今回の1本は『映画/シェルター 狂気の秘密』で独自の解釈と考察、ネタバレを含む戯言を。ひどい邦題が紛らわしい事になっていますが、2010年/ジュリアン・ムーア主演の『映画/シェルター』とは別モノですのでお間違えのないように。
シェルター 狂気の秘密
2006年 カナダ
キャスト:
キャスリーン・クインラン
イングリッド・カヴェラルス
ハンナ・ロックナー
デイビット・スパロー
監督:メラニー・オア
脚本:ウィリアム・テイラー・ベル
ネタバレ無しのあらすじ
何らかの理由により家を後にし、農村地のとある家へとやってきた母(イングリッド・カヴェラルス)と娘(ハンナ・ロックナー)。
そこにはビーという女性(キャスリーン・クインラン)が善意で訳あり女性を匿っているシェルター施設だった。
1・宿泊費は不要だが、農作業を手伝うこと
2・敷地のフェンスから決して出ないこと
3・酒、タバコ、ドラッグなど依存性のあるものは持ち込まないこと
この3つの決まりはあるものの、優しく頼もしいビーに母子は信頼を寄せる。
しかし4つ目の決まりとして追加された
4・納屋には決して近づかないこと
が気になって仕方ない母親は、こっそり納屋を覗いてしまうのだった・・・
・・・といった内容の作品。
今回は早々にネタバレを含むよ!!
ざっくりネタバレフロー
低予算B級映画でありながら、予想以上に悪くない仕上がりの『映画/シェルター 狂気の秘密』
とりあえず完全ネタバレのあらすじをざっくりフローにしてしまうと…
- 逃げる母子
- 自宅で血を拭き、逃げるように家を出る母子。
母の顔のアザから「DVから逃れるため?」と思わせる流れ。
…の途中で母親は野ションベン。…ハァハァ。
- 優しいビーおばさん
- 迎え入れてくれたのはビーという女性。
頼もしく包容力があり優しい。若い頃は美人だったでしょうな…と思わせるお顔も素敵なうえにムチムチバディの爆乳。
…が、残念ながら作品タイトルとパッケージのせいで、最初から「おまえが狂人やろ!」と先入観ありありで見てしまうのが残念。
このタイトルとパッケージは明らかに失敗ですな。
- ダメと言われたら…
- 全く人の言うことを聞かない母親は、飲むなと言われても飲む。吸うなと言われても吸う。
近づくなと言われた納屋も「押すなよ!絶対に押すなよ!」と言われた芸人のように速攻で覗く。
しかしそこには大量の旅行カバンと縛られた女性が!
…って、もう絶対それしかないと思ったよね。
その後母親は再びトイレ以外の場所(閉じ込められた部屋)で放尿したらしい。…ハァハァ。
- やや強引な展開
- このあたりはグダグダな流れ。
助けを呼ぶために脱出した母親は、あっさりビーに捕まり納屋送り。
「母ちゃんはあんたを捨てて逃げたんよ」とヴィクトリア(娘)に嘘をつき、母親代わりを名乗り出るビー。
しかしその後、母子達の前にここに来た訪問者マディ(納屋に縛られてた人)の旦那らしき男とやりあったビーは脚を負傷。
「あの母親さえ殺せばヴィクトリアはわしのもんじゃぁ!!」
…と、とっ散らかって納屋へ向かうビーだが、母親の目の前で背後からヴィクトリアに刺されて死亡。
- めでたしめでたし…?
- 実は母子が逃げ出した理由はDVではなく、父親を殺害してしまったため。
これは物語中のフラッシュバックで推測できるものの、なんと殺したのは母親ではなくヴィクトリアでした。
この娘が一番ヤバい人だったのです。
さぁヤギたちよ、お行きなさい・・・で終幕。
勝手な考察戯言
とにかく鑑賞を始めて真っ先に気になるのが…
母親がクソすぎる
…ということ。
人の言う事は聞かないし、偉そうな口調で子供を押さえつけようとするし、ビーに言われた決まりもまるで守る気無し。
「飲むな吸うな」をちょっと隠れてやっちゃう気持ちはわからなくもないですが、なぜすぐに納屋を覗く!(怒)
もしかして「ダメ」って言われるとなおさらやりたくなっちゃうタイプの人?いるよね、そういう人…。これじゃDVされるのもやむ無しですな。私だって殴りますよ。
…と思っていたものの、これが最後まで鑑賞してみるとちょっと違う視点が見えてくる。
母に暴力をふるう父を背後から刺し、さらにめった刺しにしたのはヴィクトリアでした。この刺し方が「思わず刺しちゃった」では済まない徹底っぷり。
この娘、途中のビーとの会話からも感じるように「ちょっとヤバめ」の性格をしているようです。しかもそれを自覚している節もある。
ヴィクトリアが生まれた時からずっと見守ってきた母親は、心の奥底で娘に恐怖を感じていたのではないでしょうか。ラストに二人で話し合う母親の表情からもそんな心情を感じます。
だからこそ…怖いからこそ、自信がないからこそ、親という立場を振りかざして上から目線で押さえつけるしかなかった。作中の酒やタバコは「彼女の心の弱さ」と「不器用さ」を表している演出なのではないでしょうか。
となると、一見『クソ生意気で自堕落なダメ女』は…実のところ『メンタルの弱さを隠そうと必死な、不器用ツンデレ』かもしれませんよ。
そう考えれば萌えませんか?しかも室内放尿プレイですよ?興奮しませんか?
…まぁ作中でデレている姿など全く見れませんでしたけど。
ドンデン返していない!
…というわけで、私にしては珍しく女性擁護の気持ちが芽生えた本作。
一応ドンデン返しモノになるのですが、映画としてはそこが非常に弱いのが残念。
『優しそうなビーは実はヤバい人でした!』は前述の通り、作品パッケージとタイトルで事前に告知済み。
最大のドンデンである『実は父を殺したのは娘だった!』も、母親とビーが部屋の中で言い争っている最中に包丁を取りに行った時点で「え!?いきなり包丁!?…あ、そういうことか…」とバレバレ。
結局全ての流れが予想の範疇で展開されるためドキドキ感はほぼ皆無。
ハラハラしたのは、ビーの家を訪れた保安官に「お、コーヒー飲むか!?飲むのか!?たぶん何か入れられてるぞ!・・・・っと、飲まないかー!!」のあたりくらいでした(笑)
超個人的な戯言感想
そんなわけで驚愕の展開もほぼ無し、「最も弱いと思われていた子供が、本当は一番怖い存在でした」というストーリーも腐るほどあるので目新しさは無し。
赤ずきんを例えにしてそれぞれの人間の立場を比喩しているのは面白いものの、やや消化不良気味。
トータルで考えればB級の域を出ない、実に惜しい作品でございました…。