久しぶりの更新はオススメされた1本、『映画/マローボーン家の掟』であらすじ・ネタバレを含む戯言を。ぶっちゃけ途中までは微妙~な気分でしたが、終盤のラッシュがスゴいのなんのって。
とにもかくにも『日本の配給会社は邦題も予告編もクソだらけ』の一言に尽きますな。
マローボーン家の掟
2017年 アメリカ・スペイン
キャスト:
ジョージ・マッケイ
チャーリー・ヒートン
ミア・ゴス
マシュー・スタッグ
アニャ・テイラー=ジョイ
カイル・ソラー
二コラ・ハリソン
監督:セルヒオ・G・サンチェス
脚本:セルヒオ・G・サンチェス
ネタバレ無しのあらすじ
1968年、アメリカ郊外。
何者かから逃れるように、30年以上離れていた生家へと戻って来た母ローズと四人の子供たち。
これまで暮らしたイギリスでの事を全て忘れ、遠く離れた地で新たな生活を始めた5人だったが、間もなくローズは亡くなってしまう。
兄弟たちは彼女の遺言を守り、ジャックが21歳になるまで母の死を隠しながら力を合わせて生きようとするのだが・・・。
注!)予告編は作品を台無しにしているので見ないほうが良いかと
キャストで戯言
アメリカ・スペイン合作、なかなか通好みなキャスティングの『映画/マローボーン家の掟』
主演のジョージ・マッケイは本作の後、全編ワンカット(に見えるが実はそうではない)で有名な『映画/1917 命をかけた伝令』で主演を務めているのでご存じの方も多いかと。
優しい系イケメンで適度なマッチョ感、しかも白タンクトップで肩出しですぞ。そっち系が好物の女性はうっとりしながら鑑賞したことでしょうよ。ほれ、ヨダレ出てる。
ええい怯むな男性諸君。魅力ならば出演女優も負けていないぞ。
四兄弟の紅一点ジェーンを演じるのはミア・ゴス。
出演作品は少ないですが、いろいろとアレな事で有名なラース・フォン・トリアー監督作品『映画/ニンフォマニアック』や、内容そのものがアレな『キュア~禁断の隔離病棟~』に出ていた人ですよ。
え、わからんって?ほらほら、あのシャイア・ラブーフと結婚して2年も経たないうちに離婚した人ですよ。
しかしおそらく男性陣が食いつくのは彼女ではなく、主人公ジャックの恋人役のこっちでしょうな。恋人アリーを演じているのはモデルとしても有名なアニャ・テイラー=ジョイです。
美人モデルと来たらコレでしょう?ほいインスタ垢をどうぞ。
Instagram:アニャ・テイラー=ジョイ
Anya Taylor-Joy (@anyataylorjoy)
どうでもいい日常写真ダラダラ垂れ流しのアカウントではなく、しっかり彼女の宣材写真が多く投稿されておりましたよ。やはりプロはこうあって欲しいね。人が何喰ってるかなんて興味ないもの。
彼女はその迫真の演技から『絶叫クイーン』という異名まで付いているそうな。納得。
ルール系スリラー…ではない
日本版の映画予告でよく見る『1、〇〇〇してはいけない』『2、〇〇に触れてはいけない』といった掴み文句。
いわゆる『ルール系スリラー(ホラー)』ってヤツですな。
しかしM・ナイト・シャマラン監督作品の『映画/ヴィレッジ』などは内容がしっかりルールありきだったので良いものの、そうでない作品にまで『〇〇してはいけない』煽り連発でルール系のフリをし、釣ろうとする予告編動画の多いこと多いこと。
そして本作の予告も完全にそっち系なわけですよ。上に貼ってるから見てきて下さいな。もうホント、邦題をも含め日本国内の配給会社はセンスも節操もないアホが多くて呆れますなぁ。
たしかに母親の遺言として「21歳になるまで・・・」てな約束ごとはあるものの、決して予告編で出されているように『1、屋敷を離れてはならない』『2、鏡を覗いてはならない』『3、屋根裏に近付いてはならない』という3つのルールが明示されているわけではないし、そんなセリフも無い。
こんな煽りをしていると予告を見て「お。ルール系スリラー(もしくはホラー)か」と思って鑑賞した人間は「あれれ?」となって変な期待外れ感が出ちゃうじゃないですか。私もそうでした。
もしまだ未鑑賞の方がいれば、始めに言っておきます。
本作は決して『ルール系スリラー(ホラー)作品』ではありません。スリラー要素は数多く含まれていますが、ホラーでもない。
そっち系のつもりで頭をフル回転させながら見るものではなく、むしろ現代版ファンタジーを楽しむくらいのつもりで挑んだほうが良いかと。そうでないと鑑賞後の感想すらねじ曲がってしまいますぞ。
ちょっと眠いぞ前半戦(微ネタバレ)
ぶっちゃけ序盤~終盤まではまるで絵本のような演出やセリフが続き、ツッコミどころもたっぷり。先ほど書いたように『ガチ頭使う系スリラー』を期待して鑑賞すると、屁が出るような展開が萎えること萎えること。
しかしまるで絵画のようなカメラワークと芸術的なライティングは美しく、上質な音響も雰囲気を引き立てている。余計な先入観無しで考えりゃ実にイイ空気感を醸し出しているのですよ。
てなわけで前半あらすじを微ネタバレで。
何かから逃げるように遠くアメリカまで越してきたフェアバーン…もとい、マローボーン(母方の姓らしい)一家。
果たして何から逃げているのか?『彼』とは何者なのか?・・・は早々に判明し、どうやらヒドい父親から逃げてきた様子。そしてその父はすでにこの世にいないという事まで明かしたうえで、頑張る兄弟の物語が繰り広げられるわけですな。
この『兄弟の絆物語』の尺がやたら長いせいで少々ダルくなるものの、この映画が本気を出してくるのは中盤を越えてから。
よくわからんかったホラー要素の正体は…
実は父親を天井裏に閉じ込めて殺していた!その霊だった!!
…という「ちょ、まっ」と困惑するような話の流れに。
しかもそれをさらに一回転させ、
死んだと思ったらまだ生きてた!!
…という「ふぁっ!?」と変な声が出てしまいそうな方向に持っていくという。
きたきたー。なんか変な感じはあるものの、物語が急展開してきましたなぁ。
しかしこれでもまだ本気ではないのですよ、この映画は・・・。
怒涛のラッシュだ後半戦(超ネタバレ)
注!)
ここから最後のネタバレを含む
物語終盤、アリーがお手製の絵本をぺらぺらとめくりながら明かされていく物語の真実。
いきなり窓に一発ぶっ放したのはやはり父親で、なんかプイっとどこかへ行ってしまった後にジャックともみくちゃ合戦へと突入。
ジャックはどうにかナイフで父親の喉を刺して逃げるも、先回りして待ち構えていた父に崖から落とされてしまうのでした。
そう、なんと…
父親は喉を刺されてもへっちゃらピーだった!!
しかもなんか知らんけどワープまでできた!!!
…という驚愕のどんでん返し・・・・いや、これはツッコミどころですな。いやいや、あまりにも無理矢理すぎて衝撃だったんだもの。特にワープが。
しかしワープを超える衝撃がその先には待っているのですよ。
「絶対死ぬだろ。かなり高いぞ。しかもそこ岩場だぞ」という落下でも死ななかったジャック。さすがに気は失ってしまったようで家に駆け付けるのが遅れてしまい・・・
ビリーもジェーンもサムまでも!
みんなみんなすでに死んどった!!
…と、悲しすぎる展開が待っているのです。
そう。これまで登場していた三人の兄弟は現実を受け入れられなかったジャックが作り出した幻影。ジャックが多重人格として演じていた存在だったのですよ(この件は後ほど)。
そして天井裏の父親はちょいちょい亡霊っぽいフリをしながらしっかりご存命。つーかホントにバケモノだね、あんた。喉は大丈夫?ちなみにアライグマって美味いの?
父に襲われるアリーを救うため、なんかごちゃごちゃになっているジャックの中から兄弟イチのアウトロー、次男ビリーが顔を出すわけですな。
いやー、ココの「ジャック、俺にやらせろ」のセリフは強烈に感動しましたなぁ。ジャックの顔が完全にビリーに見えたもの。
てなわけでどうにか危機を乗り越え、無事にジャックとアリーは寄り添うのでした(弁護士すぐそばで死んどるけど)。
ふぅ、後半のラッシュ激しすぎるよ、ホントにもう。
ところがどっこい、この映画はその後がまた良いのよ・・・。
多重人格モノと片付けるには…
晴れて一件落着(か?)となり、静かになったマローボーン家。
精神科病院でのアリーの会話から、ジャックの多重人格は回復へと向かっていること、彼女はジャックと共に生きていく決意をしたことがわかり、とりあえずハッピーエンドの香りが匂ってきます。
しかしこの娘はいい娘だねまったく。弁護士(故人)が惚れるのもわかるよ。
…が、家に帰ったアリーが薬をしまうために戸棚を開けると、そこには手の付けられていない薬ビンがずらり。
・・・そう、ジャックは薬を飲むことなく、ずっと弟妹たちと生きていく道を選んでいたのです。そしてアリーもそれを理解し支えていたという。
おいおい!なんだよこれ!
普通にハッピーエンドよりもイイ話じゃねぇか!!
そこでちょっと思うのですよ。この映画を『多重人格オチ』と括る方も多くいるようですが、それはあまりにも無粋なのではないか、と。
ビリーも、ジェーンも、サムも、全てジャックが作り上げた幻想ですし、明らかに妹弟たちの人格でジャックが会話しているシーンも描かれていました。
しかし妹や弟は『ジャックの別人格』ではなく、『ジャックの心の中で生きている』と解釈すべきではないかと。もちろん比喩としてではなく、現実の現象として。
これを『多重人格』という病気で片付けてしまっては単なる精神科医と同じですし、なにより絵本のような物語を紡いでくれた製作者に対し申し訳ないじゃないですか。
ちょっと勘違いして観ていた時は「なんか絵本くせぇな」とマイナスに感じていた表現は、まさにこの瞬間のためにあったのだな・・・と。この映画は理屈ではなく心で感じる作品だったのですな。
だからこそ、アホなスリラーのような予告編にした配給会社の男はキン〇マを潰してやりたくなりますよ。あ、女性かもしれんか。女性だったら地下室に監禁して調教します。
(予告編のせいで変な先入観を持って観てしまったので、翌日にもう一回鑑賞しました)
超個人的な戯言感想
…というわけで、タイトルは知っていたものの未鑑賞だった『映画/マローボーン家の掟』
オススメされて鑑賞してみましたが、実にイイ作品でした。ありがたい。
失敗したのはやはり予告編を見てしまった事ですな。序盤は「う・・・またミソクソに書きたくなるような映画か・・・」と思ってしまいましたもの。
なお完全に余談なのですが・・・
わたしゃてっきり、アリーにちょっかい出していた弁護士ポーターが「きみは彼のことを何も知らないからだ。彼の正体を見ろ」と書類を手渡したシーンでは、
新聞で『バンプトンの野獣』とされていた連続殺人鬼は、父親ではなくジャックだった!!
…というどんでん返しに持っていかれると思ってましたよ。
その前に末っ子サムが新聞記事を発見した時、連行される犯人がすっぽりと布を被っていたじゃないですか。それが気になってたんですよね。
アリーがページをめくる時も、
- 1枚目・逮捕の記事で、連行される犯人が頭からすっぽり布を被っている
→中身は父親ではなく実はジャック - 2枚目・『連続強盗犯フェアバーン 被害者13人』の記事
→名字だけ、というのがミソ - 3枚目・長男ジャックが父親を告発の記事
→しれーっと父親に罪をなすりつけるサイコっぷり
という布石なのかと。「21歳まで隠れて生きる」というのも、実はそれに関係しているのでは…と。
・・・いや、それだと色々とおかしな部分がありますな。訂正、嘘です。思ってません。
私信
そら様へ
ちと仕事中の怪我で更新が止まっていましたが、オススメ映画2本目を観て書かせて頂きました。
実は先月、当ブログの問い合わせフォーム設定を変えたのです。
そのせいで…
約一ヵ月、問い合わせメールが届かない状態になっていました(笑)
いや「(笑)」じゃないですな。
そのため『映画/プロミシング・ヤング・ウーマン』記事への感想が届かず、「うーむ、やはりミソクソに書いたから嫌われたか。かなりオブラートに包んだつもりなんだが・・・」とか思っていましたよ。がははは。
幸いギリギリでサーバーにメールが残っていたので読むことができましたが、好意的な読者を一人失うトコでした…。あぶねっ。
ぜひオススメがあればまた教えて下さい。もちろんオススメとは無関係な戯言でも結構です。頻繁に送られても気色悪いなんて思わんですよ、むしろモチベーションに繋がるのでありがたいです。
ではでは…なんかいろいろとアレな事が続いていますが、良き映画ライフをお送り下さい。