映画『トランス・ワールド』隠れた名作でネタバレ戯言

今回の1本はおそらくマイナーであろう『映画/トランス・ワールド』、低予算感が漂うB映画…と思いきや、予想を超える秀逸なストーリーが素晴らしい作品です。ラストまでの考察とネタバレを含みますので未鑑賞の方はご注意下さい。

「オチを知ってから見ちゃダメな映画」は数多くありますが、本作は特に「予告編」にも注意。本来は鑑賞前に見るはずの予告編で盛大にネタバレしすぎていて…見てしまったら面白さは八割減ですから。今回はネタバレ告知後に予告編動画を紹介しています。

トランス・ワールド
(原題:ENTER NOWHERE)


2011年 アメリカ

主なキャスト:

キャサリン・ウォーターストン
サラ・パクストン
スコット・イーストウッド
ショーン・サイポス

監督:ジャック・ヘラー
脚本:ショーン・クリステンセン、ジェイソン・ドラン

ネタバレ無しのあらすじ

人里離れた森の中にある小さな小屋。

『夫と移動中に車がガス欠になり、ガソリンを探しにいった夫を待つ妻サマンサ(キャサリン・ウォーターストン)』『同じく車の故障で立ち往生してしまったトム(スコット・イーストウッド)』はその小屋で出会い、共にサマンサの夫を待つ事に。

さらに『逃亡中の強盗犯ジョディ(サラ・パクストン)』が加わり、三人はどうにか飢えと寒さをしのごうとするだが…

…と、一見「ありがちB級シチュエーションスリラー」の雰囲気で始まりながらも、決してそのままでは終わらない作品。

注)予告編はネタバレを盛大に含んで作品をダメにするため、今回は下にあります

キャストで戯言

知っている俳優など出ていないのだろうな…と期待せずに鑑賞した本作。

…と思ったら、あれれれっ!?いきなりいるじゃないですか知っている人が。キャサリン・ウォーターストンですよっ。大好きです、私。

『映画/コレクター』で拉致されていた、ちょっぴり頭イッてる人ですよ(笑)

キャサリン・ウォーターストン
(C)2012 Dark Castle Holdings, LLC

そしてサラブレッド俳優なのに影が薄いスコット・イーストウッドもご出演。言わずとしれたクリント・イーストウッドの息子になりますが、彼はあっちにもこっちにも子種をバラ撒きすぎな気が…(判明しているだけで6人の女性との間に8人の子)

ついでにサラ・パクストンも出演しています。ええ、個人的には全く思い入れの無い女優ですので、ついでです。顔がダメです。


ここからネタバレを含むよ!!
本作は特に未鑑賞の方は注意!!

ダラダラの前半

オープニングの『執拗に女の尻を狙うカメラ』は極度の尻フェチにとって至福の極みだったのですが、残念ながらその尻の主はサラ・パクストンでした。…がっかり。

正直なところ、小屋に三人が集まり『この場所はおかしい』という流れに辿り着くまではダルい展開でした。セリフもちょっと安っぽい感がありますし、「出てけー」「出てくー」「やっぱり戻るー」「あんたがおかしいー」「いや、あんたがおかしいー」が繰り返される流れは『やはりB級映画だったか…』とげんなり。逆転は不可能にも思えるダラダラ感が漂います。

ところがどっこい。

そんな前半にもしっかりと伏線は張ってあり、なおかつそれを「伏線」と気付かせない自然な流れにしているところが素晴らしい。トムがサマンサの車に対し何気なく「いい車だね。クラシックだ」と言う部分など、これが大事な伏線だなんて思いもしませんでしたよ。

もはやキャサリン・ウォーターストンという『ちょっと古臭い雰囲気(と髪型)の女優』を使っている事すら、伏線として成立していそうな勢いです(笑)

そして『集まっている全員が、別の場所から来ている』という軽いジャブに続き、『集まっている全員が、別の時代から来ている』という驚きに繋げ…さらに追撃で『集まっている全員が、血縁関係(親子関係)で繋がっている!』という衝撃展開になる頃には、もう夢中で釘付け。

なんですかこの映画は。『低予算のB級ワンシチュエーション映画』なんて思った人は廊下に立っていなさい!…って感じですな。

どうでも良い話ですが『廊下に立たされる』って漫画やアニメ以外で聞いた事ないんですが、実際に立たされた事ある方います?

畳みかける後半

そんなびっくり要素でグイグイ引っ張りつつ、ハンスだけ言葉が通じない事にもどかしさを感じる後半。

ここまでネタをバラせばこれを埋め込んでも良いでしょう。お待たせしました予告編動画です。

まったく…この予告編を作った人は何を考えているんでしょうかね。ネタバレどころか、物凄く盛り上がるシーンまでバンバン入れちゃってまぁ…。マイナー作品には「そこまでバラすなよ!」と言いたくなるような予告編がチョイチョイありますよね。

…というわけで彼らは不幸な運命を変えるため、根っこの部分であるハンスを生存させようと頑張るわけです。そんな彼らの『人生を幸せに変えよう計画』の内容は…

ハンスを生き残らせる
ドイツ軍がなぜあんなトコを爆撃していくのかは謎ですが、とりあえず助けましょう
サマンサの母は再婚せず、事故死もしない
…とは決めつけられませんが、そういう事で。
母が生きていれば、サマンサに付き添える
…とも決めつけられませんが、やはりそういう事で。
サマンサが生きていれば、ジョディは母親の元で幸せな人生に
生い立ちって大事ですからね。うんうん。
ジョディがグレなければ、トムも不幸な生い立ちにはならない
…ん?…んんん?これはちょっとマズくない?

レベルの低い揚げ足取りを無しにすれば、しっかり辻褄の合った素晴らしい計画です。うん。しかし…最後…。ジョディはグレないと父親であるケヴィンとも出会わない可能性があるよ!?大丈夫?

そんな懸念が頭をよぎりつつも、トムが消えていくシーンは衝撃的で感動でした。このへんの畳みかけるようなグイグイ感、たまりません。

ラストを戯言考察

そして物語は終盤へ。

どうやら無事にジョディは生まれ、グレる事もなく人生を送っているようです。サマンサも無事でした。しかし…やはりトムは…。

彼の父親であるケヴィンは別の美人と組んで強盗を行っており、ジョディとは接点も無し。こうなってしまうとこの先ジョディに子供が生まれたとしても、それはトムではないんですよね…。

しかしさらに考えてみれば『変な小屋に時間と空間を超えて集まってしまった3人(ハンスはその時代の人)』が、そのまま元の時代と場所に戻ったというわけではなく、一連の流れの後に新たな生命として生まれてきているわけです。つまりあの小屋でアレコレした3人はもう時の流れから消えてしまっているんですよね…。

最後、無事に戦死する事なく篤志家となって亡くなったハンスの遺骨を抱き、サマンサとジョディが浜辺を歩く姿にエンドクレジットが流れますが、そこは何か寂しげな雰囲気も。

単純に「お爺ちゃん死んじゃったねー」の空気かもしれませんが、生まれてこなかった(生まれるはずだった)トムへ想いを馳せるような物悲しさも感じさせます。もちろんサマンサもジョディも「トムと頑張って未来を変えた!」という記憶はないはずなのですが、なんというか・・・魂が持つ記憶というか・・・そんな『理由はわからないけど、大事な人が欠けているような気がする』といった心情を感じました。

私は変人ですので、理解力不足による見当ハズレの可能性は高いですけど(汗)

個人的戯言感想

…というわけで。

なんですか、面白い映画じゃないですか。序盤だけ見て「売れないサラブレッドを使った、低予算B級ワンシチュエーション作品」なんて思ったのは誰ですか?網タイツの女王様にムチで叩かれてきなさい。予想外に気持ち良かったら延長コースを頼みなさい。

本当であれば、いつも下品で不謹慎『映画で戯言三昧』的に『まぁジョディは健全に育ったみたいだけど、夜道でケヴィンに無理矢理レ〇〇されて妊娠しちゃたりするかもしれんし。なんだかんだでトムも生まれてくるさー』とか言いたいトコだったのですが、この映画に対してそんな事を書くのはさすがに…ねぇ。