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クセのある演技に定評があるケヴィン・ベーコン。このコップ・カーでも、彼の魅力はいかんなく発揮されています。

作品中ではちょっと意味が伝わりづらいポイントを解説しつつ、感想など・・・

コップ・カー

2015年 アメリカ

主なキャスト:

ケヴィン・ベーコン
ヘイズ・ウェルフォード
ジェームズ・フリードソン・ジャクソン
シェー・ウィガム

監督:ジョン・ワッツ
脚本:ジョン・ワッツ、クリストファー・フォード

ネタバレ含まないあらすじ

こっそり家を抜け出して荒野を放浪する二人の少年、ハリソン(ヘイズ・ウェルフォード)とトラヴィス(ジェームズ・フリードソン・ジャクソン)。

ひと気のない場所に乗り捨てられたパトカーを発見した二人は、男の子らしくイタズラを始める。最初は可愛い遊び程度だったのが徐々にエスカレートしていき、ついにはパトカーを運転して田舎道を爆走していくまでに。

しかしそのパトカーは「決して手を出してはいけないパトカー」だった・・・。

・・・だって、そのへんのノーマルな俳優ならまだしも、あの「ケヴィン・ベーコン」が警官役だよ。そりゃあタダで済むはずがない・・・。

・・といった内容の作品。

賛否両論

映画ではよくある事ですが、この作品も激しく意見が分かれるようです。「退屈だった」「中身が無い」などなど・・・酷評する方も多いようですが、高い評価をする方も多くいます。

私も最初は「あまり面白くなさそうだな・・」と思いつつ「とりあえずケビンベーコンだから見とくか」程度の気持ちで鑑賞しましたが、良い意味で期待を裏切ってくれました。

やはりケヴィン・ベーコンは見ているだけで興奮しますし、前半はとにかく「可愛くねぇガキだな・・」と思っていたハリソンも、ラストで胸を熱くさせてくれました。


ここからネタバレを含むよ!

細かいポイント

誤解されやすい部分や意味が伝わりづらい部分を、得意げにドヤ顔で解説する・・・というのはどうにもに好きではないのですが・・・。

この作品もちょっとだけそういう部分がありましたので、戯言として解説させて下さい。「んなもん、言われなくても観ててわかるわ」という賢いお方は、とりあえず風呂にでも入っててください。その間にちゃちゃっと済ませておきます。

無線チャンネル

これはホント、解説するまでの事ではないのですが・・・

ミッチ(ケヴィン・ベーコン)が自宅の車内でアレコレ小細工するシーンです。

彼の自家用車も無線を装備しているので・・・

  1. パトカーで使用しているのと同じチャンネル(周波数)でラジオ放送を一瞬送信し、ミランダに「あら、こっちもヘンな電波がきてるわ」と思わせる。
  2. それを理由にして、チャンネルを一時的に7(非常用)に変えさせる。近隣のパトカー全車もチャンネル7に合わせる。
  3. これで少年たちが乗り回すパトカー以外、警察関係者全員がチャンネル7。これまでのチャンネルで語り掛ければ、誰にも聞かれる事なく少年たちと会話する事ができる。

・・・という事になります。普通に観ていても、まぁそんな感じなんだろうなと理解できると思いますが、念のために・・・。

パトカーの横に置いたビン

後半部、トランクの中の男(シェー・ウィガム)がミッチをおびき出して待ち伏せしようとするシーン。

最初の場所は待ち伏せには不向きだったので、車を移動し、隠れられる場所があるポイントにパトカーを停めます。

そして道路にビンを置き、なにかを確かめるようにしてから、狙撃位置につき・・・2発撃つ。

この部分、他のネタバレサイトなどを見ても、ただの「試し撃ち」もしくは「練習」だと思った方がほとんどのようですが・・・・これは銃の照準規正だと思われます。

銃の照準って、頬付け(銃に顔を乗せて覗く姿勢)の位置や角度によって、同じ調整でも着弾点が変わってくるんです。なので自分の頬付けのクセに合わせて調整が必要です。

そして対象との距離によっても調整は変わってきます。100mの距離で照準規正してある銃は、200mでは着弾点が縦方向にズレます。

なので「ミッチが立つであろう位置(距離)」にビンを置いて、まずはそのままの照準で狙って撃つ。的からどのくらいズレたのかを見て、そのぶん修正して・・・再度撃つ。

おそらく、ビンを置く際の作戦の練り方や、事前にしっかりと対象との距離に合わせて照準規正を済ませておくところなど・・・彼は兵役経験があるのでしょう。

いやいや、別に私は「軍隊オタク」だったり「銃器オタク」で、ウンチクをあれこれ垂れているわけではありませんよ(笑)

いちおう元陸上自衛官なので、ごく自然にそう感じただけです。

車の速度

ラストシーン、トラヴィスを助けるためにハリソンは車を飛ばします。

「35までしか出せない」とバカにされた彼ですが、友達のために勇気を出してどんどん速度を上げていき・・・メーターは80を超えます。

これも「100キロ近くまで飛ばした」と勘違いしている方が多くいましたが、アメリカの車の時速はキロではなくマイルです。外側に大きな文字で書かれているのがmph(Mile Per Hour)、「時速何マイル」かを示し、その内側に小さな文字で書かれているのがkm表示になります。

1マイルは約1.6キロメートル。つまりラストシーンのハリソンは時速130kmくらいで走っている事になります。

「35までしか出せない」も時速35kmという事ではなく、55kmくらいしか出せない・・と言われていたわけですね。

55kmなら、そのへんの高齢者ドライバーよりは早いかな・・・。

いくつになってもケヴィンはベーコン

お風呂に入っていた賢い方、もうあがりましたかー? 低レベルな解説は終わりましたよー。

私どうもバカなガキは嫌いでして・・・子供が活躍する映画はとても苦手なんです。主役が子供だと、それだけで見る気がおきません。

この映画のハリソンも、それはもう見ていてムカムカする可愛げのなさだったのですが・・・最後の最後、サイレンを鳴らしながら車を飛ばす彼には鳥肌が立つような高揚感を覚えました。

「おまえも1つ大人になったんだな」といった気分です。

そして、タンクトップでカッコ悪く走りまわるケヴィン・ベーコンの姿にも、同じくらい高揚感を覚えました(笑)

若い頃の彼は、それはもうギラギラしているというか・・クセのある危険な男臭がプンプンしていて、たまらない魅力を持っていました。

この作品のケヴィン・ベーコンはちょっとお爺ちゃん入ってきており、それがまた哀愁漂うというか、なんというか・・。昔とは違う魅力を開花させてきている気がします。

なにはともあれ・・・

この映画、軽い心地よさを残してくれる、意外な良作でした。