今回の1本は『映画/オオカミは噓をつく』、『Big Bad Wolves』という含みのある原題を「結末ドーン!!」の邦題で送り出してきた、タランティーノ絶賛(という触れ込み)のイスラエル作品です。
いやー、これまたなんとも味わい深い作品でしたぞ。面白いかどうかは別として。
オオカミは嘘をつく
2013年 イスラエル
キャスト:
リオル・アシュケナージ
ロテム・ケイナン
ツァヒ・グラッド
監督:ナヴォット・パプシャド、アハロン・ケシャレス
ネタバレ無しのあらすじ
イスラエルで凄惨な連続少女殺人事件が発生。
担当刑事のミッキ(リオル・アシュケナージ)は、容疑者とされた学校教員ドロール(ロテム・ケイナン)に対し強引すぎる取り調べを行い、停職処分となってしまう。
どうしてもドロールが犯人だと信じて疑わないミッキはさらに過激な手段に出ようとするのだが、なんと被害者少女の父親ギディはその斜め上をいく勢いで大暴走。ついでにその父まで大暴走。
・・・といった流れで、登場人物の8割が頭どうかしている映画。
個人的な話で戯言
いつも『キャストで戯言』から開始するのが定番なのですが、なにせ本作はイスラエル作品。俳優に関してアレコレ書いたところで誰もついてこれないでしょうし、なにより私自身全くわからんので戯言なんぞ書けません。
実は本作はとある方からのメールをきっかけに鑑賞した映画でして…始めにちょっとだけ個人的な話を。
ご存じの通り、当ブログはコメント欄を設置していません。
私としても、こんな変人ブログを好んで読んでくれている希少な方とあんな話やこんな話に花を咲かせたいところなのですが、なにせただでさえ映画ブログは『頭がちょっとアレな人』からの面倒臭いコメントが集まりやすく、加えて私の綴る文章もアレですので・・・余計なストレスを回避するために設置していません。
…が、問い合わせからとても嬉しいメッセージをくれた方がおり、その話の中に本作『オオカミは噓をつく』のタイトルがあったので鑑賞してみました。
しかも迷惑なメール以外で問い合わせが利用されたのは史上初。いやぁめでたい。今夜は祝杯だ。
お礼として『オオカミは噓をつく』の戯言をお贈り致しますので、お読みいただけたら幸いです。
邦題で戯言
さてさて。全国四千万の『クソ邦題撲滅の会』の皆様、お待たせしました。
いくら我々が活動しても、一向に無くならないウンコみたいな邦題。『カッコ悪い系』『余計なもん付け加え系』などいろいろありますが、その中でも最も罪が重いと言われる『ネタバレ系』
この『オオカミは噓をつく』も、誰がどこから聞いてもネタバレ以外の何物でもない。
この邦題のせいで『作中の登場人物に嘘つきがいる』という事が確定してしまい、それが『オオカミ』であるとまで断言。じゃあいったい登場人物の中の誰がオオカミなのだろう・・・もしかして犯人ではなく追う側だったり・・・などと悩めたならばまだ良かったものの、そんな間もなく「おまえがオオカミだ」と作中で発表されてしまう始末。
おいおい!ここから先、全部茶番じゃねぇかよ!!
…となりますさ。
しかしこの点、ちょっと考察すべき部分ではありますので、後ほど。
どんでん返し&驚き一切無し
この『オオカミは噓をつく』という映画の流れをざっくり書くと…
- 残虐な殺人事件が発生
(殺人描写は無し) - 容疑者浮上
(理由や根拠は無し) - 行き過ぎた取り調べ
(という名の拷問&私刑) - 結末
(ひねりも無し)
という寄り道無しの、営業先から自宅へ直帰スタイル。
通常であれば③の時点で「コイツは本当に犯人なのか!?」「もしかしたら真犯人は別にいるのか!?」とヤキモキしながら鑑賞できるのでしょうが、そこはしっかりと『オオカミ(容疑者)が嘘をついています』と邦題が断言してしまっているので、その楽しみは無し。
開始30分で描かれる『ドロール(容疑者)がバレエ少女にケーキを食わせるシーン』がやや含みをもたせた表現にはなっているものの、その前に「娘には会わせられない」と電話でハッキリ言われていますし、その電話を”バレエ少女を見ながらかけている描写”が直球すぎる。
あれが『レッスンする少女の後ろ姿を遠くから見つめている』という表現ならば「会わせてもらえない娘をこっそり覗きにきたのか」とも思えたかもしれませんが、誕生日うんぬんのくだりとケーキ、部屋に置かれたプレゼントの自転車があったとしても、会う事すら拒絶された娘を妻に無断で自宅に連れ帰ってくる・・・というのも考えづらい。
そのくらい娘を愛していた・・・と思えます?わたしゃ無理でしたなぁ。
このシーン、
あああああ!
あの少女は自分の娘かと思ったら、刑事の娘だったのか!!
…という衝撃を狙うミスリードにしては、あまりにもバレバレすぎると思うのですよ。
しかも拷問開始前に「まず少女にお菓子を食わせている」と手口を明らかにする時点で完全にガチですし。
やはりオオカミは嘘をついている前提で鑑賞しなければならないのではないかと。
拷問とサイコで戯言
…というわけで、この『オオカミは嘘をつく』という映画は『犯人は誰なのだろう』を楽しむものではなく、あらかじめ犯人は公開しておき、追い詰めていく過程を楽しむ手法なのではないかと思われます。
いわば古畑任三郎タイプの映画ですな。
制作者としても「誰が真犯人だ?」ではなく「コイツ犯人なのに、なぜここまでシラを切れる?もしかして何か理由が?」でモヤモヤして欲しいのではないかと。だからこそ、頭部のありかを自白した時に「あるのか?ないのか?」が盛り上がりますし。
そしてその過程を演出するのに大きな比重を占めているのが『残酷な拷問』
目を背けたくなるようなエゲつない拷問を受ける容疑者を見て「果たしてこれは正義なのか?」と葛藤し、被害者であるはずがまるで異常犯罪者のように描かれる遺族の姿に戦慄する。
戯れにチラッと世間の感想を覗いたところ、多くの方が「拷問シーンがやばすぎた」「途中で見るのやめた」との感想が多く見受けられました。
・・・・え、本気?
エゲつない映画をゲップが出るほど鑑賞してきたド変態映画好きとしては、この程度の拷問描写はソフトだとすら思えるのですが・・・(汗)
だってアレですよ?〇〇〇に〇〇も入れてないし、〇〇〇をドアップで映しながら〇〇〇〇で〇〇したりもしてないんですよ??
血だって普通にちょろちょろぱっぱですし、ドロールなんて「指を折るぞ」と言われれば「ひぃぃ」と言いながら折りやすいように指を伸ばし、「爪を剥がすぞ」と言われればつらそうな顔をしながらも足の指をピーンと伸ばし、びろびろに伸びた猿ぐつわだって素直にくわえたり吐き出したりしてるんですよ?
ハードSMクラブでドMプレイを楽しんでいる客かおまえは!
…と言いたくもなるじゃないですか。
さらに『被害者少女の父と、その父親のサイコっぷりがヤバい』という見どころも、やはりサイコ愛好家からすればいたってノーマルなレベル。
相手が苦しんでいる姿を見ながら〇〇もしていないし、せいぜい拷問しながら関係ない日常会話でヘラヘラ笑ってる程度。こんなのちょっと陽気な一般人レベルですよ。
これらの描写で「エグすぎる」とか「見れない」とか言っている方は、一度『映画/ムカデ人間2』をご覧になって下さいな。あのくらいが途中離脱を許されるレベルのエグさですぞ。
超個人的な戯言感想
…てな感じでクソ邦題を擁護するような話と、拷問はもっと激しくやれ、な内容になってしまいましたが、しっかり映画として楽しめる要素はありました。
イスラエルのお国柄なのか制作者の個性なのかは知りませんが、重いテーマを扱っていながらコミカルな描写とわざとらしい壮大感でシュールさを出す手法はなかなか。
アラブとイスラエルという繊細な関係にも踏み込み、そこに自虐的な表現まで入れてくるところは本筋以上にドキドキ。
不自然すぎる描写も多く、かなりツッコミどころだらけの作品ではありますが・・・人によっては十分楽しめる作品なのではないかと。
実にイタズラ心に溢れた映画だなぁ・・と感心しましたよ、わたしゃ。
あ、最後に1個だけ。
冒頭の少女が行方不明になるシーンで、廃屋にデカデカと『RITALIN』と書かれていたじゃないですか。屋根に合成されたタイトルの事ではなく、壁に赤字の落書きで。
アレ、絶対何かの暗喩だと思ったんですけどねぇ・・・。
(Ritalin(リタリン)は脳疾患や精神疾患に用いられる治療薬名)
私信
そら様へ
メールでは「面白かった」とも「つまらなかった」とも書かれていなかったので、褒めて良いのかコケにして良いのか迷いましたが・・・余計な感情は加えず正直に垂れ流させていただきました。
一ヵ月以上更新が停止していたのはイロイロあって映画を楽しむ気分ではなかった事と、それを本業に没頭することで逃避していたためです。
ですが今回感想をいただき1本鑑賞したことで、またムクムクと映画欲求が元気になってきました。ありがとうございます。見ます?元気になっているアレを。
いやいや、アレとは心の事ですよ、いやだなぁ。
もし「こんなオススメ映画があるんだけど、バカな戯言で台無しにしてくれ!」という要望などあればまたお気軽にメール下さい。
もちろん、それ以外のどなた様でも要望は受け付けております。応えられるかは約束できませんけど…。