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同タイトル・近似タイトルの映画が多いために、なかなか検索してもヒットしない『映画/コール・ミー』、2009年作品で原題が『Easier with Practice』、テレフォンセ○○スが題材となっている作品のネタバレ戯言になります。

ハリウッドと寝たり、5つの処方箋だったり、キングやマダムやラッキーが付いている映画ではありません。

コール・ミー
(原題:Easier with Practice)


2009年 アメリカ

主なキャスト:
ブライアン・ジェラティ
ケル・オニール
ジャネット・ブロックス
マーガリート・モロー
ユージン・バード
ケイティ・アセルトン(声のみ)

監督:カイル・パトリック・アルバレス
脚本:カイル・パトリック・アルバレス

ネタバレ無しのあらすじ

派遣社員として働きながら小説家を目指すデイビー(ブライアン・ジェラティ)は、弟のショーン(ケル・オニール)と共に自作短編小説の朗読ツアーで各地を巡っていた。

そのさなか、ニューメキシコ州のモーテルで過ごしていた際に部屋にかかってきた一本の電話。

受話器の向こうにいたのはニコールというエロティックな女性で、デイビーはあれよあれよという間にテレフォンセックスへと誘われることに。

その後、何度もかかってくるニコールからの電話に、すっかり虜となってしまったデイビーは…。

・・・といった内容の作品。

注)予告編動画は英語版

T・Sで戯言

本作は劇場公開無しの自主制作映画となるため、有名な俳優の出演は無し。

しかし素晴らしい演技力をもった俳優揃いですので決してチープなB級感はありませんよ。ちなみに主演のブライアン・ジェラティは、中途半端でつまらないB級スリラー『映画/ATM』で主演だった人です。

今回はお約束の『キャストで戯言』はありませんが、その代わりに本作のテーマとなっている『テレフォン○○クス』で戯言を。えーと、いちいち伏せ字にするのもアレですから『T・S』と略しましょう。

「テレクラ」なんてものが流行していた時代を生きてきた昭和生まれとしては、「T・S」は比較的受け入れやすい行為なのですが…現代の人ってどうなんでしょう?T・S経験ありますか?私は普通にあります。

テレクラを利用した事はありませんが、SNSなんて存在しなかった頃は「メル友」ってのを作り、夜な夜なメールしたり親しくなったら電話したり…そんな行為をしていたわけですな。懐かしい。

…で、やはり男と女。そういう話になれば興奮しますし、興奮すりゃ自分で触りたくなりますし、お互い触ったら…T・S開始!ですよ(笑)

ちょ…ドン引くのはやめて下さい、気持ち悪いとか言わんで下さい。20代の頃だけで、いい歳になってからはやってませんってば。

悲しきソロ活動姿…

…というわけで、T・Sから物語が展開していく『映画/コール・ミー』

ところが決して一発ネタのエロティック作品ではなく、小説家を主人公としているだけあって奥深いヒューマンドラマだったりするわけです。もう完全に予想を裏切られました。

たしかに朗読ツアーの最中はそりゃもう情けない描写が連発。音声的には艶めかしい女性のあえぎ声が聞こえているものの、絵ヅラ的には『一人でハァハァとソロ活動しているメガネ野郎』を見せつけられるという(笑)…もはや哀愁すら感じますなぁ。

全体的にカメラを引いたカットが多く、状況を客観的に見るような表現が多用されているのも物悲しさを増し増し。どうして「男が一人で処理している姿」ってこんなに悲しいのでしょう…。

ここからネタバレを含むよ!!

中盤以降の人間ドラマ

しかしこの映画の本気は中盤から。朗読ツアーから帰ってきてからが本番ですよ。

『エロティック・ドラマ』なんて煽りを付けられていますがそれは最初だけ。というか、中盤以降はエロティックな描写なんて一個も出てきませんから。ニコールの喘ぎ声すら聞けません。

そこにあるのは一人の男の苦悩。

ただしめちゃくちゃ大きな困難だったり、宿命を抱えていたり、世界を救ったりするわけではなく…単純に「人と関わって生きる」という事への苦悩。このリアルさがたまらなく切ないのです。

ついさっきまで「一人でハァハァしてティッシュで拭いている姿」が切なかったのに、なんて奥深い切なさへと切り替えてくるのだこのメガネは。

弟と彼女、そして元カノと『2つの真実と1つの嘘』をやり始めた時は実にドキドキしましたなぁ。

案の定、ヘラヘラ弟はテレ…T・Sの件をみんなの前でバラしてしまうのですが、デイビーはその事に怒りを感じつつも弟の浮気の件は言わない。

もっと周囲のようにバカになれれば生きやすいのに、そうなれない。なりたいとすら思わない。そんな彼の「生きづらさ」がひしひしと伝わってくるじゃないですか。

…やだ、なにこれ。めちゃめちゃ引き込まれる作品じゃないのよ。

終盤のドンデン返しは…

心に描いていた通りの美人が来て、ハッピーエンドってことはないだろうなぁ…とは思ってはいました。思っていたけど、やはり信じたい…。そんな心情で待ち続けた末にデイビーの前に現れたのは…やはりそうきましたか…。

しかし決して「うげげ、ふざけんな!」という怒りだけではないし、「これまでの時間が全て無駄だった」とも思えない。完全にデイビーに感情移入してしまい、ただただ怒りと困惑と悲しさと、恋しさとせつなさと心強さと、なんとも言えない複雑な気持ちが絡み合います…。

なんなんでしょうね、人を好きになるって。相手が男だとか女だとか、老人だとか幼女だとか、そんなの関係ないんじゃないかとすら思えてきます。

彼の目の前にいるのは紛れもなく『ニコール』であり、ずっと惹かれてきた存在。悔しくもそれを感じるからこそ、気持ちに整理がつかない。救いが無いようで、そうとも言えない…なんとも言葉で表すのが難しい気持ちにさせられるラストでした・・・。

超個人的な戯言感想

もうなんですか。てっきり『T・SでハァハァしちゃうB級エロティカルドラマ』だと思っていたのに、ものすごく見応えのある人間ドラマじゃないですか。

正直、めちゃめちゃ面白かったです。とてもイロイロ考えさせられる作品でした。

おそらくレンタルDVDは存在しないと思いますので、VODのみになるでしょう。私はAmazon Primeでの鑑賞でした。

ちょっと人を選ぶ作品ですので「・・・で?」となる方も多いかもしれませんが、刺さる人にはグッサリと刺さる映画ですぞ。

まだ未鑑賞の方は、ぜひ見ていただきたい。

最後のニコールの正体に、「いやいや、むしろ大歓迎!」と思う男性もいるかもしれませんけど…。ウホッ。