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実際に起こった殺人事件を題材にした映画は多数ありますが・・この『映画/サマー・ヴェンデッタ』もその1本。

フィンランドでの殺人事件という事で、アメリカのゾディアック事件のようにメジャーではありませんが…地元のメディアではたびたび取り上げられる題材のようです。

メタルバンド「チルドレン・オブ・ボドム」のバンド名の由来ともなっている事件ですので、そっち系が好きな人には意外に知れ渡っていたりもします。

サマー・ヴェンデッタ
(原題:BODOM)

2016年 フィンランド

主なキャスト:

ネリー・ハースト=ジー
ミモサ・ヴィッラモ
ミカエル・ガブリエル
サンテリ・ヘリンヘイモ・マンティラ

監督:タネリ・ムストネン
脚本:タネリ・ムストネン、アレクシ・ヒヴァリネン

ネタバレ無しのあらすじ

フィンランドの首都、ヘルシンキの西にある「ボドム湖」

ここでは1960年の夏、キャンプをしていた若い男女4人が何者かに襲われ、3名が死亡・1名が重傷を負う事件が発生しており、未解決のままとなっていた。

この事件の真相を解明したいアッテ(サンテリ・ヘリンヘイモ・マンティラ)は友人のエリアス(ミカエル・ガブリエル)と共に2人の女子ノーラ(ミモサ・ヴィッラモ)とイーダ(ネリー・ハースト=ジー)をキャンプへと誘う。

当時の状況を再現しつつ事件の謎を追うアッテだが、事態は思わぬ方向へと展開していく・・・

・・・といった内容の作品。

注)動画は予告編ではなく本編の一部カット版(異国語)になります

まずはこの映画の題材にもなっている「ボドム湖殺人事件」についての豆知識から!

ボドム湖殺人事件

1960年、フィンランドのボドム湖畔にキャンプに訪れた15歳から18際の男女4名のうち、3名が刃物と鈍器によって殺害され、1名は重傷を負うものの生存・・という事件。

事件の12年後に「私がボドム湖殺人事件の犯人である」という遺書を残して自殺した男が現れ、被害者との接点や動機などから真犯人であるとされるものの・・・事件時に自宅にいたというアリバイから、警察は「犯人ではない」と断定。

さらに事件の44年後に医師のヨルマ・パロが「事件の真犯人はKGB諜報員であった」とする書籍を発行して注目を集めるが、警察はこれも否定。

そして事件から45年後、2003年に「唯一の生存者だった男が犯人であった」として警察に逮捕される。様々な状況証拠に加え、古い証拠を最新のDNA捜査などで再調査した末に犯人と断定されたが・・・こちらも最終的には無罪とされている。

そして2019年現在も、未解決事件のままとなっている。

未解決事件を題材に・・

実際に起きた未解決事件を題材にした映画は多くありますが・・・なにせ「未解決」のまま終わっているものですから、そのまま映画にしても「犯人は誰なんだろうね」で終わってしまいます。

冒頭引き合いに出した「ソディアック事件」に絡んだ映画もいくつも制作されていますが、やはり独自の解釈や、フィクション要素を入れたものが多くなっています。

ジェイク・ギレンホール、マーク・ラファロらが出演する「映画/ゾディアック」はフィクション要素が少なく、最終的に「怪しいヤツはいたけど、犯人ではありませんでした」のまま終わらせているのですが・・あの映画はとても良かったです。

そして今回の「映画/サマー・ヴァンデッタ」

過去に起きた殺人事件そのものを描くのではなく、殺人事件を追う者を描く…という形をとっています。これはこれで有りなんじゃないかと思ったのですが・・・残念ながら「グダグダの展開がダラダラ続く。そして最後もしょんぼり…」という、残念映画でした。

下手クソな二転三転は嬉しくない

単純などんでん返し系映画はもう古くなり、今では二転三転は当たり前。

「じゃじゃーん!これが真相でしたー!」からの…「なーんちゃって!それも嘘でした!」という映画はずいぶん多くなりました。

この「映画/サマー・ヴァンデッタ」も二転しているんです。いや、三転といっても良いでしょう。

しかし…申し訳ない、クソつまんないです。

リアリティもなく盛り上がりに欠ける展開に「あー、こういうオチね。うん、それでいいよ」とこっちがダルくなっているところへ、予想通りのどんでん返しを持ってきて「ドーン!実はこれが真相だったよ!驚いた!?」とかやられても・・・「ああそう、じゃあそれでいいよ」という気持ちにしかなりません。

そしてさらに「ババーン!!なんとここでさらにどんでん返しです!!」と、再び「・・・だろうね」という展開を得意げに披露されても・・・正直帰りたくなります。

ここからネタバレを含むよ!!

最初っからグダグダな展開

アッテが「ボドム湖殺人事件の状況を再現する事で、事件の真相を解明したい」ってのはまぁ良いんです。若い頃って、意味のわからん事に情熱を燃やしたりしますし。

私も「どうやったら階段から華麗に落ちる事ができるか」という事を追求して、前歯を折った事があります。そんなもんです、若い頃は。

しかしなんとなく映画として観ていられたのは、アッテが殺されるあたりまで。

そこからは不自然な動きや展開が許容量を超えすぎて、もう「こりゃダメ映画だ・・・」の気分が止まりません。

実はノーラ達の策略だった!衝撃!・・とは思えず。

そしてエリアスも殺害。犯人はノーラ・・・ここ、残念ながら驚きも衝撃もありません・・・。

「ああ、たぶんそんな展開だと思っていたよ。でもまぁいいや、それで終わりにしようね」って気分です。

でも終わらないんですよ。だってまだ半分なんですもの、時間的に。

このへんで「肌着のイーダが水中で艶めかしい動きを魅せる」という、無駄に美麗な映像が長めの尺で挟まれるのですが・・・いかんせん、彼女がブサ・・あー、えーと、好みではないので、全然嬉しくありません。

さっさと潜れ。鍵拾ったらさっさと上がれ。長いわ。

そんな冷めた目でしか見れません。。。

ええ!?驚愕の回想シーン!・・・が無意味に長いね。

犯行を終えた二人が車で戻る中、回想シーン付きで明かされる事の真相。

「別にそんなん、わざわざ回想でやる必要ないでしょ」という、驚きもクソもない映像がダラダラとタレ流されます。

しかも無駄に長い。

しかし!ノーラ達以外に殺人鬼がいた!・・・とは思ってたよ。

もうこれも予想通り。そういう展開だろうね…と想定していたので、無駄に長いだけです。

そして相変わらず、細かいツッコミどころ満載の不自然な展開。

目まぐるしく衝撃的な映像が流れているのですが、気持ちは平穏そのもの。

アメリカンなレッカー車、カッコいいなー。ミニチュアで買おうかなー・・・。

そんな事ばかり考えてしまい、スマホで検索してしまいました。

そして映画鑑賞中なのに、これを買ってしまいました(笑)

ただただ、流れを受け入れる・・

最終的に、なんかよくわかりませんがイーダだけ生き残りました。警察的にも「殺人犯などいない。イーダが犯人だが、精神が壊れてしまった」という結論になったようです。ちょっとムリヤリにもほどがある。

あまりにも強引な結論なので「そのまんまイーダが犯人。作品中のアレコレは精神的に病んでいための妄想」と解釈した方もいるようですが・・・それだと明らかに矛盾する点が多すぎますし、そういう描かれ方はされていないので違うのではないかと・・・。

全体的にアレな映画でしたが、「考察できる部分」を挙げるとすれば・・

犬を連れた大男は、ボドム湖殺人事件の犯人か?

作品中で「事件当時若ければ、まだ生きていてもおかしくない」というセリフがあるので、この大男が当時の事件の犯人である・・という可能性は無くもないです。

「まだ殺人犯は生きている。そして、再び機会を伺っている」という、当時の事件の解釈の1つなのでしょう。

冒頭のナイフを研ぐ男は・・

冒頭、意味深にナイフを研ぐ男がでてきます。周囲にはテントと、ちらかった衣類など。私は実際の「ボドム湖殺人事件」を表現していると解釈しました。

一見「若者たちを狙う犯人」のように勘違いしてしまいますが、湖に入ってはしゃいでいる男女は3人です。ですので彼はグループのうちの1人。

「生き残った男性が犯人である」とされた経緯があるので、おそらくそういった演出ではないかと思われます。

画は綺麗。とにかく綺麗。

私がどうにか最後まで鑑賞できた大きな理由の1つに「とにかく画が美しい」というのがありました。

フィンランド映画ってのはあまり馴染みがなかったのですが、こういう表現が多いならば他の作品も観てみたくなります。

職業柄、森や湖などの自然風景の表現には食いついてしまうんですよね・・・。

しかし「綺麗だから観てみ?」と人にオススメはできません。・・・だって内容が内容ですから。

なお、若い男女4人が森の中・・という、ホラー系なら確実にアレなシーンが期待できる設定なのに・・

一切そういった行為はございません!
おっぱいもロクに見れません!

清く正しい殺人劇をご覧ください。