今回の1本は監獄ブロマンス(ラブロマンスではなくブロマンスです。注意)系映画『プリズン211』、日本では劇場未公開のマイナーな作品ではありますが…個人的には『大好き映画10選』に入れても良いのではないかというほどお気に入り。ネタバレと結末を含みますので、未鑑賞の方はご注意下さい。
プリズン211
2009年 スペイン・フランス
主なキャスト:
アルベルト・アンマン
ルイス・トサル
フェルナンド・ソト
マルタ・エトゥラ
監督:ダニエル・モンソン
脚本:ホルヘ・ゲリカエチェバリア
ネタバレ無しのあらすじ
看守として勤務することになったフアン(アルベルト・アンマン)は、着任前日に下見として刑務所を訪れていた。
しかし職員に施設を案内されている最中に暴動が発生。
フアンは空室となっていた211号室に取り残され、囚人たちに囲まれることに…。
自らを『新入り受刑者』と偽り、囚人の中で生き延びようとするフアン。彼は無事に身重の妻が待つ家へと帰ることはできるのだろうか…。
・・・といった内容の作品。
キャストで戯言
さぁさぁ、誰もついてきてくれないとは思いますが、本作の主演は…あの名優ルイス・トサルでございますよっ。
知らない?ほら、パッケージのヒゲハゲですよ。え?主演はこいつじゃないだろって?いやいや、彼は本作でスペイン版アカデミー賞とも呼ばれるゴヤ賞の『主演男優賞』を受賞しているんです。ノーパンことフアンを演じるアルベルト・アンマンを主人公として話は進みますが、ダブル主演ということなのでしょうな。
「骨太キャラもしくはド変態キャラ」という変な二択が多いルイス・トサルですが、今回は彼の出演作の中でもかなりカッコ良い役どころ。なぜかめっちゃダミ声で話していますが、普段はここまで過剰にダミってはいません(笑)
個人的には彼が「ド変態」に全振りし、私をルイス・トサル信者に変えたきっかけでもある『映画/スリーピング・タイト』が至上の名作。DVDを神棚に飾って朝晩拝んだり、年末にどんと祭で燃やしたいほどに好きな映画です。興味のある方はぜひ。そりゃもう至高の変態っぷりですぞ。
そしてそちらでも共演しているマルタ・エトゥラはフアンの身重の奥さん役として本作にも出演。
彼女は一時期、ルイス・トサルと交際していたそうで。
ノーパンは変態か否か
そっち系に耐性の無い方にはキツい、いきなりのエグい描写から始まる本作。
しかし目を覆いたくなるのはそこだけ。本編にはさほどゴアな描写はございません。『看守が囚人に囲まれた状態で、素性を隠して生き延びる』という斬新な設定のサスペンスアクションがメインですから。
少々強引と言いますか…ご都合主義的な展開はあるものの、それ以上にこちらを引き込むような展開が連発。もういつバレるのかと、ドキドキハラハラですよ。
しかし…序盤にフアンが真っ裸にされるシーンがあるじゃないですか。その時彼は諸事情により下着を履いておらず、周囲から「ガハハハ!こいつノーパンだぞ!」「とんだ好きモノ野郎だぜっ!!」と囃し立てられるのですが…。
ええっ!?パンツ履いてないって、そんなにヤバい行為なのか!?
あの…私もけっこうパンツ履かないこと多いのですが…。
「下着を着用しないと不衛生だ」とか聞きますが、慣れてしまうともう窮屈でパンツ履きたくないんですよね…。
看守側から囚人側へ
…と、ノーパンの話は置いといて。
当初は看守側として、ヒャッハー揃いの囚人を欺きながら脱出のチャンスを伺うフアンなのですが…彼の奥さんが巻き込まれたあたりから状況は徐々に変化。
露骨に嫌われキャラの暴力看守のせいで奥さんが怪我を負い、挙句の果てに亡くなってしまうという展開は「えっ!?えええっ、殺しちゃうの!?」と、もはや困惑に近い衝撃。これによりフアンは怒りを爆発させ、結果的には囚人側としての立ち位置になっていくわけですが…そうなると管理者側としては『どうにかして救い出すべき存在』だったはずのフアンが、今度は厄介な存在に。
「もはや救ったところで奥さんの件で騒がれるだろうし…よーし、正体バラして囚人たちに殺させてしまおうっ!」
…というわけですよ。やるね、あんたら。
こういった『管理する側=悪・管理される側=善』という描き方は少々ありきたりではありますが、どこでもありえる話だけに生々しい。あっちもこっちも自分の保身ばかり考える中、変に友情に目覚めてしまったマラマドレに好感を抱くかガッカリするか…そのへんは人によるかと。
結末とリメイク
いろんな意味で「予想外」の展開が続く本作は、やっぱり結末も予想外。
裏切り者のアパッチ(アパチェと記載されている場合もあり)が放ったお手製パイプ銃で撃たれてしまったフアンとマラマドレ。そのまま画面はホワイトアウト・・・・ここでベタな映画であれば、次の場面は『病院のベッドで目覚めるフアン』だったりするわけですが、そんな甘っちょろい展開は無し。
最終的に勝者となったのは『不都合な事実を隠蔽した人間たち』と『裏切り者』という、どこにも救いのない結末へと着地してしまいました…。
幸せな生活から一転、最愛の妻とまだ見ぬ子まで殺され、自らも本当の殺人者となり、最終的には殺される。なんともフアンが不憫でなりませんなぁ…。いいじゃないですか、ノーパンだって。
…と、そんな「これまでにない設定と展開の映画」とくればアメリカが黙っているわけがない。相変わらず節操なくリメイクの話も。
2010年からCBSフィルムがリメイク作品を構想しているようですが、2020年現在その後の情報はありません。あれれ?ポシャッたかな…。
ハリウッドリメイク作品は『原作の地味っぷりを上手にエンターテイメント化した傑作』と『アメリカらしく中身スッカスカ、原作を台無しにする薄っぺらさ』に極端に分かれるので、なんとも怖いところではありますが…そのへんも含めて楽しみにしたいところ。
主演は誰が良いでしょうねぇ。あの強烈なマラマドレの眉毛を再現するにはコリン・ファレル一択ですかね…(笑)