パッと見はB級、しかし予想外に楽しめる隠れた名作『映画/アンキャニー 不気味の谷』、ラストのネタバレを含みますので未鑑賞の方はくれぐれもご注意を。
それにしてもこのジャケットのダサさはなんですか。『上半身裸の春日の上に安っぽいフォントで安っぽいキャッチを並べる』というイモ臭い仕上がりに、残念を通り越して眩暈がしてきそうです…。
アンキャニー 不気味の谷
2015年 アメリカ
主なキャスト:
マーク・ウェバー
ルーシー・グリフィス
デヴィッド・クレイトン・ロジャーズ
監督:マシュー・ルートワイラー
脚本:シャヒン・チャンドラソーマ
ネタバレ無しのあらすじ
高度な人工知能を搭載し、外見も人間と見分けがつかない人造人間アダム(デヴィッド・クレイトン・ロジャーズ)と、それを製作した天才工学者デヴィッド(マーク・ウェバー)
一週間にわたり美人記者ジョイ(ルーシー・グリフィス)の取材を受ける事となった彼らだが、彼女の存在が少しづつ二人の歯車を狂わせ始める…
・・・といった内容の作品。
注)予告編動画は英語版
不気味の谷現象とは…
サブタイトルともなっている『不気味の谷』ですが、これはロボット工学者でもある日本人「森政弘」が企業誌にて提唱したもの。
物語中でもこの言葉は登場し、森政弘という名も出てきます。
ざっくり説明すると『ロボットがより人間的に近づくほど接する人間は好印象を持つが、それがある一定以上になると急に嫌悪感に変わる』というもの。
ロボットが人間ぽくなるにつれてぐいーっと好感度が上昇していき、急に不気味さを感じてストンと落ちる。そして再び上昇する。グラフにするとこのストンと落ちる部分が『谷』なので『不気味の谷』です。
『人間のようなロボット』ならば可愛いが、それがあまりにも人間に近づきすぎると『ロボットのような人間』にも見えて不気味…という捉え方でも良いかと。
注)この『不気味の谷』に関してはロボット工学者の間でも反論や否定的な意見があります。
ここからラストのどんでん返しとネタバレを含むよ!!
ラストのネタバレ
注)本当の名前は逆でしたが、記事名では以下映画の流れに従ってメガネを『デヴィッド』、本当は人間だったほうを『アダム』と記載します。
もう登場からロボット臭い挙動のアダム。
案の定すぐに彼は『人工知能を搭載した人造人間である』という事が明かされ、その後は『天才(変人)工学者と人造人間と美人記者』という三角関係のような流れで物語が進み、最後にエイヤッ!どんでん返し!
実はアダムのほうが人間でしたっ!!
…という驚愕のオチに至るわけです。
この展開はかなり早めに予想できた方も多いと思いますが、途中で何度も「いや、違うんじゃないか…」と思わせるような(ちょっと卑怯な)やりとりを挟みますので、予想しつつも楽しめる流れなのではないかと。
デヴィッドも天才かつ変人なのでだいぶ人間とはズレた空気を持っていますし、『人間っぽいロボット』と『ロボットっぽい人間』の二人がジョイという存在によって共に人間に近づいていく…という視点で見てもなかなか面白い。
オチが読めても読めなくても楽しめる映画というのは少ないですので、多少ツッコミどころはあるものの良い脚本だと思います。人によって評価は分かれそうですけど。
最後の最後、エンドクレジットを挟んで流れるオマケもなかなか衝撃的。まさかそんなものを仕込んでおくとは…怖いですなぁ。
最初のうちは「せっかく人造人間を作って一緒に暮らすなら美人な女型一択だろっ!?なんでこんなヒゲ面のオッサンにしちゃったんだよ!」と思ったりもしましたが、この「真の主目的」のためだったのかもしれませんな…。
エクス・マキナ
ちょっと余談で…これはおそらく同様に感じた方もいるかと思いますが、私も『映画/エクス・マキナ』に似てるなぁ…と思いました。
人造人間の名前はアダムで、あちらはエヴァ(イブ)。共に旧約聖書『創世記』に記された最初の男女です。
そして『一日目』『二日目』と挟みながら追う流れも、エクス・マキナの『セッション1』『セッション2』と区切る形に似ている。共に期間は一週間(+α)ですし。
人造人間(AI)と生身の人間との恋愛感情に似た行動や、日本要素をぶっ込んでくる…というところまでエクス・マキナを彷彿とさせます。
まぁかなり哲学的なアプローチだったあちらに対し、こちらはだいぶ一般大衆向けなテイストになっていますけど。
超個人的な戯言感想
クソダサいジャケットのせいで『安くてつまらないB級映画』のニオイをプンプンさせていますが、私個人としてはこの『映画/アンキャニー 不気味の谷』は十分に楽しめる1本でした。
しかしいろんな意味で評価が分かれる作品だとは思いますぞ。特に何の意見が分かれるって、物語上では『美人』とされるジョイ(ルーシー・グリフィス)ですよ。彼女、美人だと思いましたか?私は正直なところあまり…。
さらに彼女は「ノーマルパターン」と「メガネ女子パターン」まで使い分けてくるじゃないですか。アレはどうでした?私はメガネのほうならそれなりに無くはないとは思いましたが…そこもやはり意見が分かれるんでしょうなぁ…。