映画『タイム・チェイサー』考察クソ喰らえのネタバレ戯言

みんな大好きタイムスリップ、しかし矛盾も付き物タイムスリップ…というわけで『映画/タイム・チェイサー』でネタバレを含む戯言を。これがまた、ハーレイ・ジョエル・オスメントが主演でなければ人の目にすらつかないような作品だったり…。

タイム・チェイサー


2013年 カナダ

キャスト:
ハーレイ・ジョエル・オスメント
ヴィクター・ガーバー
ジリアン・アンダーソン
ルーファス・シーウェル
スザンナ・フォーニアー
ジョン・ポール・ラッタン

監督:リッチー・メタ
脚本:リッチー・メタ

ネタバレ無しのあらすじ

仕事で家を空ける父を、母と共に空港に見送りにきたエロル(ジョン・ポール・ラッタン)。

しかし父ガブリエル(ルーファス・シーウェル)は予定の日を過ぎても帰宅せず、二度と母子の前に姿を現すことはなかった・・・。

-それから12年後。

成長したエロル(ハーレイ・ジョエル・オスメント)は祖父(ヴィクター・ガーバー)より驚愕の事実を告げられることとなる。

「おまえの父はあの時、1946年へとタイムスリップしたのだ」

…と。

失った12年間を取り戻すため、「可愛い子役」から「胸毛ボーボーの珍獣」に変貌したハーレイが今、時を超える!

※予告動画は見せすぎなので注意

キャストで戯言

もはやキャストの話をするためにあると言っても過言ではないこの映画。

『映画/シックスセンス』『映画/A.I.』で話題をかっさらった子役、ハーレイ・ジョエル・オスメントがひどい劣化…いえ、成長を遂げて帰ってきました。

2003年公開作品『映画/ウォルター少年と、夏の休日』以降、大学入学やら飲酒運転やらマリファナやらで銀幕から遠ざかっていましたが、10年の時を経て再び映画界に復帰。その記念すべき復活作がこの『映画/タイム・チェイサー』というわけです。

その変貌っぷりに衝撃に受けた映画ファンも多いかもしれませんが、よくよく見ると顔の中心にちょこんと付いているのは紛れもなくあの顔。そこだけ変わらないクセに、それ以外があまりに変わってしまうというアンバランスな成長がこれまた複雑な気分にさせますなぁ。

彼以外でも、母親役のジリアン・アンダーソンはドラマ『X-ファイル』で有名な女優さん。しかしわたしゃ一度も見たことないので知りません。

父親役ルーファス・シーウェルも出演作品が多く知名度の高い俳優ですが、個人的には『映画/変態島』での「マグロ状態のエマニュエル・べアールに必死に腰を振る変態旦那」のイメージが強すぎて、まっすぐ彼の目を見ることができません。

考察もパラドックスもクソ喰らえ

数多くの映画作品で用いられている、タイムスリップ、タイムトラベル、場合によってはタイムリープなどと呼ばれる『時間移動モノ』

ファンも多いジャンルですが、なにせ『人間が時間軸を超えて移動する』ということ自体が現在の科学では不可能、あくまで理論や屁理屈などの『言葉遊びの中にのみ存在する現象』ですので、突き詰めていけば矛盾だらけ。

その矛盾をいかにして『理屈が通ってる(っぽい)形にするか』がタイムスリップ作品の見せ場であり、実に上手に脚本を練って納得できる形にしている秀逸な作品も多々存在します。

…が、この『映画/タイム・チェイサー』はそこらへんがヒドい。

必死にそれっぽい単語を連発してごまかそうとはしてはいるものの、おかしなセリフや矛盾する理論が多く、過去を変えたことによる現在への影響や時間軸の分岐に関する説明もおざなり。

『とりあえず難しい理論や理屈は「よくわからない」で流して、SFの雰囲気だけ味わおう』といった方であれば良いのでしょうが、しっかり考察しながら鑑賞したい方からすればツッコミだらけのエセSFと感じるのも止む無し。

まぁそもそも「父を連れ戻せさえすれば、この12年間が正しい形に戻る」という発想からしてどうかしていますからね。人生に「正しい」とか「正しくない」なんて概念はありませんし。

解釈と考察

…と、タイムスリップ作品としては残念感が漂うこの映画。

しかしこの映画の主題は決してそちらではなく、『人生における選択』『望まない境遇でどう生きるか』という部分が本当のテーマ。『時間軸の移動』はあくまでそれらを引き立てるスパイスでしかないのですな。

ところがどっこい、『タイムスリップ』というインパクト大の設定を盛り込んでしまったせいで肝心の部分がぼやけ、全体のバランスもおかしなことに。

とても奥深いテーマを扱っておきながら「繊細な味わいの料理に変なスパイスをかけてしまった」といった感じで、見ているこちらが上手に味わえない仕上がりになっているのが実に惜しいところですな。

これならばいっそ非現実的な要素は排して、とことん人間ドラマに焦点を当てたほうが良かったのでは…とも。そうすればハーレイ・ジョエル・オスメントの顔芸とも言える「なんともいえない切ない表情」を存分に堪能できますし。

個人的な戯言感想

というわけで、『タイムスリップ作品である』という視点で見ればツッコミとダメ出ししか出てこない『映画/タイム・チェイサー』ですが、肝心のテーマだけに焦点を絞ればそう悪くはない。

長年の夢を目の前にして、家族のためにそれを捨てる事ができるのか…。「あたしと仕事とどっちが大事なのよ!」ってのは、よく聞くセリフですなぁ。私は言われたことありませんけど。

主題は悪くないので、もっと違う方向から上手に仕上げてさえいれば、そしてハーレイ・ジョエル・オスメントではない俳優を使っていれば…というのが個人的な感想です。

いやいや、決して彼は悪くないんですよ。背が伸びなかったり太ったり、毛が濃くなったりしたのは仕方のないこと。これからは昔のイメージを捨て、もっと違う方向で起用したほうが彼の新たな魅力を発揮できると思うのですよ。

『変態小児性愛者』の役とか、ドハマリっぽいじゃないですか。