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タイトルとパッケージ、そしてキアヌ・リーヴス主演という点でつい派手なクライムアクションを期待してしまう『映画/フェイク・クライム』でネタバレ含む戯言。しかし蓋を開けてみりゃそんな派手で手に汗握るような内容ではなく。「つまらん」「期待外れ」といった感想が溢れるのも仕方ない1本です。

しかしその全てが映画のせいというわけでもなく、日本の配給会社の宣伝が酷すぎると言いますか・・・。

フェイク・クライム


2011年 アメリカ

キャスト:
キアヌ・リーヴス
ヴェラ・ファーミガ
ジェームズ・カーン
ピーター・ストーメア
ジュディ・グリア
フィッシャー・スティーヴンス
ダニー・ホック
ビル・デューク

監督:マルコム・ヴェンヴィル
脚本:サーシャ・ガヴァシ、デヴィッド・N・ホワイト

ネタバレ無しのあらすじ

ニューヨーク州バッファロー。

目標もなく夢もなく、ただただ流される人生を送るヘンリー(キアヌ・リーヴス)は、悪友エディ(フィッシャー・スティーヴンス)の誘いで草野球の助っ人をすることに。

しかしエディの本当の目的は野球ではなく銀行強盗。ヘンリーは知らず知らずのうちに片棒を担がされ、挙句の果てに自分だけ刑務所送りとなってしまうのだった。

~それから1年後~

仮出所後、ひょんなことから舞台女優ジュリー(ヴェラ・ファーミガ)と知り合ったヘンリーは、銀行と隣接する劇場が地下道で繋がっている事を知る。

何を思ったか「俺の目標は銀行強盗をすることだ!」と燃え上がったヘンリーは、獄中で知り合ったマックス(ジェームズ・カーン)の助けを借りて計画を練るのだが…

・・・といった流れで、ダラダラゆるーく展開する物語。銃?そんなもん使わないよ、怪我人が出るから。

キャストで戯言

主演は超有名俳優キアヌ・リーヴス

『映画/コンスタンティン』で肺ガンになってみたり、『映画/シークレット・パーティ』でウィックではないジョンを演じてみたり、オフではそりゃもうヒドいルックスになってみたり。いろいろな意味で有名ですな。

ヒロインのヴェラ・ファーミガも出演作品は多く、往年の名作『映画/サイコ』の前日譚を描く『ドラマ/ベイツモーテル』ではっちゃけキャラを好演するなどファンの多い女優さん。おっと実妹のタイッサ・ファーミガも忘れちゃいけませんぜ旦那。

そしてキアヌと獄中で知り合い、銀行強盗の手助けをすることになる老人役ジェームズ・カーンも映画出演歴50年を超える超ベテラン俳優ですな。

ベテランと言えばもう1人・・・いや、3人。マイナーなクセになにげに豪華なのよ、この映画。

1人目はこちらも芸歴40年超のビル・デュークが警備員役。ドラマ出演や監督業も多くこなしているようですが、わたしゃ特に好きでも嫌いでもありません。「ああ、昔よく見かけた人だ」といった程度。

そしていかにも演出家、といった変人キャラがよく似合っているのはピーター・ストーメア。彼自身が有名な舞台俳優だったことは広く知られていますが、世間的には『頭のイッてる悪役』でお馴染みかと。

最後は前述の3人に比べれば若手、しかし10代から映画俳優として活躍しているので芸歴は長いフィッシャー・スティーヴンス。悪友エディを演じている人ですな。

彼は若い頃、正統派イケメン・アイドル俳優だったそうですが、私はオッサンになってからしか知らんので『チビのクセに態度のデカいオッサン』のイメージしかありません。

ついでにキアヌの恋人役として前半登場するジュディ・グリアもそれなりに有名な女優さんですぞ。

邦版の詐欺っぷり

いつも同じような事を言っているような気がしますが・・・ホント、日本の配給会社はセンスがないというか程度が低いというか。なんですかこの『タイトル』『パッケージ』は。もしかしてキアヌの過去作『フェイク シティ』に寄せた?

中身をごまかし、キアヌのイメージに便乗して『クライム・サスペンス』もしくは『クライム・アクション』であるかのように見せかけようとしたものの、ネーミングセンスもパッケージデザインも残念ながらC級以下。

国内配給の煽り文句は、

  • 信じたら、だまされる。昨日の敵と銀行強盗?!罠だらけのクライム・サスペンス!
  • キアヌが本当に作りたかった、クライム・サスペンス!
  • サスペンスとユーモアが絶妙にブレンドされた予測不能のサスペンス!

…という脱力っぷり。

この映画内容でここまで『クライム・サスペンス』を連呼できるなんて、何か悪いモノでも食ったんかね。最後のヤツなんて『サスペンス』がかぶって馬鹿が書いたような日本語になっているし…。

無名俳優のB級作品ならばまだしも、超大物が何人も出演している作品でここまでショボいプロモーションも珍しいですな。

ちなみに原題は『Henry's Crime』(直訳でヘンリーの犯罪)


パッケージも映画内容にマッチして、実にイイ雰囲気じゃないですか。

最初からこのタイトルとパッケージであれば『期待ハズレ』『想像してたのと違う』といったマイナス評価も減ったであろうに。

いい加減『とりあえず第一印象だけごまかして釣ろう』という、出会い系サイトの詐欺プロフィール写真のようなやり口はやめていただきたいですな。

舞台劇もしくはファンタジー

邦版は謎だの罠だの「信じたら騙される」だの書いてありますが、映画内容としては謎も罠も騙しもありません。

本作はそういったサスペンス要素を楽しむ映画ではなく、ヒューマンドラマ的な要素を孕んだラブロマンスなのですから。

犯罪に巻き込まれても、彼女を寝取られても、車にひかれても、ただただ「うん、大丈夫」で済ませる流され野郎ヘンリーが、人生において初めて目標を持ち自らの意志で運命を変えていこうとする。

その姿に感動しながら散りばめられたコメディ要素も楽しめるような、余裕のある大人向けの映画なのですよ。

しかし邦題や邦版パッケージに騙され『手に汗握る犯罪アクション』や『謎が謎を呼ぶサスペンス』を期待すると拍子抜け。早々に萎えてしまう結果になるわけですな。

そもそもヘンリーが銀行強盗をするきっかけが、

「便所に貼ってあった古新聞に『劇場から銀行まで地下道がある』って書いてあったから」

・・て、なによそれ。

もうこの時点で停止ボタン押して空へ向かってDVDをポーン!ですな。VODサービスであれば停止をクリックしてマイリストから削除!ですな。

素人を重要な役どころに起用してみたり、楽屋の壁ブチ抜いて工事してもバレなかったり、屋上に大量の土砂を溜めてみたり…到底リアリティといった観点で見れるような作品ではありません。

ある種、この映画そのものが舞台劇。もしくはファンタジー作品みたいなもんですよ。

超個人的な戯言感想

邦題が失敗、邦版パッケージが失敗、予告編も失敗。とにかく日本国内での売り方が大失敗だったこの『映画/フェイク・クライム』

しかしそれを無かったことにして、純粋に作品としてどうかと言われれば・・・うーむ、それでも個人的には厳しい作品でしたなぁ。

キアヌが製作にも関わっているそうですが、彼ホント好きよね、こういう映画。

途中までは『先に罰を受けたならば、それに見合った罪を犯さねばならない』という哲学的な話か!?と思って興味津々だったんですけどね。…残念。