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タイトルだけではどんな映画なのか想像もつかない「映画/ロブスター」ですが・・・作品内容も一言では説明できないような世界観ですので、想像とかのレベルをすでに超えています(笑)

とにかく観てもらう以外に説明ができない、不思議な映画です。

そしていったいドコのジャンルに分類して良いのかも苦しむ映画です。

ロブスター
(原題:THE LOBSTER)


2015年 ギリシャ・オランダ・フランス・アイルランド・イギリス合作

主なキャスト:

コリン・ファレル
レイチェル・ワイズ
レア・セドゥ
ベン・ウィショー
ジョン・C・ライリー
ジェシカ・バーデン
アシュレー・ジェンセン

監督:ヨルゴス・ランティモス
脚本:ヨルゴス・ランティモス、エフティミス・フィリップ

ネタバレ無しのあらすじ

独り身であることが「罪」とされる世界。パートナーのいない者は「ホテル」と呼ばれる施設へと送られ、そこで45日以内に相手を見つけなければ動物に変えられてしまう・・・。

妻と別れてしまったデヴィッド(コリン・ファレル)も、その決まりに従いホテルへ送られる事となった。

そこで大事なのは自分と「共通点」を持った相手を探す事。

努力してパートナーを見つけようとするデヴィッドだが、うまくいかずに施設を逃げ出す事になってしまう。

そしてたどり着いた森で彼を待っていたのは「生涯独身者」であることを選んだ者達の集団だった・・・。

・・・という内容の作品。

キャストで戯言

まず最初にお詫び申し上げたい事があります。この映画の主演、コリン・ファレルです。

彼に関しては今までさんざん「下品で田舎臭い演技が嫌い」なんて事を書いてきましたが・・・誰これ!?コリン・ファレルなの??

てっきりマギー司郎かと思いました(笑)

こんな演技も出来るんですね、彼は・・・。眼鏡を取ると「あ、やっぱりコリン・ファレルか・・・・」と少しテンション下がりますが、全編通して今まで感じていたような下品さや田舎臭さがない。おみそれしました。

全国のコリン・ファレルファンの皆様に、謹んで今までの無礼をお詫び申し上げます。。。

そしてベン・ウィショーが出演していたのには驚きました。彼が出ているとは全然知らなかったもので・・。思いがけないボーナスです。

あまり有名ではない俳優ですが、ジェシカ・バーデン(鼻血を出す女)が出演していたのも嬉しい誤算。

総じてキャスティングに関しては大満足でした。

解釈や考察を並べる映画ではない

この映画は「意味がわからない」という感想をもった方が多くいるようです。

作品中に出てくる会話の意味や、行動の意味、何を表していたのか・・・などなど、理解できない点があった方もいるかと思います。

そういった点を全て「あの会話は〇〇〇を表しています」とか「この行為は〇〇という事で、〇〇を意味しています」などと解説するだけなら簡単なのですが・・・この映画はそういう作品ではないと思うのです。

ものすごく乱暴な言い方をしてしまえば、意味を理解できないような人が観る映画ではない・・・と。

これは決して理解できないことをバカにしているわけではありませんし、理解できる事に優越感を感じているわけでもありません。

向き不向き、というか・・・「血を見ると具合が悪くなる人」はスプラッタ映画を観ないほうが良い・・・とか、「悪ふざけが大嫌いな人」がバカで下品なコメディ映画を観ても楽しめない・・・とか、そんな感じです。

この「変な世界感と変な常識」を、単純に「意味がわからない」で終わらせてしまう人には楽しめない映画です。

なおR15+指定がついていますので、お子様にも見せないようにしましょう。

ごく当たり前のようにセッ〇スという単語が連発されますし、性行為関連の話も自然に盛り込まれています。

ここからちょっとだけネタバレを含むよ!!

無限に広がる解釈

この作品世界の「常識」は、私たちの思う「常識」とはかけ離れている部分が多々あります。

ホテルでの「45日以内にパートナーを見つける事」などのルールは良いとして、それ以前に社会に浸透している常識が違う。

その中でも、伴侶を見つけるための条件となっている「相手と自分に共通点を見出す」という点。

これにはイロイロ考えさせられました。

たしかに「同じ趣味」や「同じ価値観」を持っている事は大事だと思いますし、夫婦生活を上手くやっていく為に役立つとも思います。

ただし実際は「共通していたほうが良い点」「異なるからこそ良い点」ってありますよね。

私はかなりの変人思考なのですが、カミさんがマトモな思考なので助かっている部分が多々あります。彼女も私と似ていたならば、ウチは回覧板も回ってこないような家になってしまいます(笑)

しかし、自ら顔を打ち付けて鼻血を出してまで「共通点」を作り出したジョン(ベン・ウィショー)や、必死に無感情・冷酷を演じてまで伴侶を見つけようとしたデヴィッドなど、この世界では「相手と共通点がある」という事は絶対条件。

どこかの誰かが勝手に決めたようなルール・常識を、疑う事もなく自らの常識として受け入れて生きている。そこに疑問を感じる者は、異端者として裁かれる。

あれれ・・・私たちの世界とさほど変わらない気が・・・。

しかし「動物に変えられる」という点まで含めて考えると・・・単純に「人間社会の常識」がどうのこうのという話だけではなく、人間と動物の共存の在り方、つまり「人間が勝手に決めたルール・常識で生きることを義務付けられている動物達」という事まで解釈を広げる事もできます。

・・・とにかくもう、考え始めたらキリがないんです。この映画。

「あの部分は〇〇〇に対するメタファーである」とか「デヴィッドのあの行動は〇〇という事を意味しているのだろう」とか・・・映画評論家きどりの人間に語らせたら、それはもう面倒くさい事になる作品です(笑)

そして「これが答えである!」というものが決まっていない映画でもあると思います。

なにかにつけて「正しい答え」を決めつけたがる世の中ですが、映画の解釈は100人観れば100種類あって当然。特にこの映画はその傾向性が強いと感じました。

この映画に対して主演のコリン・ファレルは、

『ロブスター』を観たとき、心が震え、感動した。
いまだに映画のすべてを理解できているわけではないが、 ヨルゴス(監督)は1つの価値観を観客に押しつける監督ではないんだ。

と述べています。

やはり私なんぞが偉そうに解釈や考察を述べる映画ではない、と思うのです。

・・・という事で、低レベルに戯言で楽しむよ!

ロブスター

動物に変えられるとしたら、皆さんは何が良いですか?

デヴィッドはこの映画のタイトルともなっている「ロブスター」を希望していました。

なぜロブスターを選んだかについて「100年以上生きられる」「死ぬまで生殖能力がなくならない」など挙げていますが・・調べてみたらホントに100年以上生きるんですね、ロブスターって。中には140年以上生きている個体もいるそうです。あくまで体重からの推測らしいですけど。

魚介類大好きな私は大好物です、ロブスター。

食卓に並ぶロブスターは30cm前後ですが、アメリカン・ロブスターには体長120cmを超えるものもいるそうですよ。なんじゃその化け物は。

ちなみに・・・私が「何になりたいか、動物を選べ」と言われたら、迷わずカラスを選択します。

生まれ変わりというものが本当にあるのだとしたら、来世は絶対にカラスに生まれたい。人間はもうコリゴリです。

コメディ

この映画の本質はコメディである、と言われています。もちろんそれに対して「いや!断じてコメディなどではない!!」と思うのも自由。この映画はすべてが自由です(笑)

しかしデヴィッドが「情のない女」をパートナーとして選び、必死に感情を抑えて夜の営みに励む姿は・・・滑稽さがあふれていて良かったです。つらいなぁ・・アレの最中も感情を抑えなければならないのか・・・。

犬のくだりはちょっと笑えませんでしたけど。。。

そういえば声を出して笑ってしまった場面も1ヵ所ありました。独身者集団のダンスナイトで、一人変なダンスを踊る女(ホテル側に潜入していた女)です。

なにその独創的すぎるダンス!?

ヤバいです、あの動き。おもわず何度か巻き戻して、マネて踊ってみました(笑)

映画好きなら必見

大手映画批評サイトRotten tomatoesでのこの映画の支持率は91%。非常に高く評価する声も多く聞かれます。

ベタベタでわかりやすい勧善懲悪映画が大好きな「普通の日本人」には受け入れ難いかもしれませんが、本当に映画が好きな人であればツボにハマる作品だと思います。

まだ観ていない方がいれば、ぜひ観ていただきたい。

たとえ文章で全てのあらすじを読んだとしても、この独特の世界観は伝わりません。とにかくその目で観て、感じてください。

そのうえで「意味わかんねぇよ。つまらん!」と思ったのであれば・・・おすすめしてごめんなさい、と言うしかありません(笑)