【当ページには広告が含まれています】

映画ファンに惜しまれながらこの世を去った名優ヒース・レジャー主演の『映画/悪霊喰』でネタバレ含む戯言を。…というかなぜこのタイトル?原題のまま『THE ORDER』でも良いし、日本語にしたいならば『罪食い』で良かったのでは…。

悪霊喰
(原題:The Oreder)


2003年 ドイツ・アメリカ

主なキャスト:
ヒース・レジャー
シャニン・ソサモン
マーク・アディ
ベンノ・フュルマン
ピーター・ウェラー

監督:ブライアン・ヘルゲランド
脚本:ブライアン・ヘルゲランド

ネタバレ無しのあらすじ

ニューヨークで司祭を務めるアレックス(ヒース・レジャー)のもとに、彼の師でもあるドミニク修道士がローマで自殺したとの知らせが届いた。

真相を究明するためローマへと渡ったアレックスは、ドミニクの遺体と自殺現場から「なんらかの儀式が行われた」と推測。仲間のトーマス(マーク・アディ)とアレックスを慕う女性マーラ(シャニン・ソサモン)と共に捜査を進めることに。

やがてドミニクの死には『シン・イーター(罪喰い)』が絡んでいる事が判明。シン・イーター(罪喰い)とは、人間の『罪』を喰う事で死にゆく者の魂を救済する、教会にとっては忌まわしき存在だった。

アレックスはシン・イーターであるイーデン(ベンノ・フュルマン)と対面し、ドミニクの死の真相を知ることとなるののだが…。

・・・といった内容の作品。

注)動画は予告編ではなく本編一部カット・英語版となります。

キャストで戯言

『映画/Dr.パルナサスの鏡』を遺作としてこの世を去ってしまったヒース・レジャーが主演。本作は彼が映画俳優として活動していた期間のちょうど真ん中あたり、有名な『映画/ダークナイト』から5年前の作品となります。見た目もまだ若いですな。

彼以外に日本国内で超有名と言える俳優は出演していないものの、それなり~に名の知られた作品に、それなり~の役で出演しているような人がチョイチョイ。

個人的にはマーラ役のシャニン・ソサモンはけっこう好きな女優です。『映画/キスキス,バンバン』で変な色の頭をしていたり、新しめの作品ならば『映画/ザ・デイ』で微妙に性格悪かったりする人です。

なおヒース・レジャーのハリウッド初主演作でもある『映画/ROCK YOU!』でも、ヒース・レジャーシャニン・ソサモンマーク・アディ(トーマス役)の三人が出演していたりします。

そもそも『罪』とは…

ジャンルとしては『ホラー』に括られているこの『映画/悪霊喰』、しかし日本人が見てもさほど怖くない。どちらかというとスリラー寄りな作品と感じられます。

本作における『恐怖』の質が、一般的なそれとは大きく異っている…というのもその理由の一つ。

まず『罪』とは大きく分けて2種類あり、『法律的な罪』『精神的・宗教的な罪』とに分かれます。これ、日本人は後者の概念がほぼ無いんですな。

私がランチに豚肉を食べても全く罪には問われませんし罪悪感もありませんが、もしイスラム教であればそりゃもう大変な罪。

本作のシン・イーター(罪喰い)が喰うのは法律的な罪ではなく、『宗教的な罪』のほうになるわけです。

…となると、こりゃもうヤバい。教義に反しようと、どんな罪を犯そうと、「お願い!シン・イーター!」で天国へと行けるわけですから。もはや信仰そのものを否定するような存在。これは敬虔な信仰者にとっては恐怖以外の何者でもありません。

日本人は大半が信仰というものに馴染みが薄いため、ここが理解しづらい部分なのですな。

これをちょっと前者の『法律的な罪』のほうに置き換えてみると…

あなたが裁判官や検事など法律を遵守する立場にあるとします。警察官でも良いでしょう。しかし…泥棒しようと強盗しようと、可愛い少女を拉致監禁してアレとかコレとかした挙げ句に殺害しようとも…「お願い、シン・イーター!」でその人間はチャラ。無罪です。…ヤバいでしょう?そんな存在があってはならないと思うでしょう?

それが本作が描く『恐怖』というわけです。誰ですか、「そりゃイイ!ぜひシン・イーターに頼みたい!」とか言っている人は。今すぐに自首しなさい。

ここからネタバレと戯言を含むよ!!

序盤微妙、しかし中盤からは…

…というわけで映画内容のお話に。

そのタイトルから「怨霊系ガチホラー」を期待した方もいるかと思いますが、私はそっちではなく…いやーなんと言いますか、正直もっと『大人向け』の内容と描写を期待していたんですよね。ですから前半は正直萎えたと言いますか…。

イケメン・美人・三枚目、の三人組で真相を追う!ってトコからちょっとアレだなぁと思ってみれば、怪しい地下施設にいる闇の権力者(という存在がすでにちょっと…)は「あんたそれ本気?」と言いたくなるようなマヌケな黒子頭巾姿。

もちろん設定が設定ですから「もっとリアルにしろ」とは言いませんが、もう少し現実感が欲しかったなぁ…なんて。

まるで少年マンガを実写化したみたいじゃないですか…(汗)

しかしそこさえ受け入れる事ができれば、中盤からは面白さが一気に加速。シン・イーターの秘密が明らかになるにつれてどんどん引き込まれ、アレックスを後継者とするため、彼の両親の死、ドミニク修道士との関係、マーラとの出会いと別れ、その全てが仕組まれていた事だった!のくだりはゾゾゾッときました。

ついでにショボい黒子頭巾が実は枢機卿だった!もなかなか衝撃的。最初に出てきた時に、ちょっと声が似てないか?とは思いましたけど。

罪喰いビギンズ

漫画チックなノリに不安を感じたものの、最後まで鑑賞してみれば全くの杞憂。非常に奥深く面白い映画でございました。

単行本10巻分を1話にまとめたような早足感もありますが、決して薄っぺらくなっているわけでもない。

最終的に「新たなシン・イーター」となったアレックスもカッコ良いですし、単に罪を喰うだけではなく「許す者と許さぬ者を選ぶ」というのも良いですなぁ。

まるで本作が『罪喰いビギンズ』で、ここから本編の『罪喰い』シリーズが始まる…のような締め方もニクい。ぜひこの後の「罪喰いとして生きるアレックス」も見てみたかったですなぁ…。