今回は現実に発生した『フリッツル事件』を題材とした実話ベース作品『映画/ガール・イン・ザ・ベースメント』でネタバレと実際の事件に関しての戯言。

内容が内容なだけに非常に本音を書きづらい作品ですし、思った事をそのまま書いたら多くの方から批判されるでしょうが・・・まぁわたしゃいつもそんな感じですし。

あくまで一個人の正直な感想ですよ、ということで。

ガール・イン・ザ・ベースメント


2021年 アメリカ

キャスト:
ステファニー・スコット
ジャド・ネルソン

監督:エリザベス・ローム
脚本:バーバラ・マーシャル

ネタバレ無しのあらすじ

傲慢で高圧的な父親ドン(ジャド・ネルソン)に嫌気がさしていたサラ(ステファニー・スコット)は、18歳になったら家を出る事を決意していた。

しかし18歳の誕生日を迎えようというその時、彼女は父親の手によって地下室へと閉じ込められてしまう。

・・・という滑り出しから駆け足で20余年を描く、実話ベースの物語。

まず始めに…

警告!

この映画をすでに鑑賞済みで、「あまりのエゲつなさに見ていてつらかった」「しばらくトラウマになった」といった感想をもち、なおかつ他人も同意見でないと納得がいかない方、自分の価値観だけが正しいと勘違いしている方は当記事を読まないほうが良いかと。

最初に申し上げますが私は本作を『表現がヌルく、綺麗ごとで仕上げられた甘ちゃん作品』と感じましたし、そもそも言動が不謹慎な人ですので、この内容でトラウマになるような方には受け入れがたい感想となるでしょう。

お互いのためにも、くれぐれも読み進めない事をオススメします。

そういった方は今すぐスマホを置いて、アニーでも鑑賞すると良いかと思いますよ。トゥーモロー、トゥモロー♪

脚色された”少女漫画的悲劇”

いいですか、警告しましたからね?

別に読むのも批判するのも自由ですが、私がどう感じたかも自由ですので、文句言われても何も変わりませんよ?

まずはざっくりこの映画のあらすじをネタバレると…

  • クソみたいな父親ドンと、それに反抗する娘サラ
  • 自分に対する態度に不満を募らせた父親は、サラを地下室に監禁
  • 監禁ついでにお仕置きと称して性的なアレコレも
  • 約20年でサラは4人妊娠(うち1人流産)
  • 娘(地下室で生んだ)が死にかけているので、父に懇願して病院へ搬送
  • 発覚。逮捕。終わり。

内容としては本当に許しがたいもので、これが実話を基にしているというのだから見ていて苦しくなる気持ちは理解できます。

そう、別にわたしゃ本作を「最高に胸糞悪い」とか「トラウマだ」とか言う人を否定する気はまったくないんですよ。それはそれで良いと思います。ただ私は違うので、あなたの価値観を押し付けられても困りますよ…という話で。

というわけで、何が私は不満かって・・・

とにかく描写がソフトすぎる。
表現が生ヌルすぎる。
全体的に綺麗ごとの演出を入れすぎる。

父親からの性的な暴行は”それっぽい雰囲気”だけで露骨には描かれず、殴る等の行為も控えめ。傷も控えめ。地下室も綺麗で陰惨さは無く、ちょいちょい親子の美しき愛情劇を入れてくる綺麗ごと感も鼻につく。

要するに…こういった監禁モノに重要な生々しさ、リアル感が感じられないのですよ。

実在の事件を基にしていて被害者の方もまだご存命ですから、あまりにエグい内容にできないのは理解できます。しかも本作はテレビ映画なので、あまりにも過激すぎる表現もご法度でしょう。

しかし屁が出るような色恋話まで付け加え、これでもかと美しき悲劇のヒロイン物語で押してくるノリは反吐が出ますわい。なんだこりゃ少女漫画か。いかにも女性監督らしいなぁ、と。

もっと見ていて吐きたくなるような生々しさ、エゲつなさ、そういったものを描かなければ、実際の事件の凄惨さは伝わらんでしょう。

こんなもんじゃないんですよ、『フリッツル事件』は。

実話・フリッツル事件

では実際に起きた『フリッツル事件』を。

とりあえず映画の内容に近い部分をざっくり切り取ると…

フリッツル事件

2008年、オーストリアで発覚した監禁(と諸々)事件。

父ヨーゼフ・フリッツルは18歳になる娘エリーザベトを地下室に監禁。

監禁は約24年間にわたり、複数回妊娠させる。

19歳になる長女ケルティンが体調不良になった事で病院へ搬送。ヨーゼフの供述を不審に思った病院職員が通報し、発覚。

逮捕されたヨーゼフは終身刑となった。

…といった感じ。

しかし事件は映画と異なる部分が多数あり、そのどれも実話のほうが数段エグい。

では『実際の事件と、映画で異なる点』で、大きなものを並べてみますか…。

覚悟は良いですか?

  • 父ヨーゼフからの性的虐待は、なんとエリーザベトが11歳の頃から始まっていた。
  • ヨーゼフは過去に強姦・強姦未遂・公然わいせつ等の犯罪で前科あり。
  • エリーザベトを監禁するにあたり、映画のような『父と娘の仲違い』は報告されておらず、単に欲望からの犯行と見られている。
  • 監禁初期、エリーザベトは脱出を試みて天井や壁をひっかき、指の爪をほぼ失くしている。
  • 実際にはエリーザベトの部屋までの扉は8枚。
  • 彼女が妊娠させられ、生んだ子供はなんと7人。うち1人は生後3日で死亡。うち3人は映画同様『娘が置いていった』とされ、ヨーゼフとその妻が育てる。
  • 娘を病院に搬送した際、エリーザベトは同行していない。
  • 恋人クリスとの甘く切ない物語など無い。

どうですか、そのまま描いたらドコにも救いがないようなエゲつない事件ですよ。

なお事件が発覚してヨーゼフが逮捕された直後も映画のような「みんな仲良く幸せでした」的な事はなく、近親相姦で生まれた子供たちは遺伝子的な問題を抱え、母エリーザベトと共に精神科を含めた治療が必要となっています。

なにがクリストファー王子とバイクでブイーンですか、あんなメルヘンな終わり方で「嫌な気分になった」とか言っている甘ちゃんは、今すぐ『映画/ファニーゲーム』でも見て心を病みなさい。

『映画/ファニーゲームUSA』胸糞映画でネタバレ戯言

ついにきました、いつか書きたいと思いつつも勝負を避けていた1本、『映画/ファニーゲームUSA』です。あらすじやネタバレ、演出等の話を含みますのでご注意下さい。 1997…

超個人的な戯言感想

前回、『映画/デッド・ドント・ダイ』の記事を書いた際に「ゾンビ映画の記事が多いですが、私は別にゾンビ映画が好きというわけではありません」と言いました。

しかし今回は「監禁モノの記事が多いですが、私はたしかに監禁モノ映画が好きです」と言わざるを得ない。ええ、好きですとも。

別に女性が暴行されるさまを見るのが快感…というわけではありませんよ。純粋に『綺麗ごとが通用しない、エゲつない現実』を描かれるのが好きなんです。

それゆえ、生々しい部分は描かず、嘘くさい綺麗ごと演出を多数加え、ラストも「そんなんあるか!」とブン投げたくなるようなメルヘンで締めくくった本作はどうにも納得がいかない。嫌な気分?トラウマ?そんなの全然残りませんよ。むしろ拍子抜けですわい。

ただし俳優の演技だけは素晴らしかったですなぁ。

20年以上となるとハードルが高いですが、それでもしっかり加齢感を出していたステファニー・スコットは拍手モノですし、その他の登場人物もそれなりに年月を感じさせる仕上がりで感心致しました。

やはり、『あくまで一般人向け・胸糞ノンフィクション映画』としては十分すぎるほどの完成度なのでしょう。本作を見て気分が悪くなった方やトラウマになった方は、正しき一般人である証拠ですよ。

私は正しくない犯罪予備軍という事です。うちに地下室が無かったことが幸いですな。