基本的に頭がイッちゃってる系の映画は大好物なのですが、今回もそのタイトルの勢いに騙されて選んだ1本『映画/変態村』です。
似た名前で『映画/変態島』という作品もあり、そちらはエマニュエル・べアール主演という事もあってなかなか面白かったのですが・・・こっちは個人的にはダメでした。
変態村というか、キチ〇イ村です。もしくはガチホモ村です(笑)
変態村
(原題:CALVAIRE)
2004年 ベルギー・フランス・ルクセンブルク合作
主なキャスト:
ローラン・リュカ
ジャッキー・ベロワイエ
フィリップ・ナオン
ジャン=リュック・クシャール
監督:ファブリス・ドゥ・ヴェルツ
脚本:ファブリス・ドゥ・ヴェルツ、ロマン・プロタ
ネタバレ無しのあらすじ
ドサ回りで日金を稼ぎながら移動する売れない歌手マルク(ローラン・リュカ)は、南フランスへと向かう途中で車が故障し立ち往生してしまう。
たまたま通りかかった「犬を探している」という青年ボリス(ジャン=リュック・クシャール)の案内で近くのペンションへとたどり着いたマルクだが・・・
そのペンションのオーナーのバルテル(ジャッキー・ベロワイエ)は、一見親切・中身はキッチーなヤバいお人だった。。。
・・・といった内容の作品。
変態とはもっと崇高なるものである!
とにかくそのタイトルがヤバいです。『変態村』って・・・。
とかく邦題の付け方はセンスのない場合が多いですが、今回もなかなかヒドい。原題は『CALVAIRE』、ラテン語で意味は『ゴルゴダの丘』になります。
冒頭にも書いたように『映画/変態島』という作品もあり、あっちの原題は『Vinyan』。これはタイ語で『行き場のない魂』といったことを指すそうな。
どちらも『変態』の使い方がなっていません。
なにかがおかしい=変態
という軽々しい使用は自重していただきたい。もっと『変態』という素晴らしい日本語を大事に使いましょうよ。
ちなみにこの『変態村』というタイトルは、その筋の方には有名な「叶井俊太郎」という方がつけたそうですが、私はよく知りません。
ここからネタバレを含むよ!!
なにをどう書いてよいやら…
もうこの作品をご覧になった方なら「なにをどう感想として述べてよいのかわからない」という感覚がわかってもらえるかと思います。
まだ観てない方は観てください。感じてください。身も心も委ねて下さい。
とにかく序盤~中盤くらいまではダラーっとした違和感が続き、終盤は一気にカオスが加速。そしてラストは鑑賞者置いてけぼりのブン投げラストです。
いやいや、プロットもしっかりしていますし、伏線も素晴らしい。ラストも奥深いものではあるんです。あれこれと高尚な考察を書こうと思えば、それなりに書けそうではあるんです。
だがしかし、ここまで『笑いのない中途半端な不条理』を本気で描かれてしまうと、ちょっぴり引いてしまいます。
やはり古い…
2004年という制作年をかなり古いと感じるか、それなりと感じるかは人によると思うのですが・・・
個人的には他の同年代作品と比べて、この映画はカメラワークや映像、展開など全てに古臭さを感じました。
ちなみに2004年というと、有名どころでは『映画/スパイダーマン2』や『映画/アイ,ロボット』(ウィル・スミス主演作品)、ハリー・ポッターシリーズだと『アズカバンの囚人』が公開されています。
アメリカ映画と比べる事自体がナンセンスですが、そう考えるとやはり古臭さは否めない気がします。
それにしても・・・
『田舎道で車が故障⇒助けを求めた相手がキ〇ガイ』ってのは、制作国を問わず鉄板ネタなんですね(笑)
うほ村
結局のところ、薄っぺらく流れを書くと…
バルテル、アダムを逃げた妻グロリアだと思い込む。
↓
キチ〇イ流のおもてなしでグロリア(アダム)を拘束。
↓
寝取られないよう村人に警告。
↓
ちょっと偉そうなヤツがグロリアを奪いに来る。
(どうやらグロリアは過去にコイツとも関係があったらしい)
↓
バルテル死亡。村人、グロリア(アダム)を追跡。
↓
偉そうなヤツ死亡。
で終わりです。
アダムが女性であれば「奥さんと思い込む」に関しても多少は理解できるのですが・・・アダムは普通にガチオッサン。女性的でもなければ美しくもない。
それをまたオッサン同士で取り合うわけですから・・・もう眩暈がするわ頭痛がするわ。
どうやらこの村には女性はいないようで、あんな事やこんな事の処理には家畜を使ったりしています。このへんはまさに『変態』と呼んでも良いでしょう(笑)
そしてバルテルだけかと思いきや、村人みんなが「アダム=グロリア」だと思い込んでいるところが凄まじい。
・・・やっぱりアダムは男性で良かったです。これが女性だったら変に性欲的な部分が露骨になってしまい、純粋に『変態』とは思えなかったでしょう。ただのB級監禁系エロ映画になってしまうところでした。
一方的な愛
序盤、老人ホームでの公演を終えたアダムの楽屋に老女が訪ねて来て、それはもう大胆に迫ってくるものの・・・アダムとしては勘違いして愛を求められても困るわけです。
その後、施設の責任者もしくは担当者らしきオバちゃんから迫られますが・・・それも困ります。
アダムはあくまでも「仕事」として愛の言葉を囁き、人を惹きつけているわけですから(売れてないけど)。
まるで客のオッサンに夢中になられてしまったキャバ嬢のようですな。
客からすればアダムやキャバ嬢は「唯一の特別な存在」ですが、逆からすりゃ「たくさんいる客の1人」
接客業などをやっている方ならご存じと思うのですが、ほんのちょっと常連になると「他の客と違って、自分は特別」という感覚で接してくる方っていますよね。でもこちらとしては、申し訳ないですが他のお客さんとほぼ同じ括りでしかないわけで・・・。
「俺もアーティストだよ!仲間だよ!」とグイグイくるバルテルに対しても、一線引いた態度で接するしかないわけです。
そんなアダムが最後の最後、沼に沈んでいくオッサンからの「愛してると言ってくれ!」という求めに対し、「愛してる」と応えました。
ここはとても奥深い気持ちにさせられました。タイトルに『変態』と付いていたことを一瞬忘れたくらいです。
おすすめかと聞かれれば…
そんなこんなで『映画/変態村』、面白かったかと言えば・・・申し訳ない、あまり面白くはなかったです。
2005年のアムステルダム・ファンタスティック映画祭ではなんとグランプリを受賞しており、それ以外にも賞をいただいている作品らしいのですが…私の変態脳ミソには合わなかったようです。
「同じ映画を2~3回観る」という私ですが、これは1回でお腹いっぱい。世の変態映画好きの方にも「おすすめだよ!」とは言い難いです。
「なんだそのピアノと踊りはっ!!」とか「探してた犬が見つかったのかー・・・って仔牛やないかーいっ!!」などなど…ツッコミどころは多々ありますが、笑いながら見れるような映画でもありません。
何を期待して見れば良いのか…、鑑賞後に何を得れば良いのか…、そんなところで複雑な気分にさせてくれる映画です。
物好きな方は、映画鑑賞スキルを上げるための1本として押さえておくのも良いかもしれませんよ。