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どこからツッコミを入れて良いのか迷うタイトルの『映画/ヒトラーを殺し、その後ビックフットを殺した男』でネタバレ・感想の戯言。果たしてこの作品を鑑賞した人間はどのくらいいるのか…。

ヒトラーを殺し、その後ビックフットを殺した男

ヒトラーを殺し、その後ビックフットを殺した男

2018年 アメリカ

キャスト:
サム・エリオット
エイダン・ターナー
ケイトリン・フィッツジェラルド
ラリー・ミラー

監督:ロバート・D・クロサイコウスキー
脚本:ロバート・D・クロサイコウスキー

ネタバレ無しのあらすじ

1987年、アメリカ。

愛犬と共にひっそりと暮らすカルヴィン・バールは、かつてヒトラーを暗殺した男。

そんな彼のもとに突然「ビックフットを狩って欲しい」という依頼が。

…と、文字にしてしまうと「何をバカな事いってるんだい、さっさと宿題して寝な!」と言われてしまいそうな内容だけど、ホントだもん。トトロいるもん。

キャストとタイトルで戯言

まずは主演のサム・エリオット

私が生まれる前から銀幕で活躍しており、ケツが裂けてもジジイ呼ばわりなんぞできない名俳優。もはやヨボヨボでアクションはかなり苦しいですが、シブい雰囲気はご健在。有名作品にもちょこちょこ出演していますよ。

そしてもう一人、思い出の恋人を演じるのはケイトリン・フィッツジェラルド

こちらはマイナーな女優さんですが、個人的にはかなり高得点で好き。最近は『映画/スーサイド・ライブ』でお目にかかりましたが、あちらのほうが魅力的でしたなあ。

さてさて…。

最初に目にした時点で二度見してしまうインパクトの『ヒトラーを殺し、その後ビックフットを殺した男』というタイトル、もうどこからツッコんで良いのやら。

『ヒトラーを殺し、』の時点で「おいおい、ちょっとまて!」と言いたいのに、その後たたみかけるように『ビックフットを殺した』ときますからね。

不意に友人から「俺さ、先週宮沢りえをナンパして、その後広瀬すずに逆ナンされたんだよね」と言われたような気分ですよ。

…ところがどっこい、これが全部そのまま本当だってんだから恐ろしい。

嘘偽りなしでしっかりとヒトラーを殺し、その後ビッグフットを殺しているじゃないですか。

しかも『ヒトラーを殺したが、すぐに影武者が引き継いだため歴史には残っていない』『ビッグフットは未知のウイルスを保有しているので危険』というリアルな設定を盛り込むことで、完全嘘くさ映画になることも回避。すごいなオイ。

最低かつ最高な怪作

序盤は時間の流れがわかりづらく、変に長尺な部分も多くてダルい。特にロシアのヒゲ剃り男は同じ内容を3周回すような長ゼリフでうんざり。

時を超えるたびに何かしらの小道具をカブせてつなぐ手法(ナイフ&フォーク、靴、等)は最初だけ「お?」と感心するものの、バカの一つ覚えのように毎回使ってくるのでもはや小賢しい。

非常にハイセンスな演出と独りよがりの演出が混在し、予想外の大当たりを引いたのか、C級以下のクソを引いてしまったのか・・・なんとも迷う仕様で困惑。ぶっちゃけビックフットの話が出るまでは眠くて眠くて鑑賞を中止しようかとも思いましたよ。

しかし…

FBI「ビックフットを狩ってくれ」
爺「なぜわし?他にも抗体持っとる人いるじゃろ?」
FBI「他はみんな高齢者や子供なんです」

いやいや!あんたの目の前にいるのも高齢者だから!(笑)

…のやりとりで変にテンション上がり、その後の

  • 急に弟にイタ電をかける爺(相手が出たら無言切り)
  • 「今電話した?」と、だいぶ時間が経ってからかけなおしてくる弟(もう爺は寝る態勢)
  • 抗体を持っているとはいえ、一人だけ肌着姿で晒しもの(まわりはみんな防護服)
  • カットが変わった瞬間、いきなりクリティカルヒット喰らってるビッグフット

でテンションはマックス。ヤバい、この映画はヤバい!

その後のビッグフットとの戦闘は予想通りグダグダではあったものの、ビッグフットに自分を重ねる姿は感慨深く、監督が伝えたいことがひしひしと伝わってくるじゃないですか。…何かが追い付いていませんけど。

そして不意にヒューマンドラマに舵をとり、兄弟愛や家族愛、恋人への一途な想いを描き、人生を悔いている老人の哀愁も描きつつ・・・最後は彼の心にささやかな光が差して終幕。

おいおい!なんだよこれ、監督は天才かよ!

感想とラストの靴

果たして製作者は『政治モノ』が撮りたかったのか『クリーチャー系アクション』が撮りたかったのか『ヒューマンドラマ』が撮りたかったのか・・・まぁおそらく全部やりたかったんでしょうな。

まるで3本の映画のダイジェストをまとめて見せられた気分ですが、決して悪い気分ではない。

ちなみに最後、靴から何かがコロッと落ちて「ここにあったのか…」のセリフと共に、清々しい顔で歩きだすカルヴィン。

「探していた指輪が靴の中から見つかった」と勘違いしている方がいるようですが、そうではありません。

あれは単なる石か何かで『序盤からずっと気になっていた石(か何か)が取れた』=『ずっとひっかかっていた何かが取れた』という表現であり、あの瞬間カルヴィンは、長い人生でずっと胸につかえていた何かが取れて楽になったのでしょう。

ヒトラーを暗殺したこと、ビックフットを殺したこと、愛する人とすれ違ってしまったこと、長く続いていた後悔や懺悔の気持ちに終止符を打てた…という事ですかな。

いやいやホント、すごい監督ですよ。ロバート・D・クロサイコウスキー、もっと経験と技術を身に着けたら大化けするかもしれませんぞ。今後が実に楽しみですな。

ちなみに私、世代的に『ビッグフット』と聞くと真っ先にこっちが浮かびます。