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実際に起きた事件を基とした『映画/アニマルズ 愛のケダモノ』でネタバレを含む戯言を。あまりにもヒドい邦題のせいで安いB級スリラーのようですが、実話ベースとしては意外に完成度の高い作品だったり…。

ごくごく一部、スカがトロしてる野郎には大興奮のシーンもありますぞ(笑)

アニマルズ 愛のケダモノ


2016年 オーストラリア

キャスト:
エマ・ブース
アシュリー・カミングス
スティーヴン・カリー
スージー・ポーター

監督:ベン・ヤング
脚本:ベン・ヤング

ネタバレ無しのあらすじ

1987年オーストラリア、パース。

口うるさい母親に内緒で夜間外出したヴィッキー(アシュリー・カミングス)は、声をかけてきた中年の男女に拉致監禁されてしまう。

この男女、ジョン(スティーヴン・カリー)とエヴェリン(エマ・ブース)は、女性を拉致・監禁・暴行したのちに殺害するという危険な犯罪者ペア。

しかしこれまでの被害者とは異なり、ヴィッキーの存在は彼らの歯車を徐々に狂わせていくのだった…。

実話?実際の事件とは?

映画、とくにスリラー系作品で『実話ベース』ってのはよくあるパターン。

しかし「実話が基になっている」と一言で言っても、『実話をできる限り忠実に再現している』という作品もあれば『あくまで実話から着想を得ただけ』という作品もあり、どこからどこまで信用して良いのやら。

その点、この『アニマルズ 愛のケダモノ』の実話再現度は…50点?いや、60点をあげても良いレベルかと。ベースとなった事件は1986年にオーストラリアで発生した『デビッド&キャサリン・バーニー事件』です。

デビッド&キャサリン・バーニー事件とは?

1986年、オーストラリア・パースで発生したデビッド・ジョン・バーニーとキャサリン・マーガレット・バーニーによる連続暴行殺害事件。

15歳から31歳までの4人の女性を誘拐・強姦・殺害。5人目の被害者が逃亡に成功したことで発覚し、逮捕に至る。

しかしこのデビッド・バーニーという男が、とにかく異常な性欲と性癖で・・・この場では書けないし書ききれないような行為連発、真の変態将軍だったり。
(性欲の処理のために実の弟を連日犯し、その報酬として自分の別居中の妻を弟にプレゼントする…とか、もはや異次元殺法級)

映画と実際の事件の主だった共通点として、

  • デビッドとキャサリンは幼馴染
  • 被害者に家族あての手紙を書かせたことがある
  • 強制的に大量の睡眠薬を服用させられた被害者もいた
  • デビッドが1人の被害者に過度の執着(愛情)を見せてしまい、キャサリンが即座に殺害するよう迫る

…などが挙げられますが、後半の展開は完全に創作。

最後の被害者となった女性(作中でのヴィッキー)が逃走したシチュエーションも大きく異なりますし、なにより実際の事件でキャサリンはデビッドを刺殺しておらず、二人とも刑務所送りとなっています(デビッドは獄中で自殺)。

目から鱗の防御法

それにしてもなんですか、『アニマルズ 愛のケダモノ』って。

まぁ邦題では毎度のことですが、センスが無いにもほどがある。これでは完全に『安っぽいB級変態スリラー』の第一印象じゃないですか。

しかし・・・これがまたB級でもなければ安っぽくもないのですよ。

やや攻めすぎなカメラワークと狙いすぎな構図の連発が鼻につくものの、決して独りよがりとまではいかず。むしろベテラン監督の作品を見ているような感覚すらありますが、なんと本作の監督ベン・ヤングはこれが初監督作品。

冒頭、彼氏との『隠し文字パズル遊び』や、『他所の郵便物を漁る』といった伏線は「これ後で大事になるヤツだろ」とバレバレではあるものの、回収が上手なので全く問題無し。

映画化にあたって創作されたであろう設定・演出・ストーリー展開も、一部を除いて実に自然で素晴らしい。

特になにがスゴいって…

暴行(性的な)を逃れるため、その場で脱糞!!

って、こんな防御方法、未だかつて見たことないわっ!あんた天才か。

まぁごく一部のスカがトロしている変態相手の場合、この防御はむしろ燃料投下と言えるかもしれませんけど…。

終盤は蛇足感も…

各国での評価も高いようですし、個人的にもかなり高評価ではあるのですが…終盤の展開はちょっと微妙。

決して諦めず、一時はエヴェリンの心すら揺るがせたヴィッキーも、ついに年貢の納め時。ジョンと「エロお道具箱」を持ったエヴェリンが部屋に入り、ドアを閉める・・・のシーンはもう素晴らしく絶望的でゾワゾワしましたな。

そして余韻から一転、例の森へと車を走らせるジョン。

これがてっきり『ヴィッキーも殺害されてしまった』という表現かと思いきや、ジョンは先日埋めた場所を確認しにきただけという…。

そしてここからは好きになれない展開のオンパレード。

『犬を殺害』はダメな方も多いでしょうが、猫派の私としてもあまり気分が良いものではありません。

娘を必死に探す母の姿も、女性の方からすりゃ『母の愛』と感じる部分なのでしょうが、わたしゃこの母親は「勘違いの自分勝手女」にしか見えないのでまるで感動できず。

肝心の『エヴェリンがジョンを刺殺』はジョンがヴィッキーの首を絞め始めたあたりですぐに予想できるため、ベタすぎてガッカリ。

最終的な母と娘の「ええ話やー」的な締め方も、バカバカしすぎて屁が止まらないほど。

まぁラストに関しては実話ベースですし、こういう終わり方にしないと色々と問題あるのでしょうなぁ。これがフィクションであれば「結局ヴィッキーも助からず、一切救いのない終わり方」ってのが私としては好みだったのですが…。

超個人的な戯言感想

…というわけで。

超個人的には『ヴィッキー凌辱までは90点、その後の展開は10点』という、極端な落差を見せた『映画/アニマルズ 愛のケダモノ』

過剰なエロスもありませんし、トータルで見ればオススメの作品ではあるのですが・・・やはり見る人を選ぶ感は否めませんなぁ。

それにしても被害者の自宅が近いっつーのに、着ていた衣類を洗濯して外に干すってどうなのよ(笑)