映画『サンシャイン2057』SFからスリラーへ急カーブ!?
これまた安っぽい邦題にされてしまった「映画/サンシャイン2057」。
原題の「SUNSHINE」に「2057」を付けてしまっただけで、大作映画モドキのような香りがプンプン匂います(笑)
俳優も豪華で監督も有名、中身も良い映画なのに、いまいち知名度も話題性も低いのは・・・邦題のイモ臭さが影響しているのではないでしょうか。多いですよね、作品殺しの邦題って。
サンシャイン2057
(原題:SUSHINE)
2007年 イギリス
主なキャスト:
キリアン・マーフィー
真田広之
ローズ・バーン
ミシェール・ヨー
クリス・エヴァンス
ベネディクト・ウォン
クリフ・カーティス
マーク・ストロング
監督:ダニー・ボイル
脚本:アレックス・ガーランド
ネタバレ無しのあらすじ
西暦2057年。太陽はその力を失いつつあり、地球は氷に覆われた惑星へと変わりつつあった。「核爆弾を使って太陽を活性化させる」という任務を背負った8名は、人類の希望を乗せたイカロス2号で太陽を目指す。
しかし水星に接近した付近で、7年前に同様の任務で地球を飛び立ったまま消息を絶った「イカロス1号」からの救難無線信号を受信する。
任務を優先し、無線信号は無視するか・・・それともイカロス1号へと向かうか・・・クルー達の間でも意見が分かれる難しい選択であったが、最終的には「進路を変えてイカロス1号へ向かう」という決断をする。
果たしてイカロス1号に何が起こったのだろうか?そして「太陽再活性化」の任務は無事に成功させられるのだろうか?
・・・といった内容の作品。
キャストで戯言
なにはなくともキリアン・マーフィー。私が大好きな俳優の1人です。
それ以外にもローズ・バーン、クリフ・カーティス、クリス・エヴァンスと魅力的な俳優が目白押し。さらにはマーク・ストロングもいるのですが・・・彼に関しては、ここではまだ触れません(笑)
そして真田広之。彼、あっちの作品でよく見かけるようになりましたね。同じ日本人として純粋に嬉しいです。
監督は「映画/トレインスポッティング」や「映画/28日後…」のダニー・ボイル。独特な映像演出が特徴の監督ですが、この映画でもその手腕は発揮されており、印象的な映像効果が多数用いられています。

ここからネタバレを含むよ!!
ベタなSF・・でもない?
冒頭に精神科医のサール(クリフ・カーティス)が展望室で、太陽に魅せられているような不思議な空気を出すものの・・・その後はわりと安定のSFっぽさで話が進んでくれます。
しかし、船長カネダ(真田広之)が太陽の光に飲み込まれてしまう際に「カネダ、何が見える!?いったい何が見えるんだ!?」と、再び蒸し返してきます(汗)
リアル系SFの中に、ちょっとスピリチュアルな要素を入れているのかな・・・そっち方向が強いと、見ていてわけわかんなくなるんだよな・・・という不安がよぎりますが、それは「イカロス1号の船長ピンバッカー(マーク・ストロング)が残した映像」により一気に爆発。
ちょ・・なに言ってるんだこの人!?え、神?そういう話なの!?
と、観ているこっちの頭のスイッチ切り替えを余儀なくする、彼のイッちゃってる発言に困惑です(笑)
そしてイカロス2号に到着するなり、不意に押し込まれるサブリミナル映像。
これは普通にイカロス2号の乗務員の顔写真なのですが・・・ものすごく気持ち悪いです。ホラー系なの?そっちなの?と不安になるような不気味さです。
さらには何者かの陰謀のようなアクシデントに「そういえば序盤、カネダが事故に遭った際のイカロス(AI)の挙動といい、なにか不穏な空気を感じるなぁ・・・もしかしてイカロスが?いやいや、AIが人間に敵対…なんて、安いSFじゃあるまいし」と、頭をどのスイッチに入れておけば良いのか悩む展開。
もちろんこれは悪い意味ではなく、良い意味です。見せ方が上手いんですよね。
人命の重さ・・・
イカロス1号からキャパとメイスは無事戻り、ハーヴィーは「・・・だろうね」という結末を迎えてしまうのですが・・そのあたりから何やら作品の空気が変わってきます。
トレイの処遇について4人が話し合う下りは、とても見ごたえがありました。
人類の未来と、一人の命の重さを比べる・・・
「人の命は地球より重い」なんて言葉もありましたが、このへんは私個人の意見も含めてあえて書きません。
その後のメイスのガキ臭い行動と、それに怒ったキャパの殴り合い・・・からの女性陣の冷たい態度もなかなか良かったです。ホント、男ってこういう「女から見たらバカみたいな行動」が多いよね(笑)
SFであるという事を忘れさせる展開
ここは激しくネタバレになるので、まだ観ていない人は注意です。今すぐ回れ右してレンタル屋さんへGO!ですよ。
物語終盤、イカロス2号に乗っているのは4人・・・ではなく5人!?の部分からは、もはやスリラー映画へと急ハンドルが切られていきます。
ここからは映像的にも独特というか・・悪く言えば「非常に見づらい描写」が多くなっていくので、意見が分かれそうなところです。
私個人としては、ちょっとこのあたりはイマイチと感じてしまいました。
目まぐるしく変わるカットと見づらい宇宙服からの視点、ピンバッカー船長の姿をハッキリと見せないモヤモヤ感。映画として緊迫感を演出しているとは思うのですが・・・私は凡人なので「ゴチャゴチャして見づらい部分が多い・・」と思ってしまいます。
まぁたしかに彼の姿をハッキリと見せて追い掛け回したら、それはもうホラー映画ですけどね(笑)
さすがはキリアン・マーフィー
そのゴチャゴチャの末、手動で核爆弾を切り離し・・・遠ざかる爆弾を見つめるキャパの姿。
そして爆弾へ向かって飛ぶキャパに、彼が見た夢の映像が重なる・・・ここはヤバかったです。なんでしょう、何がどうと説明はできないのですが、ものすごく胸を打たれました。
「核爆弾を目指すキリアン・マーフィーの想い」
+
「夢の中でもがきながら太陽に落ちていくキリアン・マーフィー」
+
「宇宙服の中で聞こえない叫びをあげるキリアン・マーフィー」
+
「感動的な音響効果」
=「オッサン(私)の目から溢れる涙」
となります。ここ、期末試験に出ますよ。
やはりキリアン・マーフィー(と、ダニー・ボイル監督)は素晴らしいなぁ。。。
マーク・ストロング、どこにいた?(笑)
こういった宇宙系のSF作品で常に気になる「重力どうなってんの?」という疑問はこの映画でもありますが・・・それを言ったらSFなんて観れません。ディズニー映画でブタが喋ることに疑問を感じるようなものです(笑)
それよりもなによりも、個人的に大好きなマーク・ストロングが「あんな状態」だった事のほうが悲しいです。「ほぼ目だけ」で演技を強いられたマーク・ストロングに拍手を送りたい気分です。初見ではアレが彼だとは気づきませんでした(笑)
なにはともあれ、全体的には面白い映画でした。そこに好きな俳優が多く出ているのですから、文句をつける理由はありません。
俳優としてのイメージが定着することを避けるため、似たような役柄を受けることは嫌うという、キリアン・マーフィー。
今後、彼がさまざまな作品でどんな演技を魅せてくれるのか・・・本当に楽しみです。