とても素直な味付けで観やすいサスペンス『映画/リピーテッド』、主要キャストは大御所で固めているのでそういう面でも「優等生的なサスペンス作品」と言えるでしょう。ネタバレと結末を含みますのでご注意を。
しかしどうも腑に落ちない感が・・・。
リピーテッド
(原題:Before I Go to Sleep)
2014年 イギリス・アメリカ・フランス・スウェーデン
主なキャスト:
ニコール・キッドマン
コリン・ファース
マーク・ストロング
監督:ローワン・ジョフィ
脚本:ローワン・ジョフィ
原作はS・J・ワトソンの小説『わたしが眠りにつく前に』
ネタバレ無しのあらすじ
クリスティーン(ニコール・キッドマン)は事故の後遺症で「毎朝目が覚めると、前日までの記憶を失っている」という障害を抱えていた。
そんな彼女を献身的に支える夫のベン(コリン・ファース)。
だが彼女の主治医を名乗る男ナッシュ(マーク・ストロング)からの電話をきっかけに、クリスティーンはベンの言動に疑問を抱き始める。
アレやコレやの展開の末に待っているのは・・・・え、あんた誰?
・・・といった内容の作品。
珍味?否!王道のサスペンス!
世の中には「サスペンスはB級こそ面白い!」という嗜好の方も多いと思います。私もわりとそっち系ですな。
余計にイメージの定着していない無名俳優のほうが物語に引き込まれやすいのよね。ただし、しっかりと演技力のある人に限りますけど。
本品はニコール・キッドマン、コリン・ファース、マーク・ストロングという押しも押されもせぬ大御所なので演技に関しては心配ご無用。しかしもうちょいクセが欲しかった気も。
酒のツマミに例えて言うならばド定番のピーナッツのような味わい。普通に美味しいよね。
しかしクセのある珍味ばかり食っていると、それじゃちょっと物足りないなぁ…という気も。
いえいえ、非常に魅力のある俳優陣ですので、キャスティングにケチをつけたいわけではないんです。なんというか…正統派すぎて居心地が悪いと言いますか…。心の奥底のマニアック魂がウズウズすると言いますか…。
ネタにして遊ぶ要素が…
この映画の原作であるS・J・ワトソンの小説『わたしが眠りにつく前に』は、英国作家推理協会最優秀新人賞を受賞し、世界30カ国以上で出版されるほどの人気作品。
しっかり練りこまれたストーリー展開は映画でも健在ですな。
この手の『全世界で愛されている作品』を原作とし、映画としても上手に作られてしまうとイジりずらいったらありゃしない。
ダラダラとあらすじを書き並べるような文章では意味がないし、だからといって考察するような難しいポイントもない。
まぁツッコミどころが無いわけではないので…そのへんをイジッて戯言に致しましょう。そうしましょう
違う意味で驚愕のラスト
『優等生的サスペンス』とか言いましたが、個人的にイロイロと思うところはあるんです。
一番に気になるのが・・・
全然ハッピーエンドじゃない
クリスティーンは「私は夫を裏切るような人間じゃない」などと偉そうに主張をしていましたが、結局のところ過去に不倫をしていました。そこに何かしらの理由があったにせよ、関係を終わらせようとしていたにせよ、不倫は不倫。あーだこーだと言い訳をして正当化しても、裏切り行為をしていたのは事実。
さらに車内で医師ナッシュにキスしそうになったりしてるじゃないですか。これもどんな理由があったにせよ、事実。
もう完全に「夫を裏切るような人間」じゃないですか。寂しいとか自分を見て欲しいとか愛されたいとか、あーだーこーだと言い訳をしながら浮気がやめられない誰かさんと一緒ですよ。
しかし全体的に「マイク(偽ベン)は暴力的で自分勝手な男」「クリスティーンは被害者」のような描かれ方をしているのが、腑に落ちない。これじゃ被害者とは言えないし、極論を言えば記憶障害になった事も自業自得じゃないの。
ラストは一見ハッピーエンドのように締めくくられているものの…それもあくまでクリスティーンの行動は棚に上げたうえでのハッピー。
こういうヤツは結局また浮気をした挙句、なんだかんだと理由付けをして自分を正当化するのよ。
本当の被害者は子供じゃないか。そのへんがどうにも腑に落ちんのよね…。
・・・・誰?
そのラスト。ナッシュ医師が「君の元夫、ベンを連れてきた」というシーン。
ここは私と同じ事を感じた方も多いのではないかと。
あの・・・こういう言い方はちょっとアレかもしれませんが・・・元夫役の俳優さんの顔、変にインパクトがありません?
シルベスター・スタローンをミニマムにしたような・・・何か企んでいそうというか・・・ぶっちゃけて言えば悪人顔というか・・・。
また誰かがクリスティーンを騙そうとしているのか!?やはりナッシュ医師もグルだったのか!?というザワザワ感、ありませんでした?
てっきり「あなたは誰なの!?この人もベンじゃない!」というオチに持ってくるのかと思ったのですが、まさかの普通に元旦那さん(しかも良い人)。
もっと標準的というか、普通に良い人っぽい俳優にして欲しかったなぁ。もしかしてそれも狙った?
注)
元旦那さん役はアダム・レビー。『映画/グラディエーター』にも出演しとりますよ。
超個人的な戯言感想
とにかく最後の「本物ベンの怪しさ」が強すぎて、そこだけ印象に残る映画でしたなぁ。
ついでに一般的には紳士のイメージが強いコリン・ファースですが、私の中では『クセのある悪人』のイメージが定着してしまっているため、もう冒頭から疑いの目でしか見れず。
映画において俳優のイメージって大事ですな。
そういった『俳優に対するイメージ』って『その俳優を最初にみた作品』で固まる事、多くないですか?
たまたま普段やらないような役柄を演じた作品を最初に観てしまうと、その人に対するイメージが世間とはズレてしまったり・・・。
そういう点からもサスペンスは無名俳優のB級作品が好きです。