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夢か現実か…芸術的すぎる演出が見ている者を困惑させる『映画/パッション』、2004年に同名の作品がありますが、レイチェル・マクアダムスとノオミ・ラパスが出演している2012年作品のほうです。

あらすじ・ネタバレに加えて独自の解釈と考察を含みますが、現実と虚構が織り交ざる描かれ方ゆえに人によっては「まったく違う!」と感じてしまうかもしれません。あくまでも個人の感想…という事でご容赦下さい。

パッション


2012年 ドイツ・フランス

主なキャスト:

ノオミ・ラパス
レイチェル・マクアダムス
カロリーネ・ヘルフルト
ポール・アンダーソン
ライナー・ボック

監督:ブライアン・デ・パルマ
脚本:ブライアン・デ・パルマ

原作は2010年・フランス映画『ラブ・クライム/偽りの愛に溺れて』

ネタバレ無しのあらすじ

大手広告会社の重役として働く、野心溢れる女性クリスティーン(レイチェル・マクアダムス)と、その彼女を支える優秀な部下イザベル(ノオミ・ラパス)

クリスティーンに憧れ、斬新なアイデアで優れた広告を作り上げたイザベルだが…本社復帰を狙うクリスティーンはその手柄を横取りされ、さらに卑劣な手段で精神的に追い詰められる事に。

そのえげつないやり口に憔悴していくイザベル。しかしとある夜、「クリスティーンが何者かに殺された」という知らせが入り、容疑者として拘束されてしまうのだった…

・・・といった内容の作品。

キャストで戯言

主演は「ドラゴン・タトゥーの女」のイメージもだいぶ抜け、素晴らしい演技力を発揮するノオミ・ラパス。個人的に好きな女優の1人。

彼女、髪を下せば美人に見えるのに、上げると急激に残念な感じになるのはなぜなのか…。

そしてその彼女をえげつない手段で陥れるヤバい上司がレイチェル・マクアダムス。こちらも好きな女優ではあったのですが、どうも若いころの可愛らしさが抜けてきた気が…。彼女の目、昔よりもだいぶ大きくなってませんか?魔改造した?

そしてイザベルを支える忠実な部下として登場するダニ。演じるのはカロリーネ・ヘルフルトなのですが、どこかで見たような気がするんですよね…。

この異様に白い肌、特徴的な顔立ち、うーむ。

…と思って調べてみたら、『映画/パフューム ある人殺しの物語』で全ての発端となる「香り」を持った女性役の人でした。おおおっ、あの彼女かっ!

バレエ恐るべし

さてさて…。

とにかく観る者を困惑させる演出が目白押しの本作ですが、真面目な考察と下らない戯言、どちらから行きましょうか…。

クリスティーンが殺されるあたりまでは特に難しい謎もありませんので、微妙なエロスと女同士のドロドロした確執をサスペンスタッチで楽しむ事ができます。…しかし困惑するのはバレエのあたりから。

ここでブライアン・デ・パルマ監督お得意のスプリットスクリーンが登場です。

左ではイザベルを追い、右ではクリスティーンを追う。そして左の画面からイザベルが消え、バレエの映像が延々と流れているあたりで「こりゃイザベル、何かやらかしてるな…」と怪しむわけですが…

あまりにもバレエの人たちの個性が強すぎて、そっちが気になりすぎる!

なんで二人ともそんなにカメラ目線なのよ!そして青ヒゲくん(男性バレエダンサー)は主張が強すぎるよ!(笑)

(C)2012 SBS PRODUCTIONS - INTEGRAL FILM - FRANCE 2 CINÉMA

いやホント、バレエをやっている方には申し訳ない話なのですが、私はそっち方向にはとんと疎いもので…そのポーズと表情のインパクトが強すぎて映画の事なんて忘れてしまいました。もうイロイロと芸術的すぎてついていけません。

注)この演目『牧神の午後』は「七人のニンフに出会った牧神が、その姿に欲情して誘うものの逃げられてしまい、残されたヴェールで自らを慰める…」というエロティカルな内容。巻き布が重要アイテムとなっている点が映画内容と符合しています。
さらにその製作過程において、主催者が同性愛のパートナーである振付師のアイデアを採用してみたり、その振り付けが非常に斬新なものであったり…など、映画内容を彷彿とさせるエピソードもあります。

真面目にネタバレ考察

はい、さらっと戯言を終わらせたので真面目な考察を頑張りましょう。

イザベルが薬を服用するあたりから現実と虚構が織り交ざり始めるのですが、とりあえず『薬は偽物、全てイザベルの計画』というのは親切すぎるほど随所で明らかにしてくれていますので早々に予測がつくかと。

スカーフは同じものを用意していた…とか、やっぱりバレエの最中に殺しに行っていた…なども予想通りなのでOKなのですが、問題はその後。

どこまでが現実で、どこからが虚構なのか困惑するシーンが続いた末、ハッとベッドで目覚めたイザベルの横にはダニの死体らしきものが…で、「THE END」となり暗転です。一見夢オチのように見えるこの部分、「どこまでが真実で、どこからが虚構なのか…」というのが本作を語る上で重要なポイントになると思います。

ちょっと私なりの解釈を並べてみます。

注!)あくまでも個人の解釈と考察です。否定したくなる方もいるかと思いますが、そこは大人の姿勢でそっと胸の内に秘めておいてください。

まず『墓地でのシーン』なのですが…

墓地でバッハ刑事が「彼女に謝りにいかなければ」と言っています。しかしその前にイザベルとダニが乾杯し主従を逆転させるシーンで「刑事がバラの花束を持って謝りに来た」と言っていました。

ここ、時系列が逆になっているのだと思います。

ですので墓地のシーンは「イザベルとダニが祝杯を挙げる前」であり、その後の虚構へと繋げるための回想のような演出ではないかと。そして最後に目覚めるイザベルの「夢のスタート」であると考えられます。

その後カメラは螺旋階段を上から見下ろすシーンに変わり、刑事がバラの花束を抱えて登ってきます。

この映像はそのカメラワークと構図からも「現実ではない」と考えて良いでしょう。(実際にバラの花束を持って訪問してきたという事実はある)

すなわち『バッハ刑事が訪問し、ドアの前にバラの花束を置く』『双子の姉が血の付いたスカーフを巻いて尋ねてくる』の映像も現実ではないと思われます。

そしてダニが証拠を保存し、刑事へ送信できる状態にしていた携帯。これが存在するのは事実ですが、深夜に鳴ったという部分は・・・どう思いましたか?

私はこの携帯が「鳴る」という事自体がおかしいと思うんです。彼女の使い捨て携帯に、いったい誰がかけてきたのでしょう。アラームだったとしたら、もう少しアラームらしい音色にしていると思いますし。不自然なまでに鳴り続ける着信といい、イザベルの夢ではないかと。

証拠のメールが送信されてしまった…の部分も、おそらく送信はされていないと思います。精神的に追い込まれたイザベルの心理状態が夢に表れているのではないかと。

まとめてみると…

墓地で双子の姉を見る
 ↓
その後バッハ刑事が謝罪に来る
 ↓
ダニと祝杯。証拠が保存された携帯を見せられ、関係を迫られる
 ↓
その夜、ダニを殺害
 ↓
それらの事が原因となり、現実と虚構が織り交ざった夢を見る
(これが『墓地~目覚めるまで』の映像)
 ↓
目覚める

…という事だと解釈しました。

要するに『墓地のシーン』も含めてそれ以降は全てイザベルの夢。その夢で「現実に何があったのか」を表現しているのではないかと。

「双子の姉がイザベルを殺しに来る」というのも、イザベルの動揺が夢に現れたものでしょう。

とにかく文章でわかりやすく説明するのが難しいうえに、双子の姉に関してもブライアン・デ・パルマ監督自身が、インタビューで存在をぼかすような発言をしていますので…もうなにがなにやら。

これだからフランス映画は困るのよ。ハッキリ明確な答えがない作品が多すぎるんだものっ。

映画/パッション・考察まとめ

…というわけで。

わかりづらい文章をダラダラと垂れ流す事になってしまいました。「これが真実のネタバレだ!」と声高に主張するつもりもありませんので、そんな感じに解釈した人もいるんだよ…という程度に捉えていただければ幸いです。

意味わからんかった方はとりあえず『なんかよくわからない映画だった』でも良いのではないかと(笑)

「真実はいつもひとつ!」と中身大人のメガネっ子がキメ顔で言ったりしていますが、こと映画に関しては「真実はひとつ!…の場合もあるし、たくさんある場合もある!」で良いと私は思っています。

そんな事で目くじらたてるよりも、引き出しの中に入っていた『アブノーマルなプレイ道具の数々』に関してアレコレ話すほうがよほど楽しいじゃないですか。ヤバいのがいっぱい入っていましたよね、あの中…。

(C)2012 SBS PRODUCTIONS - INTEGRAL FILM - FRANCE 2 CINÉMA

ちょっ、イザベル!ニコニコしながらそんなもん引っ張り出すんじゃありません!