同名&似た名前の映画が複数ありますが、今回は2012年ジョン・キューザック主演の『映画/コレクター』 モーガン・フリーマンもデンゼル・ワシントンも出演していませんのでご注意を。
実話ベースという事が衝撃的な本作ですが、詳しくは後ほど。ネタバレと結末を含みますので未鑑賞の方はご注意下さい。
コレクター
(原題:THE FACTORY)
2012年 アメリカ
主なキャスト:
ジョン・キューザック
ジェニファー・カーペンター
ダラス・ロバーツ
メイ・ホイットマン
ソーニャ・ヴァルゲル
マゲイナ・トーヴァ
キャサリン・ウォーターストン
監督:モーガン・オニール
脚本:ポール・ライデン、モーガン・オニール
ネタバレ含まないあらすじ
ニューヨーク州バッファロー市警は3年に渡り『娼婦の連続失踪事件』を追っていたが、成果が上がらず捜査打ち切りを表明。
担当刑事であるマイク(ジョン・キューザック)とケルシー(ジェニファー・カーペンター)も無念の思いで捜査終了を迎え……と、思った矢先に新たな失踪事件が発生。なんと行方がわからなくなったのはマイクの娘アビー(メイ・ホイットマン)だった。
果たして犯人の目的とは…
・・・といった内容で大暴れするジョン・キューザックを見る作品。
キャストで戯言
超大物俳優を1発据えて他はそれなり…といった映画は多くありますが、本作もややそっち気味。
据えられているのはサスペンス・ミステリーの大御所ジョン・キューザックにですな。
個人的にはあまり好きじゃないのよね。理由は…顔?表情?下あごがとっぷりしている俳優は全て苦手なのよ。ベン・アフレックも苦手だし、トム・ハンクスも苦手。でもなぜかごんぶと(スティーブン・セガール)は有り。
そんな彼を支える相棒にジェニファー・カーペンター。出演作品はそう多いわけではありませんが、インパクトのあるお顔なので印象に残りやすい女優さんですな。
しかし個人的には彼女も好きではないという。
さらに肝心の娘役、メイ・ホイットマンもかなり苦手。
おいおい、17歳?嘘つけ、めっちゃオバちゃん顔だろうがっ!と怒りたくなるところですが、本作公開時で彼女は24歳。決してオバちゃんではありませんし、もっと年上で10代の役柄を自然に演じる事ができる女優は多々います。…が、しかし彼女は無理でしょう。背はちっこくて幼児体型ですが、おばちゃん顔が過ぎますもの。
実話
『実話を基にした映画』と聞くと何から何まで全て実話に基づいていると勘違いする方が多いようですが、ほとんどの『実話ベース作品』はあくまでも実話を『基に』作ったもの。細かいトコまで実話と寸分たがわないはずがないじゃないの。
本作も実際の事件をそのまま映画化した…というわけではなく、実際にあった事件をモチーフにして制作という事ですので、大半は創作。
興味のある方もいるかと思いますので、実在の事件について紹介しつつ、映画との相違点も追ってみましょうか。
ゲイリー・ハイドニック事件
本作の元ネタとされているのがコレ。1986年、アメリカで起こった連続監禁殺人事件になります。
ゲイリー・マイケル・ハイドニックの手により娼婦を含む女性6人が監禁され、うち2名が殺害されるというもの。
女性達に自らの子供を産ませ、大家族を作る…という犯人の思想が映画に反映されています。
一番最初に監禁された女性は時が経つにつれハイドニックに従順になり、殺害された女性の遺棄にも協力。この部分が本作ラストのどんでん返しに通じる部分なのかもしれませんな。
…が、最終的にハイドニックはその「最初に監禁し、信頼関係を築いた」と思い込んでいた女性に逃げられ、逮捕。彼女は脱出するために従順な協力者を演じていたんだそうです。こわーい。
ハイドニックは1999年、55歳で死刑となっています。
クリーブランド監禁事件
こちらは映画公開の翌年、2013年に発覚した誘拐監禁事件で、映画の内容が似ているという事で話題になりました。
アメリカ・クリーブランドで発生したこの事件は、犯人であるアリエル・カストロが2002年から2004年にかけて女性3人を誘拐監禁。その後約10年間も監禁されていたという恐ろしいもの。
こちらの犯人は「子供を増やそう」という目的はなく、妊娠した女性は暴行を受け、強制的に流産させられていたそうです。1人だけ被害者女性が生んだとされる少年も保護されましたが、なんと犯人逮捕時ですでに6歳。恐ろしや。
こちらの犯人は『仮釈放無しの終身刑・禁錮1000年(!?)』が確定したものの、その翌月、独房内で首を吊った姿で発見されました。
ジョンQ大暴走
…という事で、『娼婦の連続誘拐監禁』『被害者女性を妊娠、出産させるのが目的』という部分は実在の事件を基にしているものの、捜査担当刑事の娘が攫われたり、最後の最後で刑事が裏切ったりといった部分は完全に創作。エンターテイメントです。
実際の事件では病院から薬品を入手していたという事実もなく、犯人は病院で働く調理師でもない。さらに帝王切開がどうのこうの…という部分ももちろん創作。
この『女を監禁してバンバン妊娠させて大家族を作るぞっ!』というヤバい思想はあまりにもインパクトが大きいため、この事件をモチーフとした映画は本作以外にも多数存在しています。まぁ過去に日本人でもそういう思想のヤツいましたよね、あまり詳しく掘るとヤバいので書きませんけど。
さてさて、話を映画に戻しますか。
『もう無茶苦茶』
…の一言ですよ。
話の流れ自体はそれほど悪くはないのですが、とにかく細部がずさんでツッコミどころ満載。「いやいやおかしいだろ!?」と言いたくなるような強引な展開がありすぎて、もはやファンタジー。実話ベースという事すら忘れそうなほどですな。
そしてジョン・キューザックは暴れすぎ。
いくら娘が心配だからって暴行紛いの取り調べ(任意なのに)に加え、雪の降る中を大暴走はヤバい。
そして彼の奥さんもヒドすぎる。
やれ娘を発情期呼ばわりするわ、ケルシーに「子供もいないクセに!」と心無い言葉は吐くわ…。
このあたりは作中の「娘が娼婦と間違われる」「ケルシーが実は犯人とグル」という展開に掛かってくる伏線的なセリフなのはわかりますが、あまりにも無神経すぎて嫌悪感バリバリ。
このあたりの人物描写が乱暴すぎて、どうにも話にのめり込みづらい空気が漂っているのが残念ですなぁ。
無理矢理どんでん
これがそのまま捻りもなく『犯人射殺で無事娘は保護!事件解決!』で終われば『ちょっと残念なサスペンス』程度で済むところなのですが、さらに何を血迷ったのかスゴいどんでん返しをブッ込んでくる本作。
共に捜査してきたケルシーは犯人が最初に誘拐した女性であり、協力者でもあった!!
…という、驚愕を通り越して「それでいいのか!?」なオチに着地するという三回転半アクロバット。
最後の『伏線回収の回想シーン』はとって付けたような雰囲気ではありますが、たしかにそれっぽい空気は物語中でも匂わせていました。実在の事件の『最初の被害者が最大の協力者』という部分を入れたかったのでしょうな。
しかしやはりイロイロと無理矢理。あまりにも無理矢理すぎる。
あれだけの赤子を警察が駆け付ける前にどうやって移動させたの!?というかドコに隠したの!?泣かないの!?それ以前にあんたどうやって刑事にまでなれたの!?
そんな疑問が頭をよぎる中、不敵に笑うケルシーで物語は幕を閉じてしまいます。この後彼女はいったいどうするんでしょうね。子供達を育てて、それで?
超個人的な戯言感想
サスペンス映画として観れば決して悪くない。悪くはないが、良くもない。ぶっちゃけ微妙な作品でした。
そのせいか一度鑑賞しているのに全く印象に残っておらず、二度観てしまうという失敗をしたクセに、さらには今日また初見のつもりで三度目の鑑賞をしてしまうという(笑)
途中で「あー!コレ前にも二度見しちゃったヤツだ!」と気付いたのですが、まぁ毒を食らわば皿までといいますし…頑張って最後まで見ましたよ。それなのに最後のどんでん返しはすっかり忘れていました。それくらい印象に残らない作品だったという事ですな。
ちなみに原題は『THE FACTORY』、これすなわち『赤ちゃん製造工場』って意味を含んでいると思いますが、実にエゲつない名タイトル。『コレクター』なんてやんわりした邦題に変えず、そのまんま『ファクトリー』のほうが良かった気がしますなぁ。
あとはもう、四度目の鑑賞が無い事を祈るばかりです…。