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全く聖書関係に知識のない方が単なるスリラー作品のつもりで見ると意味不明な『映画/マザー!』、しかし「何を表現しているのか」に気づいた瞬間からゾゾゾッと不気味さは加速。戯言を交えつつネタバレを含んだ解釈や解説となります。

なお暗喩などの解説は「鑑賞後」に読む事を強くオススメします。

マザー!


2017年 アメリカ

主なキャスト:
ジェニファー・ローレンス
ハビエル・バルデム
エド・ハリス
ミシェル・ファイファー
クリステン・ウィグ
ドーナル・グリーソン
スティーヴン・マクハティ

監督:ダーレン・アロノフスキー
脚本:ダーレン・アロノフスキー

ネタバレ無しのあらすじ

郊外の広い家に住む、詩人の夫(ハビエル・バルデム)とその若い妻(ジェニファー・ローレンス)。

しかし平穏な日々は見知らぬ男(エド・ハリス)が訪問してきたことをきっかけに崩れることに。

次々に巻き起こる不可解かつ不条理な出来事に翻弄され、憔悴していく妻。

もはや現実と思えぬような展開が加速し、いったいこりゃ何を見せられているんだ!?

・・・といった内容の作品。

キャストで戯言

さっさと内容に触れたいところですが、まずはいつもの「キャストで戯言」から。

主演はぼやーっとした目が魅力的なジェニファー・ローレンス

今回はいつもの目元バッチリどぎつい化粧もなく、終始ぼんやり眼で可愛らしい…と思ったら、最後にやっぱりいつものメイクをしちゃうのね…。まぁあっちゅーまにグチャグチャになっちゃうので良いですけど。

そんな若くてムチムチの妻をもつ、羨ましい夫役はハビエル・バルデム。出演作の多い名俳優ですが、個人的には『映画/ノーカントリー』が一番ヤバくて好きですなぁ。リアル奥さんはペネロペ・クルスなので好きな方にとってはやはり羨ましいかと。

私は本作を全く予備知識なく鑑賞したので、突然訪れてくる男性がエド・ハリスだったのにはびっくり。さらにその奥さんがミシェル・ファイファーで二度びっくり。さらにさらにその息子としてドーナル・グリーソンが出てきたりして三度びっくり。

めちゃくちゃ豪華じゃないのよっ!と思ったら後半にはクリステン・ウィグが出てくるわ、スティーヴン・マクハティが出てくるわ…

ぐっちゃぐちゃのカオス映像のあちこちに好きな俳優が散りばめられているという、まさに俺得な映画でキャスティングに関しては大満足でございました。もちろん内容にも満足ですよ。そのへんは後ほどのネタバレ感想で。

評価真っ二つ!観る人選ぶ作品

本作は批評家の間でも評価は真っ二つ。

ボロクソに貶す意見もあれば、大絶賛する人もいたりと…極端なまでに感想が分かれる作品となっているようです。まぁこの内容であればそれも仕方ないかと…。

理由は多々あると思うのですが、まず第一に宗教的な内容を含むというのがマズい。「食事の席で政治と宗教の話はするな」と言われるように、価値観の異なる者同士で議論しても埒が明かない事が多いテーマですから…。

しかも特定の宗教を賛美するならまだしも、否定に近いような皮肉めいた表現がバリバリですし。

さらには女性蔑視であったり、攻めすぎな表現であったり…お騒がせ監督アーレン・ダロノフスキーの本領を存分に炸裂させた作品とくれば、そりゃ真っ二つにもなるでしょうよ。

理由は明確ではありませんが、日本国内での上映も中止となっています。

まぁただでさえ日本人は宗教に無頓着で、聖書絡みの暗喩が多く含まれた作品は「意味わからん!!」となる方も多いので…中止して正解だったような気もしますな…。

ここからネタバレを含むよ!!

ネタバレ含む解説

この映画に対しハビエル・バルデム(詩人の旦那役)は解説なしで体験すべき映画だとコメントしていますが、私も激しく同意です。

日本人は知りたがりが多く、福袋でも中身が公開されているものを好んだり、ゲームと攻略本を同時に購入してみたり、映画も「どんな内容で、どんな意味がこめられているのか」の知識を仕入れてから見ようとしたり…。なんなんでしょうね、その性質。

私は鑑賞前に知っていたのはDVDパッケージとタイトルのみ。あとは一切予備知識無しでの鑑賞でしたが、それが良かった。これが中途半端に知っていたら楽しさ半減だった事でしょう。

…ということで、未鑑賞の方はここから先を読まない事を強くオススメします。

そっちじゃない

さてさて。

予備知識を入れてから見た方はわかっていたかもしれませんが、私のように真っ白状態で鑑賞を始めた場合『普通のスリラー映画』のつもりで見ていた方も多いかと。

見知らぬ訪問者、変に人の良い旦那、胸糞展開からの不条理連発。

とにかくエド・ハリス夫妻(名前設定がないので、以下俳優名で記載)の不快感がハンパない。無神経・図々しい・厚かましいの三拍子揃った言動に、見ているこっちまでこめかみがピキピキで…(怒)

なんなのこいつらっ!
しかも家族全員それかっ!
ていうか親族全員そのノリかっ!

…と、全員首根っこ掴んで庭に投げ捨ててやりたくなるような衝動に駆られますな。

しかし、壁から感じる鼓動、時々飲む謎の粉(壁にも塗ってた粉)、トイレに変な生物などなど…ちょいちょい挟まれる謎の要素から「現実的な話ではないのでは?」という雰囲気もヒシヒシ。しかも単に心霊や悪魔などの超常現象系ではなく、もっと深い別の何かを比喩しているような…

私は旦那さんが不自然なまでの寛容さを発揮してエド・ハリス夫婦を受け入れるあたりで『これってキリスト教の「寛容」を表現しているのでは?』と感じ、兄弟が殺し合うトコで「ああっ!」と確信に至りました。

そう、聖書絡みの暗喩なのですね…。

勝手な考察と解説

てなわけで、いったい何が何を表現しているのか。

私の知識なんぞ薄っぺらいものですし、博識な方が書いた他の解説サイトなどは読んでいないので見当外れの可能性もありますが…戯言も含めてサラッと書き並べてみます。

「何を言ってるんだコイツ」と思った時は、笑うなり見下すなりムチで叩くなり辱めるなりお好きにして下さい。

寛容すぎる旦那
最初は単に『キリスト教によるアホみたいな寛容さ』を皮肉っている存在かと思ったのですが、二人の間に子が生まれ、その子が崇められ、食われたところで『こりゃ神かっ!』と。

どうやら彼は創造主のようです。最後に自らそう言っていますし。
7日で世界を創造したらしいですが、冒頭と最後に焼けた家を元に戻す事はそれを表現しているのかと。
生まれた赤子
どこぞのライブハウスのように民衆にわっしょいわっしょいと運ばれ、食われる赤子。
この「肉を少しづつ与える光景」が聖体拝領そのものだったためにイエス・キリストを表していると確信し、ならば父は神じゃないか…と繋がったわけです。

私は仏教徒なのでよく意味がわからないのですが、「これはキリストの血です…。これはキリストの身体です…」とブドウ酒やパンを食わせる儀式、アレってなんなんでしょう…。
訪問してきたエド・ハリス夫妻
これは創造主とキリスト、さらに後述する兄弟の意味に気づいてから「そうかっ!」と繋がったのですが…彼らはアダムとイブ(エバ)というわけだったのですね。

創造主が作った世界に降り立った最初の人間。
作中、エド・ハリスの脇腹に傷跡を確認するシーンがありますが、これは『アダムの肋骨を1本取り、そこからイブが作られた』という事にかかっているのかと。

しっかし、まさかハゲ散らかしたジジィと無駄にエロいババァがアダムとイブだったとは…。予想外にもほどがありますな。
その息子たち
やいのやいのと揉めた挙げ句、弟を殺してしまう兄。
これはアダムとイブの子であり、人類最初の殺人の加害者と被害者カインとアベルで間違いなしでしょう。もうそのまんまですもの。

ちなみに兄を演じたドーナル・グリーソンと弟を演じたブライアン・グリーソンは、その名字からわかる通り実の兄弟です。
うじゃうじゃ集まる人々
どんどん増えては身勝手な行動ばかりする客人。
物語が進むにつれてその数は増え、場所を選ばずイチャついてみたり、争ってみたり、妄信的に旦那(神)を崇拝してみたり…。
これもそのまんま『人類』を皮肉混じりで表現しているのでしょう。

カオス極まる後半の展開は人類の歴史そのもの。こうやって描かれるとホント人間って愚かで醜いですなぁ。
肝心の妻
さぁ来ました、物語の中心にいる妻(ジェニファー・ローレンス)ですよ。
これが…なんとも理解に困るのです…。

イエスの母ならば『マリア』であり、旦那さんとレスっぽかったのも処女懐妊と関係あるのか…などと思ったりしたのですが、どうも腑に落ちない。

『家』が『世界』の例えならば、家そのものとも言える彼女の存在は『マザーアース』、母なる大地・母なる地球という事で良いのか…とも。そのほうが作品タイトル的にもしっくりきますし。うむむ…。

…と、以上が私の個人的な解釈になります。

トイレの謎の生物と、妻がちょいちょい飲む粉が気になるのですが見当もつきませんでした。

洋画専門なのだから、もっと聖書関係に詳しくならねばいかんなぁ…と痛感した次第でございます。

超個人的な戯言感想

…というわけで。

じわじわした違和感から始まり、徐々に混沌が加速、終盤はもうお祭り騒ぎのカオスっぷりを発揮するこの『映画/マザー!』、個人的にはかなり好みな作品でした。こういう「何を表現しているのか、こちらが頭と感性を使って推察しなければならない映画」ってのは観ていて非常に面白いですなぁ。

あんなにジェニファー・ローレンスがムチムチ胸の谷間を披露してくれているにも関わらず、そんなの気にしている暇がありませんでしたから(笑)

ちなみにDVD版には特典としてメイキング映像が収録されており、そちらもかなり見応えのある内容となっています。この映画を面白いと思った方は必見ですぞ。