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今回の1本は…映画通っぽく言えば「実に奥深い作品」、素人感で言ってしまえば「よくわからない作品」、そんな『映画/ミッシング・レポート』です。ネタバレ・独自解釈を含みますのでご注意を。

普段は10年落ちくらいの映画ばかり観ているのですが「ガイ・ピアースって今はどんな感じになったのだろう…」という興味から、珍しく新しい作品を引っ張ってきてみました。

ミッシング・レポート
(原題:Spinning Man)


2018年 アメリカ

主なキャスト:

ガイ・ピアース
ピアース:ブロスナン
ミニー・ドライヴァー
アレクサンドラ・シップ
オデイア・ラッシュ

監督:サイモン・カイザー
脚本:マシュー・オルドリッチ

原作はジョージ・ハラの小説「Spnning Man/悩み多き哲学者の災難」

ネタバレ無しのあらすじ

大学で哲学を教えているエヴァン(ガイ・ピアース)は、妻と二人の子供達と共に平穏に暮らしていた。

そんなある日、一人の女子学生が行方不明に。現場付近から彼の車が目撃されたという証言がありエヴァンは取り調べを受ける事に。

断固として無実を主張するエヴァンだが、捜査が進むにつれて彼自身の秘められた過去が次々に明らかになっていく。

果たしてエヴァンの「記憶」は真実なのだろうか?女子学生の行方は?

・・・といった内容の作品。

キャストで戯言

本作品は狙ったかのようなダブル主演、ガイ・ピアースピアース・ブロスナン「Wピアースコンビ」です。

もうキャスト紹介はまとめて「ガイ・ピアース・ブロスナン」で良かった気もしますな。

注)ガイ・ピアースの『ピアース』は『Pearce』、ピアース・ブロスナンは『Pierce』なので、英語表記ではまとめられません。

ガイ・ピアースで記憶うんぬんとくれば、もう嫌でも『映画/メメント』が浮かんでしまいますが・・・本作品でもまるでそちらを意識したかのような設定があり、見ていてメメントるったらありゃしない(笑)

それにしても彼はなんというか・・・ギラギラが抜けちゃいましたなぁ。本作品の役どころのせいもあるかもしれませんが、ショボくれたおじさんのようです。

そしてピアース・ブロスナンもしっとりしたオジサマになってしまって・・・。胸毛ムンムンのフェロモンむわむわだった頃の雰囲気がまるで感じられません。

この「枯れたオッサンコンビ」のような雰囲気が作品の空気と実にマッチしていて、じっとり淡々とした物語の流れをなおさら抑揚のないものにしています。それが良いのか悪いのかは別として。

奥さん役はミニー・ドライヴァー。特に個人的に思い入れはありません。ここで変に美人すぎる女優を使っていないところも、ますますこの映画の地味な雰囲気を加速させていますな。

どうでも良い話ですが、彼女は『映画/もののけ姫』のアチラ版で、エボシ御前の声を吹き替えしているそうで。いや、ホントどうでも良いですけど。

…と、ついでにもう一人。

イロイロ関係がありそうな女子学生役のアレクサンドラ・シップ。『映画/X-MEN アポカリプス』のストーム役に抜擢された事で注目を集めた、あの彼女です。

ちょっと好みが分かれる顔立ちではあるものの、本作品では可愛らしい女子学生を演じています。…しかし彼女はこの映画公開時でなんと26歳!四捨五入すると・・・・怖っ。

劇場公開無し!

本作品は日本での劇場公開はありませんでした。

DVDが2019年4月発売ですので、観たい方はレンタルもしくは購入、または動画配信サービスを利用する事になるかと思います。

私はU-Nextでの鑑賞になります。

動画配信で観て「面白いっ!!」と思った作品はDVDを購入し、永久保存しながら何度も何度も観るというスタイルをとっているのですが・・・この『映画/ミッシング・レポート』は買わなくてもいいかな・・・と(笑)

なにせかなり手ごわい相手ですもの。なんといっても『哲学』がテーマとなっていますから。

私個人としては哲学は大好きなので、いろいろと考察しつつ面倒臭い話をしたいところではあるのですが『いつもニコニコ・くだらないバカ話』がウリの「映画で戯言三昧」としては、どうにかして尻や変態やおっぱいの話に持っていきたいところです。

とりあえずこの映画についてアレコレ書く前に、まずはしっかり勉強しないと…と思い「ゼノンのパラドックス」「ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン」についてじっくり勉強してみたのですが・・・

やっぱり尻や変態とは関係のない、面倒くさい内容でした(笑)


ここからネタバレを含むよ!!

やったの?やってないの?どっち!?

とにかくこの映画は「本当のところはどうなの?」をモヤモヤさせながらストーリーが展開していきます。

肝心の「女子学生の行方」の部分が謎なのは良いのですが、それ以外の部分でもとにかくモヤモヤ。

エヴァンは誠実なのか淫行野郎なのか・・・なぜ奥さんは常につっかかってくるのか・・・

随所に謎を孕みつつストーリーが進むのはサスペンス・ミステリーでは定石なのですが、なんかこう・・・それ以上にモヤモヤした感じが漂います。

その原因ともなっているのがエヴァンのブレっぷり。彼、記憶がちょっとメメントってる人なんですもの(笑)

嘘をついて隠しているというわけではなく、本当に自分でもわかっていない。

そんなことしたっけ?いや、していないはずだ!
・・・え?してた?ああ、そういう事もあった!今思い出した!

このノリを素でやってくるので全然わかりません(笑)エヴァンという人間が見えてきません。しかしそこがまた面白いところでもあります。

女子学生とウッハウハ

実際にそういった職業に従事している方からすれば「そんな良いもんじゃない」と思うのでしょうが・・・やはり私のように「若い女子との接点など皆無」の仕事をしている者からすれば、女子学生に囲まれて「せんせ~」なんて呼ばれるような環境は夢の国。まさにユートピアのように感じます。想像しただけでヨダレと何かが垂れてきます。

エヴァンはそんな環境にありながらしっかりと妻子を愛し、愚かな誘惑などには応じない人格者・・・という流れで物語は始まっているものの、やっぱりヤッていたらしいという事が徐々に明らかになっていきます。

しかも工具店でまで淫らな妄想に耽る始末。

この部分、ただ単に「うほっ、可愛い子。こんな子と店内であんな事やこんな事を・・・」というエヴァンの妄想なのでしょうか。

私はとりあえず「妄想である」とし、彼が本当はそういった淫らな欲望を抱えている人間だ…と解釈して進みましたが、考え方によっては「過去にエヴァンが行った行為の記憶(の断片)」とも考えられます。

とにかくイロイロな解釈を可能とする作り方になっているので、非常に面倒くさいです。

マッチ

作品中で重要なアイテムとして描かれる紙マッチ。

最後までこのマッチがなんであるのかは明確にされないままでした。わかっているのは中にメッセージが書いてある事と、このマッチは4年以上前のものであるという事。そしてエヴァンは理由があってこのマッチを持ち続けているという事です。

これは人によって解釈や考察が大きく分かれる部分だと思いますが・・・

あくまでも私個人の解釈としては、過去にエヴァンが犯した過ちに関わるものであり、その戒めとして常に持ち続けているもの・・・という感じで落ち着きました。

もちろん『失踪した女子学生』とは無関係、引っ越す原因となったエバンストンでの一件とは関係があるのかもしれません。

なにせ私の脳ミソは8割が「尻と下ネタ」で占められているので「いやいや、何を見当違いの事を!」と思われる方もいると思います。ぜひ他の方の考察を聞いてみたいです。

『映画』ではなく…

この『映画/ミッシング・レポート』は『映画』という形をとってはいるものの、エンターテイメントとしての映画ではなく・・・私には『哲学を映像化』したものだと感じます。

そこにあるのは『真実』『罪悪感』

普通に映画としてストーリーを追い、謎を追っていくような鑑賞をしてしまうと、なんともスッキリしない映画になってしまうと思います。

「なにが真実なのか?」で考えるとモヤモヤ三昧ですので、この映画はさらにその先、「そもそも真実とは何をもって真実とするのか」の部分にまで踏み込んで考える必要があります。

自分の解釈による事実を「真実」とするのか、それとも自分が記憶している事を「真実」とするのか…

その「真実」が存在している事を証明するには…言語を弄して「真実」を体現するには…

作品中にこれでもかと散りばめられた哲学メッセージを鍵としつつ、自分なりの「真実」にたどり着く必要があります。

そう考えると、こうやって映画というものを論じる事自体にも繋がってくる気がしてきました。私なりの解釈での「この映画の真実」というものはあるものの、それを文字(言語)にすることによって矛盾するような形にたどり着いてしまう事は多々ありますし…。

といった感じで…アレコレと屁理屈をこねくりまわして奥深そうな事を語りたい方には、うってつけの映画となっています(笑)

単純明快に「映画」を楽しみたいのであれば、あまりお勧めできませんが・・・たまにはこんな作品でモヤモヤした気分になるのも悪くないですよ。