ネタバレ『映画/イット・カムズ・アット・ナイト』で戯言考察

夜に”それ”はやってくる…という意味深なタイトルの『映画/イット・カムズ・アット・ナイト』でネタバレ考察の戯言を。非常に素晴らしい映画なのですが、めちゃくそ見る人を選びます。特になんでもかんでも明確な答えを求める現代っ子には不向きな作品かと…。

イット・カムズ・アット・ナイト


2017年 アメリカ

キャスト:
ジョエル・エドガートン
ケルヴィン・ハリソン・Jr
クリストファー・アボット
ライリー・キーオ

監督:トレイ・エドワード・シュルツ
脚本:トレイ・エドワード・シュルツ

ネタバレ無しのあらすじ

謎の病原体が蔓延する世界。森の中の一軒家で暮らすポール(ジョエル・エドガートン)とその妻、そして息子のトラヴィス(ケルヴィン・ハリソン・Jr)。

徹底した安全管理で用心深く暮らしていた3人だったが、ある夜、家にウィルと名乗る男(クリストファー・アボット)が侵入してくる。

家族以外の人間に強い拒絶を示すポールに対し、妻と幼い子供がいると説明するウィル。

やがて二つの家族は共に暮らすこととなるのだが・・・・

キャストで戯言

息子トラヴィスを主演と呼びたい気分ではありますが、そちらを演じるケルヴィン・ハリソン・Jrはまるで知らん俳優なので・・・出演者の中で最も有名な父親ポール役、ジョエル・エドガートンの話でも。

骨太なガンマンからキショい隣人まで、多種多様な役柄を演じ分ける名俳優。しかし彼はまずヨエルだったりジョエルだったりエドガートンだったりエジャトンだったりする表記をどうにかして欲しいですなぁ。

彼らの元に転がり込んでくるウィル(クリストファー・アボット)とその奥さん(ライリー・キーオ)もそれなりに有名な俳優だったりするのですが、特にイジって遊べる要素もないので今回はスルーで。


”それ”とは?

とにかくモヤモヤが残る作品で、鑑賞後にレビューサイトや考察サイトを読みまくりたくなるようなこの映画。

こんな毒にも薬にもならぬような映画ブログにまで迷いこんできたアナタは、おそらく相当数のブログを渡り歩いてきたことでしょう、ご苦労様です。

ではでは、たいした考察ではありませんが私なりの戯言を。

夜にやっているという”それ”は宇宙人でもモンスターでも、はたまた病原菌でもない。”それ”は人間の中に潜む『猜疑心』『恐怖心』などの感情を指していると考えられます。

「夜中にラブレターを書くな」なんて言われる事もありますが、人というのは夜になるとアレコレと余計な考えが首をもたげてくるもの。

そしてそこに『トラヴィスが夢遊病である』という要素を絡め、”それ”は夜にやってくる…と。

この『トラヴィスの夢遊病』をどこまで物語に影響させるかは人によって解釈が異なるようですが、なんにせよ二つの家族の中での最初の感染者(爺を除く)はトラヴィスである、と私は解釈しています。

そしてトラヴィスを「信頼できない語り手」とすることで、鑑賞者も疑心暗鬼に陥ってしまう…というわけですな。全てを語らず映像から想像させる手法といい、実にお上手。

しかしこれは低評価が多くなるのもやむを得ない気がしますなぁ。

なにせどこからどう見てもサスペンスもしくはスリラータッチな外観に出来上がってしまっているため、鑑賞者は最終的に『”それ”の正体が明かされる事』『トラヴィスの行動や夢の意味が明確にされる事』、さらには『謎の感染症の真実』まで明らかにされると期待してしまう。しかしそれらは最後の最後まで一切描かれること無し。

パッと見、気弱でドMっぽい女の子の外見をしておきながら、中身はバリバリのドSでハイヒールで踏んでくる女みたいなもんですよ。「え、ちょ、ま」と戸惑ったところでもう後の祭りです。

現代の魔女狩り

人は未知の恐怖にさらされると、すぐに『悪』『敵』とされる存在を作り上げ、攻撃することで安心したがるもの。魔女狩りが良い例ですが、似たような行動は現代でもあちこちで行われています。

なんだかんだで生贄システムが大好きなんですな、人間ってのは。

これを書いているのは2021年。コロナ禍真っただ中ですが、マスクをしていない人間を『罪』として攻撃したり、逆にマスクを付けろと言っている人間こそが『悪』であると主張してみたり、そもそもこれは人口削減を目論む政府の…と陰謀論のせいにしてみたり。もうバカみたいにあっちでもこっちでも『悪』と『敵』を作りたい人間のオンパレードじゃないですか。

何百年経っても物事を正義と悪、敵と味方の二色で決めつけることの恐ろしさをさっぱり学びやしない。

この映画でもポールはコミュニティを『自分の家族』『あちらの家族』で分け、信頼できるのは自分の家族のみと断言。『悪(感染者)』はあちらの家族の中にいると盲目的に確信し、『敵』であると決めつけ、最終的には命を奪う。

しかし感染者はトラヴィスであり、ポールとその妻も感染し物語は幕を閉じる。

まさに我々のそう遠くない未来を暗示しているようで、なんともやりきれない結末じゃないですか。

超個人的な戯言感想

…というわけで。

そもそもこの映画をそこらへんの『サスペンス』や『スリラー』、はたまた『ホラー』のつもりで見ちゃいけないのですよ。

この映画はそっち系の皮をかぶったゴリゴリのダークヒューマンドラマですから。

「一番怖いのは人間」などというベタな教訓を、やけにえげつない実例を用いて胸クソ悪く教えてくれるメタファー作品なのです。

エンターテイメントとして映画を楽しみたいのであれば、他の作品を見たほうがよほど有益な時間を過ごせる事でしょう。私はこういう映画、嫌いじゃないですけど。