今回は『映画/キリング・フィールズ 失踪地帯』でネタバレを含む戯言を。クロエ・グレース・モレッツはじめ豪華俳優陣の演技は素晴らしいものの、肝心の脚本・構成がこれでは…ねぇ?『親の七光りで大物俳優を起用できただけの素人映画』と評されても仕方ない気が・・・。
なお『キリング・フィールド』(1984年)という映画もあるのでお間違えのないように。
キリング・フィールズ 失踪地帯
2011年 アメリカ
キャスト:
ジェフリー・ディーン・モーガン
サム・ワーシントン
クロエ・グレース・モレッツ
ジェシカ・チャステイン
シェリル・リー
スティーヴン・グレアム
ジェイソン・クラーク
監督:アミ・カナーン・マン
脚本:ドナルド・F・フェラローネ
ネタバレ無しのあらすじ
テキサス州、テキサスシティ。
地元出身の熱血刑事マイク(サム・ワーシントン)と、その相棒ブライアン(ジェフリー・ディーン・モーガン)のもとに、少女の死体が発見されたとの一報が入る。
テキサス州には「キリング・フィールド」と呼ばれる犯罪地帯があり、そこで起こっている連続少女誘拐・殺人事件との関連を疑うブライアンは、マイクの元妻でもある警官パム(ジェシカ・チャステイン)に協力する形で管轄を越えた捜査に没頭する。
複数の事件が絡み合う中、マイクらと親交のある少女アン(クロエ・グレース・モレッツ)にも犯罪の手は伸び・・・。
・・・といった流れで、説明不足と雑な展開が続く微妙な作品。
キャストで戯言
やはり一般層にも知名度が高いクロエ・グレース・モレッツの話題が目立ちますが、彼女以外は無名かと言えば全くそんなことはなく。むしろ実力派俳優だらけで構成された豪華なキャスティングとなっております。
熱血刑事マイクを演じるのはサム・ワーシントン。『映画/アバター』で主演を務めたことでも有名ですが、なんと『映画/007』シリーズの六代目候補としても有力だったそうな。もしダニエル・クレイグではなく彼に決定していたら、どんなジェームズ・ボンドになっていたのか…怖っ。
その相棒、ニューヨーク市警から左遷されてきたブライアン役がジェフリー・ディーン・モーガン。ドラマ俳優として売れているようですが、マニアックな映画にもちょいちょい顔を出すムサいオッサンですな。
さらにシェリル・リー(『ドラマ/ツイン・ピークス』他)、スティーヴン・グレアム(『映画/パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ、『映画/パブリック・エネミーズ』他)、ジェイソン・クラーク(『映画/華麗なるギャッツビー』『映画/ゼロ・ダーク・サーティ』他)などなど…映画好きならば「おおっ!?」と感じるメンツで脇を固めるなど、長編映画2作目の新人監督としては異例のキャスティング。
それもそのはず。監督アミ・カナーン・マンは父親があのマイケル・マンですから。どこの国、いつの時代でも、親が大物というだけで自分の実力以上の席に座れるものです。スポーツ選手然り、噺家然り。
そして女性監督でなおかつ女性が被害者となる実話犯罪がベースとなっていることもあり、女性運動家として名高いジェシカ・チャステインもマイクの元妻パム役として出演。偉そうに男に指示を出してみたり、ろくでなし男を引っ叩いたりと…さぞや気分が良かったでしょうなぁ。
女がクズ男を殴るのは良くても、男がバカ女を殴れば大騒ぎ。「男女平等」と「女性優位」を履き違えるバカ女もまた、どこの国、いつの時代でも一定数いるものです。
いえいえ、決して女性を蔑視しているわけではありませんよ。私はかなり愛妻家ですし。ただ、一部のフェミニストは「愛妻家」ではなく「恐妻家」であることを求めてくるじゃないですか。「男女が互いに尊重しあう」ではなく「男よりも女のほうが上」を望んでいる。そういう勘違い女には敬意を払う必要がないと思っているだけです。
説明不足で雑
基本的に洋画、特にサスペンス作品は邦画に比べあえて説明不足な展開で始まる事が多く、物語が進むにつれて「なるほど、そういう事だったのか」と事の顛末が判明していくのが醍醐味でもあります。
しかし「あえて説明を省いた作品=面白い作品」というのはやはり上手な脚本と構成あってのもの。この『映画/キリング・フィールズ 失踪地帯』も状況説明は少なく、ややゴチャゴチャした流れから始まるのですが…いくら物語が進んでも一向にしてまとまりを見せない。
とにかく細部が雑。そして見せ方が下手。
アメリカ映画というよりもスペイン映画に近いような重く鬱々とした展開は魅力的でもあるのですが、実話を基にしているクセに様々な部分があまりにも不自然かつご都合的すぎる気がします。
・オフィスにかかってきた電話の向こうで泣き叫ぶ女性の声が聞こえているのに、録音するだけで受話器は取らない。
・襲われたシングルマザーのくだりは必要性が乏しく、この母親も無駄に偉そうで意味不明。
・アンの誘拐が不自然すぎるタイミングなうえに、都合よく防犯カメラは故障中。
・それまでの女性はみな殺されたり切断されていたのに、アンは縛られただけ。それでも二人は「殺した」と思い込んでいる様子。
・結局最後は序盤から疑わしかったライノが捻りもなくそのまんま犯人。
…と、残念にもほどがある作り。しかも登場する女は誰もが不自然なほど男に対し敵意むき出しで、監督の歪んだフェミニスト臭がプンプン。
最終的に『明らかになる部分』と『あえて描かないまま終わる部分』に加えて『誤魔化して終わらせた部分』が混在するため、全体像が掴みづらくどうにもスッキリした気分になれない。しかし贔屓目に見ても心地よい余韻が残るとは言い難い。
これが無名の俳優ばかりで作られていたら、
『監督独りよがりの駄作』
…の烙印を押されても仕方ないのではないかと。
物語全体の空気は決して悪くないのですが、それは監督や脚本の手柄ではなく俳優陣のおかげといった感が拭えませんなぁ…。
超個人的な戯言感想
…とうわけでクロエ・グレース・モレッツだけを目当てに鑑賞したライトユーザーを困惑させる、『キリング・フィールズ 失踪地帯』という映画。
私なんぞが偉そうな事を言うのもアレですが、アミ・カナーン・マン監督はもう少し下積みを積んでから長編作品に再挑戦したほうが良いのではないかと。娘が可愛いのはわかりますが、まだ実力が追いつかないうちから立派な椅子に座らせるのは本人のためにもならんですよ。