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さぁ来ました、映画界隈で夢オチだなんだと物議を醸している映画『ブラック・バタフライ』でネタバレと考察・解説を含む戯言です。とにかく「夢オチ、ダメ絶対」と言われておりますが、しっかり考察すれば本作は決して夢オチなどではないのですよ。

なおこの作品は余計な情報を仕入れてから観てしまうと面白さ9割減になってしまうので、未鑑賞の方は余計に読んでしまわないようご注意下を。

ブラック・バタフライ


2017年 アメリカ

主なキャスト:

アントニオ・バンデラス
ジョナサン・リース=マイヤーズ
パイパー・ペラーボ

監督:ブライアン・グッドマン
脚本:ジャスティン・スタンリー、マーク・フライドマン

ネタバレ無しのあらすじ

4年前に妻が去って以来、スランプに陥り書けなくなってしまった作家のポール(アントニオ・バンデラス)。

困窮し家も売りに出さねばならない状況になった彼は、不動産屋の担当ローラ(パイパー・ペラーボ)と訪れたダイナーでトラック運転手とモメてしまう。

しかし流れ者のジャック(ジョナサン・リース=マイヤーズ)の助けで事なきを得たポールは、助けてもらった礼に行く当てのないジャックを家に泊める事にするのだが・・・。

・・・といった程度で止めておかないと台無しになる内容の作品。

キャストで戯言

とにかく本作の見どころは大御所アントニオ・バンデラスと実力派ジョナサン・リース=マイヤーズの火花散る演技合戦。

俳優という意味での演技合戦でもあるが、ストーリーとしても互いに互いを欺く騙しあいが展開されるところが素晴らしく、ハァハァと興奮してしまいますな。

さらにそこに美人のパイパー・ペラーボが混ざってくるというのですから、こっちも別の意味でハァハァですよ。


裏の裏は…

最近ではサスペンス系の作品は最後にどんでん返しがあってなんぼ!みたいな風潮になってしまってしまい、あっちもこっちもゲップが出るくらいに『驚愕のどんでん返し系サスペンス』だらけ。

鑑賞している側も「どうせこれはミスリードだろ?」と疑り深くなっているため、ちょっとやそっとのひっくり返し方では驚かず。一昔前ならば衝撃的だった多重人格系のオチなど、今じゃ夢オチと同レベルに扱われる始末ですよ。そもそも駄オチの代名詞とすら言えるその『夢オチ』ですら、遥か昔ならば衝撃的などんでん返しとして成立していたのですから。

そして目の肥えた映画ファンを唸らせるため、時代は「二段どんでん返し」へ。

物語の裏を読んでくる鑑賞者に対し、さらにもう一段の衝撃を用意しておくという多段式びっくりロケット。そんな映画が増えております。

そしてこの『映画/ブラック・バタフライ』も二段式。いえ、厳密にいえば三段式なんですよ。

しかし最後の1回が『夢オチ呼ばわり』される原因にもなっているのです。

ブラック・バタフライ/ざっくりフロー

ではまず、なにをどうひっくり返しているのかをざっくりフローで。

物語開始
世間では連続殺人が発生中。犯人は不明。

ポールは流れ者のジャックを家に招くが、どんどんジャックがヤバくなっていく。
こりゃジャックが連続殺人犯なのでは…の流れ。
1回目のどんでん返し(軽め)
じゃじゃーん!なんと作家のポールが殺人犯でした!
ジャックは単に頭がちょっとアレなだけの人間でした。
立場も逆転、一気にジャック大ピンチ。

人里離れた場所に一人で暮らしている人間が殺人鬼…ってのはありがちですな。
2回目のどんでん返し(強め)
甘いっ!実はジャックはFBIで、連続殺人犯を追ってのおとり捜査中でした!
ついでに美人のローラも、トラックの運転手も、偽の配達員も、全て捜査員でした!

アレコレとツッコミ要素や辻褄が合わない部分があるものの、とりあえず衝撃的なので良し。
ポールは逮捕されてTHE END!!
3回目のどんでん返し(もはや蛇足)
くそー・・・あれ?ここは?もしかして夢?
そうか!全て夢だったんだ!
よーし、面白い話が書けそうだぞー!

…と、ここまで展開されたストーリーの小説を書き始めるポールで終幕。

・・・というのがざっくりと普通に鑑賞した場合の流れです。

たしかにこれでは、物事を深く考えない鑑賞者に『最後は夢オチの駄作」と言われるのも致し方なし。

たしかに我々が見た映像としては『夢オチ』で間違いありません。ただし、「そんな夢オチの作品を書いたって売れんわ!」というツッコミはまるで見当違い。

彼が夢を参考にしてこれから書くであろう『ブラック・バタフライ』の物語は、夢オチにはならないのです。

決して夢オチではない

映画だろうと漫画だろうと小説だろうと「ダメ、絶対」とされている『夢オチ』

数十年前だったらイケたかもしれませんが、今ではもはや禁じ手とも言えるでしょう。

この「映画/ブラック・バタフライ」も三回目のどんでん返しのせいで単なる夢オチ映画とされ、そりゃもうブーイングが飛び交っております。

しかしちょっと考えてみて欲しいのです。

物語の最後、夢から目覚めたポールは「これはスゴい!今の夢を小説にしよう!」と、ブラック・バタフライというタイトルでタイプライターを叩き始めました。

感想サイトなどでは散々「こんな夢オチの話を小説にしたって売れないだろ」とツッコまれていますが、ポールがこれから書くであろう小説ブラック・バタフライのオチは2回目のどんでん返し「実はジャックがFBIだった!」で終わりになるんですよ。彼が見た夢はそこまでなのですから、決して夢オチ小説にはならないのです。

夢オチのように見えるのは、その全てを客観的に見ていた我々(鑑賞者)だけ。

・・と考えると、この作品のラスト(ポールが目覚めてタイプを始める部分)は「本編の全てを夢オチで結論づける」のではなく、本編の物語とは別の要素と考えるのが美味しく味わうポイントではないでしょうか。

ちょっと文章では伝わりづらいかもしれませんが・・

この『映画/ブラック・バタフライ』は、ポールがこれから書くであろう小説の話を映像化したもので、実はジャックがFBIでした…でストーリーとしては締められている、と。

そしてその物語を生み出したのは、ポールの夢であった・・・というちょっとヒネったオマケが最後に付いていると考えたら?

作品中でポールとジャックが「オレの物語だ!」「いや、オレの物語のほうがいい!」と競い合っていたじゃないですか。この争いの最終回答として『全てポールの物語だった』という結論を付けてくれているのですよ。

当初はポールの物語であった話が、ジャックの物語へと変わり、そして終わる・・・と思えたが、最終的にはやはりポールの物語であった・・というわけですな。

そう考えると単なる夢オチとは言い難い部分がありませんか?

超個人的な戯言感想

うーむ、上の文章で伝わるだろうか…。書いている私もどうやって伝えれば良いのか…文字って難しいですな。

じっくり考察すれば夢オチでもなんでもなく、非常に斬新で奥深い映画だと思うのですが、やはりちょっとわかりづらいというか誤解を生む表現になってしまっているため「夢オチかよ!クソ映画じゃないか!」と感じる人が出るのも致し方なし。

私もあのシーンを見た直後は「夢オチかよ!!」と思いましたもの。

おそらく三回目のどんでん返しは無かったほうが評価も高かった事でしょう。なんならクレジット後にオマケ要素として入れても良かったのではないかと。それでもあえて入れてきた監督の自己満足とも言える要素、これは大事にしてあげましょうよ。

どうせツッコむなら、もっと違う部分をツッコんで楽しむのが良いかと。

屋根に登った捜査員の意味は?などなど、おとり捜査の部分もツッコミだらけですが、なによりも私が一番気になった部分は

ポールってタイプライターを人差し指1本打ちなの!?

…ですな。

彼、本職の物書きよね?ペンではなく、普段からタイプライターで打ってるんだよね?

すごい遅いペースでキーを探しながら人差し指打ちって・・・まるで素人以下じゃないのよ。本当に物書き? 本業じゃないわしですらタッチタイピングでバカスカ高速で打てるのよ?

それじゃ1本書きあがるのに時間がかかりすぎるでしょうに・・・。