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日本人には少々馴染みの薄いアイスランドが舞台の映画『湿地』、重厚かつ陰鬱とした空気が漂う見応えのある作品なのですが…いかんせん時系列が若干ややこしや。ネタバレを含む解説になりますのでご注意下さい。

湿地


2006年 アイスランド・ドイツ・デンマーク

主なキャスト:

イングヴァール・E・シーグルソン
オーグスタ・エヴァ・アーレンドスドーティル

監督:バルタザール・コルマウクル
脚本:バルタザール・コルマウクル

アイスランドの遺伝子研究所で働くオルン。

彼の娘コーラは遺伝性の疾患を抱えており、幼くして息を引き取ってしまう。

…そしてとある日、同じ町にて一件の殺人事件が発生。殺されていたのは悪党グループの一員ホルベルグ。

捜査に当たった刑事エーレンデュルは、引き出しの裏に隠されていた『ウイドル』と名が刻まれた墓標の写真を手がかりに捜査を進める。

やがて事件の全容が明らかになるにつれ、悲しくも衝撃的な真相が明らかになっていく…。

・・・といった内容の作品。


今回は一発目から盛大にネタバレるので注意!

時系列をネタバレ解説

しっかり集中して鑑賞していれば問題ないとは思うのですが…なにせ人名も地名も馴染みのない発音で覚えづらいうえに、現在と過去がいったりきたりしているにもかかわらず明確な境目は無し。

ぼやーっとしていたり、やたら不味そうなメシに気を取られていると「ん??」となってしまう事もあるかと。

…というわけで、いつもの「ざっくり戯言フロー」を使い、完全ネタバレで時系列の解説を。

映画の流れではなく時間の流れに沿って追って行きますので、未鑑賞の方はご注意下さい。

エーレンデュルの娘に関する事柄や、その他の奥深い要素も多々あるのですが…ざっくりですのでそのあたりは触れません。

コーラの死
全てはここから。
幼くしてオルンの娘コーラは亡くなってしまう。

死因は脳腫瘍。
厳密には『神経線維腫症』という遺伝性の疾患。

オルンは遺伝の原因を究明しようと、取り憑かれたように調査を始める。
オルン、職権乱用で調査
娘の病について両親に尋ねるも、父は「ウチの家系にそんな病気になった者はいない」と言い、母はその話を避ける。

それならばとオルンは職権を乱用し、娘と同じ病の遺伝子を持つ人間を調べ上げていく。

序盤に『遺伝子情報の収集と、個人情報の取り扱い』に関するインタビューを受けているシーンは、これの伏線。
オルン、ホルベルグ宅に忍び込む
ここのシーン、しれーっと後半に入ってくるので勘違いしがちですが…時系列的にはこのあたり。

侵入するため入り口のガラスを割った際、オルンは手を怪我。これが冒頭、子供がホルンベルグ宅に入る際に発見したガラスに付いていた血になります。子供がその場で怪我したわけではありません。

潜入している最中に帰宅し、オルンを追いかけて車のフロントガラスを割るのはホルベルグご本人(この時まだご健在)

家の周りをウロウロしていた時に「おーい、あ…人違いだ」となったのは、冒頭の現場中に通りがかったパイロットらしき制服の男。「怪しい男を見た」というのはオルンのことですな。
オルン、ホルベルグを殺害
ことの真相に気づいたオルンが実家を訪れた際…着替えている最中に息子が入ってきてしまい、可愛く恥じらう母親の仕草に興奮した人は私と同類の変態です。

オルンは真実を知った事を母に告げ、自分の父親はホルベルグであり、娘コーラを殺した遺伝子はホルベルグから受け継いだものだったと確信する。

その後ホルベルグのもとを訪れて自分が息子であることを告白し、その場の流れで灰皿アタックで殺害。

最初に侵入した時といい、この人現場に指紋やらDNAやら残しまくりなのよね。そのへんも冒頭で言っていましたな。
殺人事件発生
ここで映画的には出だしの『子供がホルベルグの死体を発見』のシーンに。

引き出しの裏の写真から警察はウイドルを調査。ウイドルは脳腫瘍により幼くして亡くなっていた。
その母親コルブリンもすでに自殺。

コルブリンの姉エーリンの話から、ウイドルはコルブリンとホルベルグの間の子とであると推測。
ホルベルグは悪党三人組(+当時まだ警官だったルーナル)で悪事を重ねており、レイプも日常茶飯事だった様子。
ウイドルの棺を掘り起こす
ウイドルの遺体から遺伝子を調べるため、墓を掘り返す。

ここで遠くから様子を伺い、エーレンデュルが後を追うも取り逃がした男はオルン。
あんな見晴らしの良いところでどうやって消えたんだ!?…というツッコミは無し。
脳を貰いに遺伝子研究所へ
ウイドルの遺体から脳が無くなっている事を知ったエーレンデュルは、保管されているであろう遺伝子研究所へ。

そこでオルンと対面。ウイドルの脳を受け取る。

…って、受け取るの!?しかも自宅に持って帰るの!?
羊の頭をモリモリ食うところといい、ちょっと日本人にはわからない感覚ですなぁ。
エーレンデュル、真相にたどり着く
ホルベルグ宅の地下に埋められていたグレータルの遺体。
それとともに隠されていた写真により、過去にホルベルグにレイプされたのはオルンの母親であったことが判明。
しかし実際は同意の上での不貞行為だった。

母親との会話と家にある写真から全てのピースが繋がり、ホルベルグ殺害の容疑者としてオルン宅に突入するも…オルンは不在。
オルンの決断
オルンは遺体安置所からウイドルの遺体を盗み出し、再び墓へと戻そうと掘り掘り。
エーリンの電話により駆けつけたエーレンデュルは『これも一緒にしてやらにゃいかんだろ?』とオルンにウイドルの脳を渡す。

オルンは自ら命を断つことで負の遺産(遺伝子疾患)を断つという結論に至ってしまい、エーレンデュルの制止も虚しく自決。妹であるウイドルと共に墓穴に倒れる。

なんと悲しい・・・って埋めるんかーい!!(笑)

個人的な戯言感想

…という流れでした。もっと細かく考察・解説できる部分もあるのですが、ざっくり感で。

明確な演出なく不意に過去のシーンが展開されるため、事の真相にたどり着くまでは「え?どういう事?」となる可能性がありますが…こういう作りだからこそ、真相を知った時に脳内ピースがバチバチ音と立てて組み上がる事になり、それが非常に快感でもあります。

やはりヨーロッパ系の作品は淡々としていながらも骨太で良いですなぁ。

こっち系の映画が大好きな私にとっては、久しぶりにどっぷりと浸って鑑賞できる良作品でございました。

それにしても…あちらの料理ってどれもこれもグロくて見た目マズそうですなぁ。「ドライブルスルーで羊の頭が買える」って、どんな国なんでしょう。最初はてっきり、行きつけの店の女性店員に対するオッサンジョークだと思っていましたよ…。