたのですな。
小包の中身は?
ダービーが執拗に追い求めた『小包』
いったい何が入っているのか・・・と気になるところですが、その答えはヴォーゲル保安官がダービー宅を捜索した時に明らかに。
ダービーはジグソーパズルに描かれていた『理想的な父と母の絵』をリアルに再現しようとしており、それに必要な最後のパーツが『花模様の入った青いバッグ』、つまり中身ではなくあのバッグそのものが彼の目的であり、もしかしたら中身はからっぽかもしれません。
彼の変態性に関して深い説明はないものの、あの父と母も剥製だと思われます。
最後の意味は?懸賞金は?
遺体安置所に横たわるジョージーの前で、あれこれと話をするドウェイン、ヴォーゲル、スタンの三人。
会話の内容がわかりづらかったかもしれませんが、要するに・・・
ヴォーゲル保安官
『このままではドウェインの偽装殺人が明らかになってしまうので、話の辻褄(胸に2発の銃創)を合わせてやる。ただし、条件として懸賞金は諦めること』
スタン
『お前はクビ、退職金は出す。父親の面倒も見てやる(懸賞金ほどではないが、それで新しい生活を始めろ)』
ということ。勘違いしている方もいるようですがドウェインは懸賞金を貰っていません。
(もちろん数ヵ月後にもらうという意味でもない)
このシーンの前に描かれる「結局自分たちは町を出なかった」という旨の思い出話を二人でしているシーンが、彼らの心情を表しているのですな。
つまり『このカットバンクという小さな町から出ることもできたのに、結局出ないまま歳をとってしまった大人からの、未来ある若者への餞別』というわけですな。
それが『犯罪の偽装』ってのは保安官としてどうかと思いますけど(笑)
アレもコレもザルすぎ?
そもそも最初のドウェインの計画からして『死体も出てこないのにどうすんだよ!』とツッコミ入れたくなるザル仕様ですが・・・。
もしかしたら彼の計画では、懸賞金を貰うまでの間だけジョージーに身を隠しててもらい、あとはひょっこり出てきて「嘘だったんか!」でかまわなかったのではないかと。自分は貰った懸賞金で遠くの都会へ逃げてしまえば後はどうにでもなるだろう・・・と。
懸賞金が手に入るまで数ヵ月かかると言われた際の「そんなにかかるのか!?」という反応も、彼にとって予想外だったことを表しているのでしょう。
まぁどちらにせよ上手くいくことは難しい、短絡的な計画だったことは確かですが。
ついでに最後、ヴォーゲルがジョージーの胸を撃って話の辻褄を合わせる点も『調べりゃバレるだろ!』とツッコミたくなりますが、そもそも殺人事件があっても検死官が到着するまで日数がかかるような田舎町。保安官も1人ですし。
犯罪捜査に関して甘いド田舎、…ということでしょうな。
超個人的な戯言感想
個人的にはそこまで悪い作品ではないと感じた者の、世間での評判はいまいちな『映画/カットバンク』
うーむ、ダメですか。そうですか。
もしかしたら名俳優の演技が素晴らしかった…というのが大きかったのかもしれませんなぁ。わたしゃかなり”俳優重視”で映画を見る人ですし。
惨状を見て吐いてしまうデリケートなマルコヴィッチなんて、そうそう見れるもんじゃありませんぞ。