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『残酷で異常』、まるでエグいホラー作品のようなタイトルですな。その名とパッケージ(実際にはパッケージではない)のせいで「B級キテレツ映画」と思われがちですが、なかなかどうして奥深い映画だったり。

あちこちで語られている部屋番号『7734』の意味にも触れつつ、ネタバレ含めた考察となります。未鑑賞の方はご注意を。

残酷で異常


2014年 カナダ

主なキャスト:

デヴィッド・リッチモンド=ペック
ベルナデッタ・サクイバル
ミシェル・ハリソン
マイケル・エクランド
リチャード・ハーモン

監督:マーリン・ダービズビッグ
脚本:マーリン・ダービズビッグ

ネタバレ無しのあらすじ

異国人の妻を持つエドガーは、ある日急に謎の空間へと迷い込む。

そこには罪を犯した人間が集っており、エドガー自身も身に覚えのない妻殺しの罪を問われることに。

「そんな事やってないってば。ていうかココはドコ!?」

不可思議な空間と、不可思議なループ。変えられない歴史。

果たしてどうなってしまうのやら…。

・・・・といった流れの残酷で異常な作品。

キャストで戯言

キャストで…と言われたところでDVD化すらしていないマイナー作品ですから。俳優に期待できるわけがない。

主人公は「誰?」なダサいおっさんで、その奥さんも全く知らないうえに演技も微妙。

まぁどうせ知っている人なんて出てこないと思って……ん?……あれ?…今、椅子に座ってたのって…。

ギャー!まさかのマイケル・エクランド!!

まさかこんなマイナー作品で大好きなマイケル・エクランドに出会うなんて…。彼の「出演作品一覧」にも書かれていなかったのに。

…おっと。おそらく大半の方は「マイケル・エクランド?誰それ」だと思いますので興奮はこれくらいで。ちなみに子殺しのジュリアン役の彼です。彼が死ぬほど好きなんですよ、私。

興味のある方はぜひ『映画/ディヴァイド』を見ていただきたい。感じていただきたい。それ以外はチョイ役ばかりで彼の魅力が発揮できていませんが、この映画だけは別格です(特に後半)。

ついでにどうでも良い話ですが、7734号室で出会うテレビの中の男性が若い頃のロバート・デニーロに見えて仕方ありません。

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タイトルとパッケージ

内容に触れる前にもう1つだけ…。

インパクト抜群の『残酷で異常』というタイトル。原題は『Cruel & Unusual』ですので、そのまんま直訳でした(笑)しかしヘタに独自の邦題をつけられるよりはマシかと。

そして「パッケージがダサすぎる。タイトルロゴがイモすぎる」と言われているものの、日本版DVDとして商品化されていない作品ですのでコレがパッケージというわけではありません。

短編映画でよく使われる『作中のスクリーンショットにパソコンでタイトル入れただけ』という形なわけですな。


ここからネタバレを含むよ!!

回る回るよ地獄は回る

本作はいわゆるループもの。

ただし、「起点」と「途中に挟まれる異空間」がトリッキーな位置になっているというところが面白い。

よくありがちな…

『始まる』
 ↓
『やらかす』
 ↓
『アレコレ頑張るも失敗』
 ↓
『異空間』
 ↓
(時間が戻る)
 ↓
『始まる』
 ↓
以下ループ

…という流れではなく、

『アレコレ頑張るも失敗』
 ↓
(時間が戻る)
 ↓
『始まる』
 ↓
『異空間』
 ↓
『やらかす』
 ↓
『アレコレ頑張るも失敗』
 ↓
以下ループ

…といった流れです。

鑑賞する側も一周目は意味がわからないまま見せられるため、エドガーの混乱をそのまま体験しているような感覚に。

だからこそ徐々に真実が明らかになっていく過程も面白いのですな。実にお上手。

事の顛末と謎は作品中に明らかにしてくれますし、伏線もしっかりと回収してくれますので…そこらへんの考察や解説は不要かと。

ここからはあくまでも「個人的な解釈」だよ!

7734の意味。では7375は?

あっちでもこっちでも「スゲぇよ!こういう意味だったんだよ!」と熱く語られている『7734』の意味。

電卓などに「7734」を入力し、デジタル表示をひっくり返すとhELL、つまり『地獄』を意味している…というもの。

たしかに納得です。私も初回鑑賞時、部屋番号の数字に意味があるのでは…とアレコレ考えて「もしかして?」とは思いました。

しかし、だとしたら最初にエドガーが出てくる部屋の『7375』にも意味がなければならないのでは…と思うのですよ。ところが7734=HELLを声高に主張している方も、7375については一切触れていない。

よーし、では「7375」もデジタル表示でひっくり返してみましょう。おっと、SLELになるじゃないですか。

しかし英語に『Slel』という単語は存在せず。ハンガリー語にはSlelという単語があり『ゆっくり』という意味だそうですが、ここでいきなりハンガリー語というのも不自然。

うーむ、どうにか意味を見出そうとアレコレこねくり回してみましたが、結局のところ私には7375の謎は解けませんでした。無理矢理なこじつけなら思いついたんですけどねぇ…。

まぁ多くの罪人がそれぞれの部屋から出てきていますし、そっちは特に意味は無い…と言われりゃなんも言えんのですが、ならばなぜあそこまで露骨に『7375』という数字を見せたのか…とも。

…というわけで、『7734=HELL説』を否定する気は全くありませんが、『7375』に意味を見出せないかぎり「偶然の一致」と言われても仕方ない気もするんですよね…。

いやいや、たしかに作品内容と一致していますから7734はHELL(地獄)ですよ、ホント。

ならばこそ、なんとしても7375も謎を解き明かしたいじゃないですか。もしそっちは全く意味のない数字だったとしたら、製作者を地獄に落としたいですな。

現代版・地獄描写

『7734=HELL(地獄)』に疑問を呈した後に言うのもなんですが、たしかに本作で描かれているのは地獄。

日本で言えば「針山地獄」「血の池地獄」などなど、生前に罪を犯した人間が無限の責め苦を受ける…という意味での地獄ですな。

しかし決してありがちにレトロな世界観ではなく、テレビのモニタとグループセラピーという現代的な内容と、肉体的な苦痛ではなく精神的な苦痛を受けるというイヤ~な地獄。そして逆らうとキンタマ潰される地獄(笑)

こりゃキツいですなー(キンタマの話ではなく)。自分の犯した罪を他から責められるよりも、何度も何度も繰り返して自ら後悔せねばならない…ってのは針山よりもキツい。

なにやら心理学的には、犯罪を犯した者に対しては『被害者の気持ちになってみろ』ではなく、あなたの行為は罪であることを自覚しなさいのほうが効果的だそうで。

その部分をエドガー以外のウィリアム(親殺し)、ドリス(自殺者)、ジュリアン(キンタマ)の姿で描いたところは実に良い表現でした。でもなぜかドリスだけ亡霊ポジションなのね。

おそらく彼女は死ぬ前ではなく、死後(母の死により自らを責める子どもたち)を見ることが大事だからなのでしょうな。

超個人的な戯言感想

後半、「ゴーガン(息子)の真実」「兄とメイロンの8分間の通話」「毒を入れた理由」などなど…それまでのピースがバチバチと組み上がっていく部分は実に快感。

まずは奥さんの死を回避した後、彼女を「夫殺し」としないために自ら命を絶つという選択も「おおおっ」と。

しかしドリスの世界は約40年前なのだから…あの時点で現実世界に戻っていたとするならば、身元不明のおっさんの自殺死体が出ちゃうわけですよね。

…で?その約40年後にエドガーの奥さんに「おたくの旦那さんいなくなったでしょ、うちの前の木で首吊ったんですよ」と?

「え?遺体は?」「40年前に埋葬しました」「はい?」…ってなりませんか?(笑)

それともエドガーの遺体はエドガーの時代に出現?奥さんも「どうしてこの木で?」と言っていましたし。

そこらへんが私のポンコツヘッドでは上手くまとめることができませんでした。あの木がエドガーとメイロンが帰宅する途中に見かけた木(つまりエドガーとドリスはそう遠くない場所に住んでいた)ってのは、さらに「おおおおっ」となりましたけど。

なにはともあれ、とりあえずは『予想していたよりも練られた映画だった。しかもマイケル・エクランド付き』ということで、個人的には見て損のない作品でございました。

それにしても…40年後のドリスが違和感なさすぎでびっくり。めちゃくちゃ似てる人、いるんですねぇ。一瞬特殊メイクかと思っちゃいましたよ…。