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今回の1本はノルウェーのバストイ島で起きた実話をベースとする『映画/孤島の王』、実に重い内容で戯言なんぞ書けないような作品になります。ダラダラとネタバレを含んだあらすじなどはありません。

しかも当ブログがウリの「アホな戯言」もほぼ無いという…。だってこんな内容ですもの、仕方ないじゃないっ。

孤島の王


2010年 ノルウェー・スウェーデン・フランス・ポーランド

主なキャスト:
ベンヤミン・ヘールスター
トロン・ニルセン
マグヌス・ラングレーテ
クリストファー・ヨーネル
ステラン・スカルスガルド

監督:マリウス・ホルスト
脚本:デニス・マグヌッソン、エリック・シュミット

ネタバレ無しのあらすじ

1915年、ノルウェーの孤島『バストイ島』へと向かう一隻の船。

その島は少年更生施設として使用されており、エーリング(ベンヤミン・ヘールスター)とイーヴァル(マグヌス・ラングレーテ)は新たな収容者として移送されてきたのだった。

施設で彼らを待っていたのは、過酷な環境と大人からの不条理な抑圧。

それはやがて大きな事件へと発展し…。

・・・といった内容の重い作品。

実話??

「更生」の名のもとに不条理を強いられる少年たちに、見ているこちらまで苦しくなるような内容ですが…本作は実話がベース。

ただし他の『実話を基に~』という作品同様、どこからどこまでが実際に起きた出来事で、どの部分が創作なのかは不明です。

アレコレ調べてみたところ、確実に『事実』と言えるのは…

  • ノルウェーのオスロ南方に『バストイ島』は実在
  • 1900~1970(諸説あり)の間、『バストイ矯正学校』という更生施設が存在していた
  • 収容されていた少年たちの暴動事件が発生(規模は不明)
  • 施設での虐待行為や運営者による横領などがあった(らしい)

…といった感じでした。

マリウス・ホルスト監督が過去にバストイ矯正学校に収容されていた男性と出会い、そこから生まれた作品という事ですので実体験に基づく内容は含まれていると思われますが、登場人物や細かい内容などに関してはなんとも。

ちなみにこのバストイ島、現在は『バストイ刑務所』として運営されており、そりゃもうリゾート地のような暮らしぶりで『世界一ヌルい刑務所』として有名なんだそうな。

バストイ刑務所・公式ページ(あちら語)

戯言不可の重い話

さてさて…特に『驚きのドンデン返し!』といったものはなく、淡々と更生施設の状況が描かれる本作。

衝撃的な出来事もありますが、やはり実話ベースということもあり映画的な過剰演出は控えめ。結末にも胸がスカッとするようなエンターテイメント要素は無し。

内容としては『汚い大人に管理された更生施設で、少年たちが反旗を翻す!』という流れなのですが、決してアチラ版・壮大な「僕らの七日間戦争」といったノリではなく、少年たちが幸せな笑顔を見せる事は一度もありません。

陰鬱とした更生施設で過ごす少年たちの姿とそれを取り巻く大人、やがて起きる悲しい事件、そしてついに暴動へと発展するも、ハッピーエンドとは言えない現実的な結末を迎えるという…。

もうどこに戯言を挟めば良いのやら。

あっちを見てもこっちを見てもムサい男と青い少年ばかりで、女性キャラは『院長の妻』と、よく顔の見えない『保健室の看護師』、そして視察に来る『ざーますお婆ちゃん』のみ。

しかも不謹慎な事を言えないストーリーですから…「映画で戯言三昧」としては厳しい作品でもありますな…。

超個人的な戯言感想

普段、こういった文章を綴るにあたって他の方の感想などは一切読まないようにしているのですが…今回は『バストイ刑務所』について調べるついでに珍しく覗いてみました。

中には『ガキが反乱して逆に痛い目を見る話。調子に乗って「ノルウェー国王を出せ」とか言っているが、大人を舐めんな!と言いたい』といった感想も。なるほど、そっち視点から見ましたか。いやーほんと、人の感じ方ってそれぞれですなぁ。

映画の感想において何が正解という事はないと思いますが、やはり多くの方が本作に登場する大人たちを「クズ大人」と評しているようです。たしかにブローテン寮長は擁護のしようがないキャラですからねぇ(笑)

しかし…あまり深く語るとアホみたいに長くなるうえに面白くもない文章になるのでサラッとしか書きませんが、あくまで私個人の感想としては本作に登場する大人を一概に「クズ」と断定するのはどうだろうか、と。

院長はその立場を利用して横領していたようですし、保身のために汚い嘘も吐いていますから、クズと呼びたくなるのもわからなくもないのですが…彼は彼なりのやり方で本気で少年たちを更生させようしていたのも事実。

映画としては大人たちが『悪』であるかのように描かれてはいるものの、じゃあ少年たちは『正義』なのか?と問われれば、それも疑問が残ります。

いやいや、決して少年たちの行為を批判しているわけではありませんよ。

なんと言えば良いのでしょう…。ステレオタイプに『管理する側が悪、抑圧される弱者は善』という条件反射でこの作品を見るのは危険な気がするのですよね…。

…と、そのくらいにしておきます。小難しい話はどこぞの映画批評サイトに任せて、アホな戯言が私の担当ですので。

王とは…

…というわけで、「何が言いたいんだよアンタは」という感想になってしまいましたが、個人的には大好きな映画なんです。いやホントに。

そしてこれも何が言いたいのかわからない話ではあるのですが、タイトルの『孤島の王』(原題は『Kongen av Bastøy』で、『バストイの王』の意)、初見時は日本版パッケージのイメージから単純に『バストイの王を名乗ったエーリング』を指しているのかと思いきや…

これ、あちら版のパッケージです。これを見ると、『バストイの王』とは院長のことでもあったのだな…と。

悲しい王と、それを見つめるエーリングの眼差し。実に味わい深く良いパッケージです。どうして日本版もこのパッケージにしてくれなかったのでしょう…。