実話ベースの映画『ガール・イン・ザ・ボックス』でネタバレ&感想&実際の事件に関する情報を交えた戯言を。他の監禁モノとはやや異なり、非常に陰惨としたメッセージ性の強い作品ですので人によってはただただ胸クソ悪いだけかと。
ついでに言えば監禁モノにありがちエロス描写も皆無ですので、それ目当てのド変態野郎も注意ですぞ。
ガール・イン・ザ・ボックス
2016年 カナダ
キャスト:
ゼイン・ホルツ
ゼルダ・ウィリアムズ
アディソン・ティムリン
ブリタニー・アレン
監督:スティーヴン・ケンプ
ネタバレ無しのあらすじ
1977年、カリフォルニア州。
ヒッチハイクで友人の元へ向かおうとしていたコリーン(アディソン・ティムリン)は、通りがかったキャメロン(ゼイン・ホルツ)とジャニス(ゼルダ・ウィリアムズ)の車に乗せてもらうことに。
しかし彼らは決して親切な夫婦などではなく、コリーンはそのまま拉致・監禁。箱に閉じ込められた長い生活が始まるのだった・・・。
・・・という実話ベースの作品。
実話『キャメロン・フッカー事件』
『これは実話を基にした話です』という、サスペンス・スリラーで時々見かける煽り文句。
こういうテロップを見るとバカ正直な人間は、細部に至るまで実際にあった事件と同一だと思い込み「こんな事があったなんて…」と衝撃を受けたりするようですが、世に溢れる『実話ベース』の映画は『映画として成立させるための脚色』が多数盛り込まれているのが普通。
『実話を基にした話』などと煽っておきながら、あくまで実際の事件に着想を得ただけでほとんどが創作…というケースも少なくはありません。
そもそもドキュメンタリーの再現フィルムじゃないんですから、完全に実話そのまんまの内容・出来事・表現だけでは映画にならんですよ。再現フィルムだって脚色を加えているものですし。
そいういった傾向性から見ると、この『ガール・イン・ザ・ボックス』という映画は驚くほど実話に忠実。
題材にされているのは『キャメロン・フッカー事件』『コリーン・スタン事件』『箱の中の少女事件』等の呼び名で表現される1977年に起こった事件になります。
映画と実際の事件で大きく異なる点は・・・
- ヒッチハイクをしているコリーンを車に乗せた時点で、フッカー夫妻には子供がいた。
(後部座席に赤子が乗っているのを見てコリーンは「安全」と判断した) - 閉じ込められていた箱はもっと狭い。
(ほぼ棺桶と同じサイズ) - 暴力行為はちょいちょいムチで叩く程度ではなかった。
(殴打、スタンガン、ライターで炙る、等) - コリーンに対するキャメロンの性的暴行は映画よりも早い段階で行われていた。
といった程度。
それ以外はほぼ同一で、キャメロンが架空の組織をでっちあげて洗脳に利用していたこと、コリーンが一度家族の元へ返されたこと、そこでキャメロンと一緒に記念撮影までしていたことなども実話。
そして作中のフッカー夫妻が現実のフッカー夫妻にめちゃくそ似ているというのも衝撃。ジャニスなんて笑えるくらいそのまんまですぞ。
いわゆる監禁モノとは少々違う
アメリカだけに限らず、同様の『女性を拉致・監禁。地下室等に閉じ込めて長期的に暴行を加える』という事件は世界各国で発生しており、それらを基にした映画作品も多数存在。
もはや『実話ベースの監禁モノ』というジャンルが確立さそうなほど溢れかえっており、そっち系がお好きな方ならば本作以外にもいろいろと鑑賞していることでしょう。ええい、この変態野郎め。
しかし本作は『驚くほど実話に寄せている』というだけでなく、『女性の描写があまりにも可哀想』という点が他の作品とは一線を画しているのではないかと。
いやいや!どの女性もみな可哀想なんですよ、監禁で暴行ですから。実にけしからん!
ただ、アチラの女性って強気な方が多いじゃないですか。犯人を口汚く罵り、暴れまくって抵抗し、隙あらば反撃。「強い」ではなく「クソ生意気」な態度の女性が多く、もうこんな女ならやって良し!な気分になったりするのですよ(あくまで一個人の感想)
ところがこの『ガール・イン・ザ・ボックス』はただただ可哀想。
『気弱で大人しいから可哀想』などという単純な理屈ではなく、コリーンが本当の意味で”強く聡明”に描かれているため、それだけに彼女が不憫でならない。
そしてジャニスもキャメロンに対する依存に近い愛と、信仰との狭間で苦しむ姿が克明に描かれており、彼女も哀れで仕方がない。
わたしゃ犯罪予備軍のサイコパス野郎ですので、ありがちな監禁モノは犯人の男にどっぷり感情移入し「いけいけGO!GO!」なノリで鑑賞したりするのですが、この映画だけはいたたまれない気分になりましたなぁ。
よくある『バカな男は女の反撃に遭い、自業自得の末路をたどりました。ざまみろ』なストーリーよりも、こういう表現のほうが胸に刺さりますわい。
今すぐ自首したくなりますな。何もやってないけど。
超個人的な戯言感想
おそらくノーマルな方にとっては非常に胸クソな映画だと思いますし、実際に被害に遭った方がいる話ですので、こういう表現は誤解を生むかもしれませんが・・・・個人的には『非常に素晴らしい映画』でした。
もちろん『素晴らしい』は気分爽快という意味ではございませんよ、いろいろと考えさせられる深い作品だった…という意味で。
むしろ逆に、知恵の回らないバカ女ならばもっと早く逃れることができていたのでは・・・と思ってしまうところも実に悲しい。いつの時代もバカで自分勝手な人間のほうが賢い善人よりも幸せだったりしますし。
こっち系にしては珍しいほどエロティックな描写がなかったことも高評価ですな。別にエロが見たくて監禁モノを好んでいるわけではないので、変にサービスしたカットはむしろ萎え要素ですもの。
まぁコリーン役の女性(アディソン・ティムリン)が美人だったので少し期待してしまいましたけど・・・。