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映画としてはB級に分類されそうな『映画/ウェア-破滅-』、個人的には高評価なのですが、やはり知っている人は少ないようで。あらすじ&ネタバレを含むので未鑑賞の方はご注意下さい。

しかしなんだね、この「-破滅-」って。センスのない余計なサブタイトルを付けたがる…ってのは邦題を考える人間の悪いクセですが、なぜここに破滅・・・。

なお現在手に入るのはレンタル落ちの中古ばかり。セル版新品は手に入らないかもしれんので、観たい人は動画配信サービスで探しませう。

ウェア-破滅-
(原題:WEA)


2013年 アメリカ

主なキャスト:

A・J・クック
サイモン・クウォーターマン
ブライアン・スコット・オコナー
セバスチャン・ロッシェ
ヴィク・サハイ

監督:ウィリアム・ブレント・ベル
脚本:ウィリアム・ブレント・ベル、マシュー・ピーターマン

ネタバレ無しのあらすじ

とある夜・・・7歳の子供を含む親子3人が正体不明の獣に襲われる事件が発生。

しかし警察が容疑者として逮捕したのはタラン・グウィネック(ブライアン・スコット・オコナー)という大男だった。

タランの弁護を担当する事となった女性弁護士ケイト(A・J・クック)は元恋人の動物学者ギャビン(サイモン・クウォーターマン)を呼び寄せ、彼の無実を証明しようとする。

調査を進めた結果、タランは「遺伝子的な要因による疾患」を抱えており、犯行は不可能だったという可能性が浮上。

どうにか医学的調査でそれを証明し、彼の無実を立証しようとするケイトだが、事態は思わぬ方向へと・・・

・・・といった内容で、「毛深い男はキモーイ」とか言う女子はすっこんでろな作品。

ジャンプスケア、嫌い

まず最初にこれだけは言っておきたい。

とにかく本作を鑑賞していて最初から最後まで気になるのが、映画やドラマでよくある「不意に大きな音で脅かす」という古臭いアレ。『ジャンプスケア』と呼ばれる手法ですな。

まぁスリラーやホラーには付き物っちゃー付き物なので、1回や2回なら我慢しますよ。しかしこの映画は多用しすぎ。

「急に石がドーン!!」「動物がバーン!」「腕がドーン!」「コウモリがブワー!!」

もう何かあるたびにいちいち「どう?驚いたでしょ?」とやられてもねぇ。

たしかに反射的に「うわっ!」とはなることはありますが、ここまで繰り返されるとうんざりしてきますな。そもそもわし、ジャンプスケア大嫌いなんですよ。

世には『効果的でハイレベルなジャンプスケア』ってのも存在するので、そういうのは良いんです。演出としてOK。

しかし本作のように『デカい音を出しゃショッキングな感じになるだろ』的な、低レベルな使い方は勘弁して頂きたい。


そう来るのはわかっていたぞっ!

リアル系サスペンスだと思ってたら、予想外にモンスター系スリラーだったー!・・・という映画はちょいちょいありますな。前回書いた「映画/アイム・ノット・シリアルキラー」もそっち系でしたし。

しかしこの「映画/ウェア」はパッケージからもうネタバレ。

警察官による利権絡みの汚職がどうのこうの・・・という展開になってきても「いやいや、そんなリアルな話ではない事はお見通しだっ!」と、モンスター系に曲がっていく事は想定内。

まぁ予想以上の曲がり方でしたけど。

…というわけで、リアルじゃなくなったところから少し追ってみましょうか。

タラン逃走

心の準備通り、やはり人間ではなかったタラン。その彼の逃走からギャビンの覚醒までは若干中だるみゾーンですな。

めちゃくちゃダルい…といういわけではないのですが、なんというか特に盛り上がりに欠けるというか・・・。相変わらずチョイチョイ入れてくる「急に大きな音でバーン!!」の演出もウザく、少し気分が冷めてしまうのも残念。

ところがギャビンが覚醒してくるあたりからグイグイくる加速感がスゴい。やだなにこれ。

とにかくギャビン役、サイモン・クウォーターマンの演技がタマランチ会長なのですよ。

最初に出てきた時は「眼鏡のモヤシっ子」みたいな雰囲気だったのに、別人のような変わりっぷりでグィネック夫人も容赦なくフルボッコ。コレ、大丈夫?『女性をブン殴る描写』があると、そりゃもう面倒臭い団体から面倒臭い抗議が殺到すると聞いたことがあるんだけど・・・。

まぁそういう頭のおかしい輩が主張しているのは『男女平等』という名の『女性優遇』だし、放っといても良いですかな。…とか書いたらわしまで面倒臭い事言われるんでしょうなぁ。

オチはまぁまぁ

物語終盤に展開されるタランvsギャビンのくだりは、ちょっと好き嫌いが分かれるかと。

なんだよー、ただのモンスターアクション映画になっちゃったよー・・・・とガッカリした方も多いかもしれません。

わたしゃ前述のとおりギャビンの変貌っぷりに夢中だったので、このへんはすんなり見ることができました。

なお『なぜピストール(警官)はケイトを撃ったのか』『誤射』だと勘違いしている方がいるようですが、アレは「利権絡みでタランの父を殺した」という事実を覆い隠すため、どさくさに紛れて消そうとしたのでしょう。ケイトは核心に迫りつつあったので。

まぁ結果的にケイトは死なずに済んだようですし、ギャビンも無事。彼が完全に治療されたのか、それともまだ感染したままなのか・・・明確に描かれてはいませんが、私は後者ではないかと思っています。

この最後のインタビュー時の彼も、最初の眼鏡モヤシとはまるで別人の雰囲気でしたなぁ。

一度覚醒したことでこの雰囲気になった・・・という表現なのでしょうが、髪がしっかりと生えているので撮影は『覚醒シーン前』に行われたと思われます。

スゴい俳優だなぁ、サイモン・クウォーターマン。

しかし彼、他に出演作品があまりないんですよね。ドラマシリーズ『ウエスト・ワールド』にも出ていましたが、あれは役どころが少々もったいなかった。もっと彼の魅力を引き出す映画で再会したいものですな。

超個人的な戯言感想

というわけで。

サイモン・クウォーターマン抜きで考えれば、映画としては・・・まぁ及第点くらいですか。A・J・クックも魅力的ですし。

物語終盤、タランに押し倒された彼女はとても色っぽくてもうハァハァですよ。

狼男を単なる『空想上のモンスター』とはせず、やや中途半端ではあるものの遺伝子的な方向から捕えようとした点も面白い。

そしてカメラワークがとても良い。中だるみの部分も、うんざりするバーン!!演出も、この秀逸なカメラワークのおかげでどうにか飽きずに見ることができました。

けっこうマイナー作品なので見つけるのは難しいかもしれませんが、まだ未鑑賞の方がいれば、ぜひ御覧になっていただきたい1本ですぞ。ただし、毛深い男がキモいとか言っている女はやめたほうが良いかと。そりゃもう毛祭りみたいなもんですので。