注!)当記事はネタバレ・あらすじ・感想を含みます。未鑑賞の方はご注意下さい。
今回の1本は…スペイン映画という事で比較的マイナーな作品『映画/パーフェクト・リベンジ』です。
私はスペイン映画独特のむせ返るような空気感と生々しい人物描写が大好きなのですが、「無駄な部分がダラダラ長い」とか「暗くて爽快感が無い」など、日本人にはあまり好まれない事が多いようで…。
頭スッカスカの典型的アメリカ娯楽映画なんかよりよっぽど面白いと思うんですけどねぇ…そのへんは好みの問題なので仕方なしというところでしょうか。
しかし本作は純粋なスペイン作品というわけではなく、スペイン・アメリカ合作。それゆえスペイン映画独特の空気は薄く、展開や結末もアメリカ映画的な雰囲気。比較的万人受けしそうな作品だと思うのですが…。
パーフェクト・リベンジ
(原題:KILLING TIME)
2015年 スペイン・アメリカ
主なキャスト:
ベン・テンプル
エステル・メンデス
フランク・フェイス
ヨン・ゴンサレス
アイトール・ルナ
監督:アントニオ・エルナンデス
脚本:アントニオ・エルナンデス
ネタバレ無しのあらすじ
金融関係の仕事でスペインに出張中のロバート(ベン・テンプル)。
滞在中のホテルでアダルトビデオチャットを利用した彼は、スペイン人のサラ(エステル・メンデス)と知り合い、彼女の部屋であんな事やこんな事をして楽しむ。
数日後、再びサラとビデオチャットで会う約束をとりつけたロバートだが、会話の最中に見知らぬ男が彼女の部屋に上がり込み・・・事態は予期しない方向へと転がっていくのだった。
・・・といった内容の作品。
アレもコレもどうかと思うよ…
えー、何から書けば良いのでしょう。
作品自体の感想を言ってしまえば「意外に面白かった」です。
しかし、邦題もDVDパッケージもVODの宣伝の仕方も…どれも物申したくなるような事ばかりで。
まず『パーフェクト・リベンジ』という邦題、こりゃないですよ先生。どうして日本は原題を捻じ曲げて『パーフェクト・なんちゃら』というタイトルにしたがるんでしょう。
原題の『KILLING TIME』はなかなか秀逸だと思うんですけどねぇ。しかしコレだと英語が苦手な人が「えーと…KILLは殺すだから…殺しの時間って事か!?」とか思っちゃうからでしょうか…。(KILLING TIMEは「暇つぶし」や「時間つぶし」といった意味になります)
そしてDVDパッケージ。『すべては女の罠なのか…』の文句とともに意味ありげなサラの顔。コレもないですよ先生。鑑賞前から変な先入観を持ってしまって、物語を純粋に楽しめなくなるようなクソキャッチです。
私はDVDではなく某動画配信サービスでの鑑賞だったのですが、そっちはそっちで『エロティックサスペンスですよ!』といった雰囲気の紹介になっており、映画の内容とまるで合ってない始末。
映画をアレコレ観ているとよく思うの事なのですが、「とりあえず見てもらえれば勝ち(劇場・レンタル・販売問わず)。鑑賞後にどう思われようと関係ないや」…といった売り込み方はどうかと。。。
ここからネタバレを含むよ!!
エロティックサスペンスではない!
上でも書きましたが、私はてっきり『そっち系サスペンス』だと思って鑑賞したので…そりゃもう良い意味で裏切ってもらえました。
なにせエロティカルな空気を出しているのは本編開始から10分程度だけ。あとはもうおっぱい1個も出てきません(笑)
結果としてはホント、良かったんですけどね。いつもおっぱいがどうとか尻がどうとか言っている私ですが、今回ばかりは女優さんがあまり好みではなかったので…。普通にサスペンスでゴリゴリ押してもらえて助かりました。
すべては女の罠なのか…
話の中身うんぬんよりも、まずつくづく思ったのが「ネクタイ締めて会社勤めするような仕事じゃなくて良かった…」と。
こんな職種、私だったら3日で気が狂いそうです。
価値観は人それぞれなのでそういった主義の方を否定する気は毛頭ありませんが・・・年収や立場、社会的地位にこだわる生き方は、考えただけでオムツの中に何かが出そうになります。
おそらく年収はロバートの半分もないと思いますが、自分のやりたいことで自分を表現する職種で良かったなぁ…と。
・・・と、映画の内容の話にしましょう。
こういったシチュエーションの映画だと日本人はすぐに「つーかすぐ警察に通報しろよ」とツッコんでしまいますが、そこを早めに「サラには警察に行けない事情がある」という雰囲気を会話に織り込んで潰してきているのは良かったかな、と。
ビデオチャットやカメラうんぬんは不自然な点もありますが、そこは映像の切り替えも含めて変にリアルにしていないので「演出」という事で楽しめます。
そしてDVDパッケージの『すべては女の罠なのか…』というキャッチコピーの件。私はこのキャッチを見たのは鑑賞後だったのですが、やはり早々に「あ、これは女がロバートの金目当てで仕掛けた罠なんじゃ…」と感じてしいました。
ペンチ使ってなんかやってる部分も、ディエゴをボッコにする部分も、ぜんぶ不自然なくらいカメラから見えない位置なんですもの。
しかし、コレは鑑賞中に感じるからこそ面白いのであって、最初に先入観を持たせちゃダメだと思うんですよねぇ。。。
後半グイグイ
そういえば私が鑑賞した某配信サービスでは見どころの欄に「高度な頭脳戦」といった事が書いてありましたし、アマゾンプライムでも「秀逸な頭脳戦」となっていました。
たしかに後半、ロバートが駆使する駆け引きは頭脳戦っちゃー頭脳戦なのですが…そこまで高度でも秀逸でもない気が…。
しかしこのへんのくだりは非常に面白かったですよ。ロバートが?いやいや、ニコラスがです(笑)
いいですねニコラス。最初は保守的な常識人でそれほど魅力を感じなかったのですが、赤ん坊を連れてきたあたりからどんどん巻き込まれていく彼の姿はたまりません。
ロバートがサラの部屋に突入した後も、捕えられた彼の事より電話がかかってきたニコラスのほうが心配になってきます。「おいおい!俺どうすりゃよいのよ!?」と聞こえてきそうな彼の顔こそ秀逸と言って良いでしょう(笑)
意外にあっさり味で美味しゅうございました
結局最後の最後まで大きなどんでん返しは起こらず、意外なほどストレートに問題は解決。心地よい終わり方で締められてしまいました。
しかしダメかと言えば決してそうではなく、私個人としては「濃厚そうなラーメンだったけど、意外にすんなりスープまで飲み干せた」といった感じです。お味もなかなか良かったです。
たしかにダラダラした展開もありますし、流れが悪くなる部分もありましたが…文句をつけるほどのものとは感じませんでした。
ガチのスペイン映画にはもっとグダグダで意味不明でダラダラな作品は多々ありますし(笑)
普通にサスペンス映画として楽しめる1本なのではないかな…と。
エロでもありませんしグロくもありませんので、彼女や奥さんと一緒に鑑賞するのもアリですよ。冒頭に出てくる大人のビデオチャットの部分は「へぇ~、こういうのもあるんだ~」とか言っておきましょう。
決して私のように「昔はカメラなんかなくて、普通に文字だけでアダルトなチャットしてたんだぞ。それでな、お互いにどう触ってるかとか言い合ってな、盛り上がってくると右手は〇〇〇握りながら、左手の人差し指一本で打たなきゃなくてな…」などと余計な体験談を話すのはやめましょう。しばらくの間、晩御飯のオカズが減ることになりますよ。。。。