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今回はヒューマンドラマ好きにもどんでん返しサスペンス好きにもたまらない1本、『映画/鑑定士と顔のない依頼人』

非常に面白い映画なのですが…とにかく感想を書くのが難しい。ネタバレを含まずには語れませんし、伏線が多い上に人によって解釈も分かれる。「これが真相だ!」と決めつけられるような浅い作品でもない。こういう映画はホント困るんです…。

というわけで、ざっくり素人感想にしてしまおうかな…なんて…。

鑑定士と顔のない依頼人


2013年 イタリア

主なキャスト:

ジェフリー・ラッシュ
ドナルド・サザーランド
ジム・スタージェス
シルヴィア・フークス

監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ

ネタバレ無しのあらすじ

一流の美術品鑑定士でもあり、優れたオークショニアでもあるヴァージル・オールドマン(ジェフリー・ラッシュ)のもとにかかってきた1本の電話。それは「資産家の両親が他界し、屋敷に残された美術品の鑑定をお願いしたい」という、ごくありふれた依頼だった。

しかし依頼人の女性は毎回ウソ臭い理由をつけては決して姿を見せようはしない。その態度に不信感を抱いたヴァージルは依頼を断ろうとするのだが…

・・・といった流れから、あれよあれよという間にドツボにハマる老紳士の物語。

キャストで戯言

主演はジェフリー・ラッシュ。パイレーツ・オブ・カリビアンのバルボッサで有名な彼ですよ。

…などと知ったふうな事を書いてみるものの、私は『映画/パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズを1本も見たことがありませんので…彼に関してはあまり書くことがなく、特別な感情も沸かず。

しかし見るものを引き込む演技は素晴らしい、さすが名優ですな。

そんな彼を「いっちゃえよ!恋しちゃえよ!」と焚きつける、若き機械技師にジム・スタージェス

作品によって当たり外れの激しい俳優ですが、個人的には身悶えするほど好きな俳優です。ちなみに『映画/アサイラム 監禁病棟と顔のない患者たち』がアタリで、『映画/ロンドン・フィールズ』がハズレです(笑)

そして決して姿を見せようとしない女性依頼人はシルヴィア・フークス

出演作は多くないものの、非常に魅力的な女優ですな。名作『ドラゴン・タトゥーの女』の続編『蜘蛛の巣を払う女』ではリスベットの双子の妹役だったりします。

しかしあの続編はどうなんでしょう…。たしかにノオミ・ラパスの続投は年齢的に厳しいですが、だからってクレア・フォイは無いですわー。リメイク版のルーニー・マーラのほうが1000倍素晴らしかったですな。

…っと、話がそれました。

大物俳優がもう一人、ドナルド・サザーランドも降臨しています。この人は相変わらず存在感がありすぎで、もはや悪目立ち感も(笑)

ガチ考察は放棄

さてさてこの『映画/鑑定士と顔のない依頼人』、作品としては『衝撃のどんでん返しサスペンス』なわけですが、決してオチ重視の薄っぺらい内容ではなく。

明らかに伏線といえる部分が多々あるうえに、「これも伏線と言えるのでは?」という要素も多数。さらに登場人物の心情やトリックに関しても「こんなふうに考えられるのでは?」「いやいや、こうも考えられるよ?」といった事だらけ。

自分の考察に加え、別の可能性も示唆していくとなると…もう膨大な量のテキストになってしまいます。

頭をこねくり回して考えるのは好きですし、物事をいろいろな方向から見るもの大好きなので、思いっきり全部書き並べたい気はするのですが…そんな事したら「文章多すぎて飛ばし読みしたくなるページ」になって終わりです…(汗)

幸い検索すればそれはもうアレコレと考察してくれているサイトは大量にありますので、面倒なのはそっちに任せてしまいましょう。『映画で戯言三昧』は低レベルでアホな戯言を垂れ流すのが仕事です。

…というわけで、ネタバレはするものの、内容的にはゆるーく浅ーくお気楽な話にしますよー。

ここからネタバレを含むよ!!

ちょっぴり考える

『決して姿を見せない依頼人』という謎めいた設定が想像を掻き立てるものの…そこはあまり引っ張らずに、わりと早い段階で生クレアがご登場。10年以上引きこもって生活していたにしては不自然なほどに小綺麗な美人じゃないですか。

それもそのはず。実際には彼女は家の中にも壁の中にも引きこもっておらず、ヴァージルの貴重なコレクションを奪うための大掛かりな詐欺行為。これがこの映画の最大のネタバレになります。

難しい話はしない…と言いましたので、さらっと箇条書き程度に『あれはどうなの?』という部分を私なりの解釈で並べてしまいましょう。異なる解釈の方もいると思いますが、あくまで個人の感想という事で…。

どこまで仲間?

重要な登場人物総掛かりでヴァージルを嵌めるわけですが、どこからどこまでがその仲間なのか…。

まず確定の『クレア』『ビリー』『ロバート』、それに加えて『サラ(ロバートの恋人)』も実行犯の一味だと私は思いました。ここは人によって解釈が分かれるようです。

たしかに『サラは何も知らない一般人』としても自然な部分はあるのですが、やはり多くの方が感じたように『サラの役割はヴァージルの嫉妬心を煽ってクレアに執着させること。そのやり方がちょっと下手クソだった』…という事かと。後ほど店の外で口論になっているのは「おまえのヘマのせいで、危なくヴァージルと俺の繋がりが切れるところだったろ、アホウ!」という内容だったのではないかな…と。

ヴァージルを襲った三人組も偶然ではなく、『クレアが外に出られるようになる』という重要な展開を強引かつ効果的に演出するため、金で雇われた…といった形かと。

ただしこのヴァージル襲撃事件は「クレア自身の意思には反している」と感じます。こういったやり方は反対していた、もしくは知ってはいたとしても、あそこまでやるとは思わなかった…という印象がありました。すでにヴァージルは見ていないにもかかわらず、彼女の慌て方は演技とは思えませんでしたし。
(ここでヴァージルに死なれては困るから、めっちゃ慌てた…という考え方もあるかもしれません)

しかし一度クレアが失踪してしまった際、「出てったよ。様子がおかしかった。公園のほうに行った」と教えるビリヤード青年。これが難しい。

多くの方は『あの失踪劇はビリー側としては予想外のアクシデント』としており、クレアは実際にあの屋敷に籠もっていたわけではないので、ヴァージルがアポ無しで訪問してしまったために『あれ?いないじゃん!』という事態が発生してしまった…と解釈するようです。…なるほど。とても納得できます。

しかし私はココが半々くらいでして、あの失踪劇も『ヴァージルにクレアを心配させ、さらにのめり込ませる』という狙いがあったのでは…とも思えるんです。なにせヴァージルの車のトランクに『ロバートお手製高性能GPS』を仕込んだのはその前(花束を抱えてきた時、荷物をヴァージルの車に運んだフレッドが仕込んだ)だと考えられますので、彼のアポ無し訪問も察知できたのでは…と。

これが予想外だとしても想定内だとしても、どちらでも疑問が湧いてしまうので半々です。

アクシデントだとすれば、失踪に気づいた直後に向かいの店に飛び込んだヴァージルに対し「偽りの情報を教える男」を仕込んでいる余裕はないでしょうから、単純に『クレアが出かけたのを見かけていた』という答えだったとも考えられます。下手すりゃ余計な事まで言っていたかもしれませんけど(汗)

あの常にいるビリヤード青年達は全て「ヴァージルの行動監視&何かあった場合」の仕込みだった…というのもアリかもしれません。

贋作の中に潜む真実

さらっと…とか言ってたクセに「どこまで仲間?」でバカみたいに長くなってるじゃないですかっ。しかもコレでもかなり端折って短くしたつもりで、言いたいことの半分も書けていないのに。

本当はもっといくつかの点について書くつもりだったのですが、全部スッ飛ばします。最大の部分だけ、ココだけ書かせて下さい。

ヴァージルが言う『贋作の中にも真実が潜む』という大事な大事なセリフ。

クレアとの蜜月の日々は全て偽りであった、自分は騙されていた…と気づいたヴァージル。しかし秘密の部屋に案内した際に彼女が言った言葉…

『たとえどんな事が起きようと、あなたを愛している』

これだけは贋作の恋愛劇の中に潜んでいた彼女の真意だと信じている。いや、信じたい。その思いで彼はプラハへと移り住み、彼女が言っていた店に「連れを待っている」と言いながら通い続けることになるのでしょう。「たとえどんな事が起きようと」ですから…。

ここは私も『クレアからヴァージルへの想いは真の愛だった』と思っています。劇中の彼女の行動や表情がそう思わせます。

作品中半、ヴァージルが壁の中に招き入れられた際にちょうど電話がかかってくるシーンがありました。彼の前では彼女が執筆している作品に関しての会話のように見せていますが、これはビリーとの会話であり『最終章を書き直したい。ハッピーエンドの方向に』というのは彼女からの要望だったのではないでしょうか。「ヴァージルから全てを奪い、裏切って終わる形にはしたくない…」と。

なお最後の部分の時系列が少々わかりづらいので『施設で変わり果てた姿で過ごしているヴァージル』が最後となる…と解釈する方も多いと思いますが、私は一番最後が『プラハに移り住み、ナイト&デイで待つ』になると解釈しています。

超個人的な戯言感想

いやいや、浅く適当な戯言にするつもりが予想外に文字数が…。こりゃもう撤退です、えらく中途半端で申し訳ない。

とにかく語り始めたらキリがない奥深い作品であり、異なる解釈同士で議論しはじめたらラチが開かない要素が多すぎなのですよ。

本当であれば『ヴァージルはあの歳まで女性経験なしだった』という点に着目し、『童貞を貫いた男は妖精や魔法使いになれる』という説について深く深~く掘り下げたかったのに…。

なにはともあれこの『映画/鑑定士と顔のない依頼人』、真面目に考えれば非常に切なく、苦しく、見応えのある映画でした。二度三度鑑賞しても新たな発見があったりで、面白い作品ですぞ。