今回の1本は豪華キャストが魅せる騙されムービー『映画/ソードフィッシュ』です(ネタバレあり)。しかし個人的には騙されるというよりも『不自然かつ後付けの伏線回収をされる』といった印象。
作品冒頭、トラボルタ演ずるガブリエルがハリウッド映画に対して放つ独自の批評には『おっ。こんな事言わせるって事は、よほど斬新な内容と結末になるのか!?』と期待したものの…
フタを開けてみりゃ後出しジャンケンのザル設定で、「おまえが言うな」とツッコミたくなる作品でした。。。
ソードフィッシュ
2001年 アメリカ
主なキャスト:
ヒュー・ジャックマン
ジョン・トラボルタ
ハル・ベリー
ドン・チードル
サム・シェパード
ヴィニー・ジョーンズ
監督:ドミニク・セナ
脚本:スキップ・ウッズ
ネタバレ無しのあらすじ
元天才ハッカー、現在は仮釈放中でトレーラー暮らしのスタンリー(ヒュー・ジャックマン)のもとに謎の美女ジンジャー(ハル・バリー)が現れ、高額の報酬と引き換えにある男に会って欲しいともちかける。
愛する娘の親権を獲得するため、その男ガブリエル(ジョン・トラボルタ)の元へと向かったスタンリーだが・・・否応なしに犯罪計画に巻き込まれていくこととなるのだった。
・・・という流れを薄っぺらいハッキング描写とスタイリッシュすぎてダサい演出で描く、ツッコミどころ満載のサスペンス「風」B級アクション作品。
キャストで戯言
とにかくキャストが無駄に豪華な本作ですが、それぞれの俳優が魅力を発揮しているかと問われれば…なんとも微妙。
たしかに主演のヒュー・ジャックマンは相変わらずカッコ良いです。カッコ良いのですが…ハッカー…ではないよなぁ、彼。ノリノリのテンションで適当にキーボードを叩き、なぜか謎のオートキャドでワームを構築しようとするハッキング描写はサムさすら漂います…。
そしてダブル主演のジョン・トラボルタ。少々お太りになられている頃の映画ですが、雰囲気はカッコ良し。…しかし髪型は金太郎。
ヒロインポジションのハル・ベリーに至っては大竹しのぶに見えてきますし、過剰なまでにエロティック押しな役柄も似合わず。正直なところハル・ベリーを「セクシー」とか「エロス」の役どころに据えるのは無理があるかと…。下着姿になろうとおっぱいを全開にしようと、全然ソソらないんですもの…彼女の身体…。
それ以外にも名の売れた俳優が何人か登場していますが、それよりも個人的に「うほっ!」となったのは冒頭のシーンで人質を外に連れ出し、狙撃されちゃう彼です。
おいおい、ウィリアム・メイポーザーじゃないかっ!!
エンドクレジットでは名もなき配下の一人とされていましたが、かなり好きな俳優です。代表作ですか?えーと…『ドラマシリーズ/LOST』のイーサン役です。マイナー作品ですが『映画/アナザー・プラネット』では主演級ですよ。
ここからネタバレを含むよ!
全体的に苦しい展開
開始早々、本作品の最大の見せ場とも言えるバレットタイムが炸裂です。ここはホントめちゃくちゃ力を入れたなぁ…と感じます。なにせ600台のカメラを使用したそうですから。
- バレットタイムとは?
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被写体の周囲に複数台のカメラを設置し、連続撮影する事でアングルを変えていく撮影技法。
被写体はスローモーションでありながら、カメラワークは高速で移動していく映像を撮影する事ができる。使い方次第ではほぼ静止した状態でカメラアングルのみ移動させる事も可能(マトリックスのアレなど)。
その後に続く本編もハル・ベリーの違和感あるビッチ感にさえ目を瞑ればそれなりに見ごたえのある展開で、しっかり物語に引き込んでくれます。ところどころ「あれ?」と思う点はあるものの、まぁガチリアルなサスペンスではありませんし。
しかし『こっそりハッキングで金を奪うのかと思ったら、直接銀行に乗り込んだ!』のあたりからは都合の良すぎる展開の連発。
『ガブリエルの周到な作戦と見る者を騙すテクニックにより、計画は完璧に成功した!』という話にするには、ちょっと無理がありすぎるかと…。とにかくあっちもこっちも「たまたま都合よくそうだっただけだよね!?」という状況がありすぎです。
最後は正義が勝つとか、ハッピーエンドを望むとか望まないとか、全人類を救うために1人殺せるか?10人なら?100人なら?…とか。中学生男子が好みそうなハリボテで雰囲気作りをしているものの、あくまでも「雰囲気」のみ。緻密なトリックのサスペンスとは言い難い内容に、後半はシラケてしまいました…。
騙され…る?
揚げ足取りなんぞ書いても、読んでいる方は気分が悪くなるのは重々承知しております。
しかし言いたいっ。言わせて下さいっ。「あー、理解力ないんだね、この書き手は」と蔑んでも罵ってもハイヒールで尻を踏んでも良いですから、1つだけ言わせて下さい。10ヵ所以上感じたモヤモヤのうち、1つくらい良いじゃないですかっ。
言いたいのはアレです。ガブリエルの乗るヘリが飛び立ち、スタンリーがロケットで撃ち落とすアレです。
その後死体が発見され、『ガブリエルは死んだ』とされるものの…スタンリーが「ハッ」と気付き、説明回想でご説明してくれる内容が…
実はヘリに乗らず、コソコソと階段で降りていっていた。
…って、なにそれ!?(笑)
大量の警官を動員して「階段とエレベーターは封鎖しろ!」って指示されてたよね?いったいどこから?
観客は目と耳の刺激に騙される…という理由付けは良いんですが、そういう事じゃないよね?
もしかしたらアレですか?とりあえず屋上からは逃げておき、どこかに隠れてほとぼりが冷めてから…ビルを出る?…うーむ。
おそらく彼の事ですから、あの場でスタンリーがロケットで撃墜しなくともヘリの事故か何かを装って墜落させるなどしていたのでしょう。自分が死んだ事にするために、ヘリのパイロットも警護の傭兵も全て騙して犠牲にするつもりで。
しかし、ヘリのパイロットは後ろに乗せてある『ガブリエルっぽい死体』をヘンだと思わなかったのでしょうか…。乗り込んだ傭兵は「うっわ、死体積んである!え?ガブリエルさん?」と思わなかったのでしょうか…。
それとも事前に上手いこと説明してあったのでしょうか。…うーむ。
あ、1個と言いましたが、ついでに小さいのも。
ジンジャーはスタンリーが着替えを覗いて入ってきたから「実はDEAの潜入捜査官だった」という嘘を植え込む事に成功しましたが、スタンリーが「あ、レディーの着替え中だ。覗いちゃ失礼だな…」と紳士だったらアウトですよね…。
彼が覗いてくれるまで、ひたすら半ドアで脱いだり着たりを繰り返すつもりだったのでしょうか。
そこもアレですか?そこに至るまでにアレコレとセクシーな誘惑をしておいて興味を持たせておいた…という理由付けが成立するのでしょうか。…うーむ。
騙されたっ!
他にも細かいツッコミどころかデカすぎる釣り針があっちこっちにぶら下がっている内容ではあるのですが、挙げていったら5000文字を超えそうなので割愛致します。
『スタンリーがワインセラーで発見したのは、事前に用意されていいた本物ガブリエル(元モサドのテロリスト)の死体。それを発見させる事で、死んだと思わせる』ってのは悪くないんです。ガブリエルは本当のガブリエルではなく、その人間に成りすましていた誰かだった…ってのも。
しかしどこか一ヵ所ボタンを掛け違えてしまったら映画として成立しなくなるような都合良すぎる展開のオンパレードに、緻密な頭脳戦…といった印象は抱けませんでした。
という事で・・・
本作品での驚きはガブリエルの正体でもジンジャーの正体でもなく…
豪華な俳優とそれっぽい雰囲気のせいで『緻密な設定のクライムサスペンス映画』だと思っていたら・・・実は『ザル設定のスタイリッシュ風B級アクション映画』だった!!
という、予想外の騙され感でした(笑)
サスペンスやミステリーにおいて『くそっ、騙された!』と感じる瞬間は至福でもあります。しかしこういう『騙され感』はできれば避けたいものです…。そしてできることならハル・ベリーの萎えるおっぱいも避けていただきたいな、と…。