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2019年のB級宇宙映画『映画/グラビティ 繰り返される宇宙』でネタバレ含む戯言を。みんな大好きループものにSF要素を加えたというお得な1本になります。

どうも評価が分かれるようで「眠い。ダルい。意味わからん」という声も多く聞かれますが、個人的にはわりとアリな映画でした。

グラビティ
繰り返される宇宙


2019年 アメリカ

主なキャスト:
アンソニー・ボナベンチュラ
ジーニー・ボレット
マイケル・アイアンサイド

監督:エリ・サジック
脚本:エリ・サジック、クレイトン・トルバート

ネタバレ無しのあらすじ

消息不明となった調査船アトロパ号を追う元刑事のコール・フリーマン。

想定よりも早くアトロパ号を発見したコールだが、艦内の日付も乗員の時間感覚も何かおかしい。

いったい何が起こっているのか…と思っているうちに船は突如目の前に現れた宇宙船と正面衝突! なんとそれは彼らが乗っている船と全く同じ、アトロパ号だった。

あっちもアトロパでこっちもアトロパ?同じ名前の船?いやいやそんなわけないぞ!?

・・・といった内容の作品。

SF+ループ!

ループものとしては珍しく舞台は宇宙。

アトロパ号がぐるっと時間軸をループすることで『過去のアトロパ号』『未来のアトロパ号』がドーンと衝突してしまうわけですな。この部分、他のあらすじや予告編では間違っていたりするのでご注意を。過去の自分たちの船がぶつかってきたのではありません。

さらに某動画配信サービスや諸々のあらすじ紹介では「恋人を追って…」となっているものの、恋人ではなく妻(アレコレあったようですし乗員名簿の名字も異なっているので、おそらく別れた妻)です。作中でもしっかり「Husband(夫)」と言っていますし。

この手のあらすじや予告編を書く人って、ちゃんと観てるんですかねぇ…。

…と話を戻しましょう。

みんな大好きループ映画。私も大好きループ映画。しかし一言で「ループもの」と言っても設定や表現は作品によってイロイロ。

本作でのループは『未来の自分(宇宙船)と遭遇(衝突)し、その後過去の自分と遭遇(過去の宇宙船と衝突)する。それを繰り返してぐーるぐる』というもの。後ほどネタバレを含むフローでアトロパ号の時間の流れを解説致します。

それなりにツッコミどころは多いですが、もともと現実ではありえない(とされている)現象ですので…細かい部分は目をつぶって鑑賞するのがよろしいかと。


ここからネタバレを含むよ!!

アトロパ号のネタバレ解説フロー

「ん?」となる部分はあるものの、物語のテンポが良くて意外と見やすい流れ。

ぐるぐるループするアトロパ号の時間の流れを追いつつ、ストーリーを「ざっくりネタバレフロー」にしてみましょう。

コールがアトロパ号に追いつく!
物語はここからスタート。
予定よりも早く追いついた事と船内の日付がズレていることから、アトロパ号の時間の流れが遅くなっているということが判明。
このまま時間軸はゆっくりカーブを描いて円を描き、過去に重なるわけですな。
未来のアトロパ号と衝突!!
ぐるっと回って過去に戻ってきた未来のアトロパ号と衝突!
この画はインパクトありますなぁ。

どうして向きが逆になって正面衝突になっているのかは謎。
普通に考えるとオカマを掘る形になるのでは…。
コールはあちらのアトロパ号に乗り込んで調査を開始。

脱出ポッドが無いというのが後に繋がるポイントであり、さらに鏡をじっと見るというシーンも地味に大事だったり。
未来のアトロパ号は爆発で粉々になり、コールは船内からサンダーズの遺体を回収してギリギリ帰還。
状況説明!
さっきぶつかったのは「未来のアトロパ号」であり、このままだといずれこの船はさっきのように「過去のアトロパ号」と衝突する運命にある…と、よくわからない未来ホログラフを使用して説明。
少々ちんぷんかんぷんな部分があるも、なんとなく「そういう事か」と理解できるのが救い。

それにしてもアトロパ号、こんなにデカい船なのに4人しか乗組員いないのね…。
いったんCM!
ここで話はいったんアトロパ号を離れ、「コールはなぜアトロパ号を追っていたのか」そして「奥さんとギスギスしている理由」を回想モードで。

どうやらコールは奥さんの弟でもある相棒を職務中に殉職させてしまったらしく。
これだけが理由なら「ちょっと奥さんヒドくない?」と思うものの、終盤の会話でコール自身が自責の念から奥さんの元を離れたことが判明。
サンダーズ逃走!
時間戻ってアトロパ船内。
自分の死体を見てパニクったサンダーズは強制的に睡眠中。
その死因が「射殺」であったことから揉め揉め。

しかしなにせ4人しかいないアトロパ号なので、動力担当のサンダーズがいないと物事が進まず…。興奮剤を使用して強制的に目覚めさせられるサンダーズ。
眠らせられたり起こされたり大変だねこの人も。

起きたサンダーズは興奮剤の作用もあってか、ヤバいテンションで逃走。
輪の正体は!
サンダーズを探せーとなっている隙に、今度はジェンセンも逃走。
あろうことか自分だけ脱出ポッドに乗って「ごめんよ、ごめんよ」と射出!!

ところが近くの惑星の重力に引き寄せられ、輪の中に取り込まれてしまい…
ここでアトロパ号衝突と同じくらいインパクトのある『なんと惑星の輪は無数の脱出ポッドだった!!』という衝撃映像がドドーン!

ループすることで、ここにどんどん脱出ポッドが溜まっていったというわけですな。この映像により「延々と膨大な回数を繰り返してきた」という事がわかってゾゾッ。

このインパクト抜群の『蓄積型ループ』の表現は同じくループ作品の『映画/トライアングル』でも使われており、初めて見た時はかなり衝撃でした。エグさはあっちが遥かに上ですが…。
従来のループはここまで
なんとかサンダーズを拘束するも、あれよあれよで船長は刺殺される事に。さよなら名もなき船長。
怒ったモイラはコールの銃を手にし、サンダーズに向ける。

…と、従来であればここでモイラがサンダーズを射殺し、そのままアトロパ号は過去のアトロパ号に衝突。
そして過去のコールが調査に入り、サンダーズの遺体を発見する…という流れでループが展開されていたのですな。

なぜそこに未来のコールとモイラがいなかったのか…単に発見できなかったのか、二人が脱出ポッドを使用したのかは不明です。
(「ポッドが使用されている」という部分が、複数射出されているのか、ジェンセンが使用した1機だけなのか、説明がないので…)。
ループ脱出!!
…しかしコールの説得によりモイラはサンダーズを撃たず、ぐるぐる繰り返す運命を変える流れに。
実は目覚めたばかりのコールが鏡を叩き割った時点で、ループからはズレてきていた様子(調査に入った船内の鏡は割れていなかった)。

コールが決断したループからの脱出方は…
モイラを脱出ポッドに入れて送り出し、過去の自分に託す
過去のアトロパ号と衝突時にフルパワー爆発させ、あっちも一緒にボーン!と消し去る

…という大胆作戦。

いつのまにやら「一緒に爆死しようぜ」という流れに巻き込まれたサンダーズが不憫でなりませぬ。結局この人はどう転んでも死ぬのね…。

この流れだとあっち(過去)のアトロパ号はコールが到着せず乗組員もコールドスリープから起こされる事がないので、何も気づかないまま「冷凍睡眠→そのまま永眠」の流れでやや人道的ですな(笑)
二人の運命は…
無事にコールに回収されたモイラは、託された指輪ネックレスを見せて状況を説明。

二人も運命の輪を抜け出し、新たな人生始める事ができるのか…といった流れでエンド。
あらやだ、意外に良い結末じゃないの。

超個人的な戯言感想

『ループを繰り返すアトロパ号の運命を変える!』という部分と『コールとモイラ、二人の運命を変える!』という要素が上手にマッチしていて、ストーリーとしては素直で悪くない。

さらに本来であれば冒頭になるであろう「コールが刑事として生活していたシーン」を中盤に回想で持ってきて、いきなり説明無しにインパクトのある流れから始めたというのもお上手。

無名俳優の多いB級映画かつ70分程度の短尺でありながらも、コンパクトにまとまった佳作…といった印象で個人的には悪くない作品でございました。

しかし…あっちのコール(物語最後にやってきた、元奥さんをいきなり送られたほう)はごっつぁんですなぁ。

元妻の尻とアトロパ号を追っかけてきたら、なーんもしないうちに向こうから手元に。しかも久しぶりに再会し最初はアレコレと揉めたけど…最後はコールが自らの命を犠牲にして救ってくれたという体験まで付いているわけですよ。こりゃ上手くいかないはずがない。

「え?何が何やらわからんけど…いただきまーすっ!」てなもんですな。